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退屈だ……。

「それでね、京都タワーなんて昔はすっごくやんちゃ臭いとこだったんだから。私が子供の頃なんて木刀売ってたし、パロディキャラ商品なんかも売ってたわ。今はもう小綺麗になっちゃってもーう」


 今も子供の外見の紗理奈がもどかしげに言う。


「良いことなんじゃないかな」


「わかってないなあ。胡散臭いのがいいんだよ」


「そうかな」


 俺達は嵯峨嵐山、桂川を眺めながら駄弁っている。

 エイミーからメールが届く。なんとなく風景を写メして送った。


「そういや東京でもアキバで似たような話を聞いたな。昔は胡散臭い電気街だったのに今はビジネス街だって」


「日本中から胡散臭いところが消えて小綺麗になっちゃったらどうなっちゃうんだろうねー」


「いいことなんじゃないかなあ……」


「わかってないなあ」


 紗理奈は繰り返し言う。


「じゃあ紗理奈さんはどんな日本が好みなのさ?」


「そりゃ、各地に特色が残るところ。どこ行ってもイオンやコンビニ一強なんてのはつまんないわね」


「特色はそれなりにあるんじゃないかなあ。北海道にしかないセイコーマートみたいな御当地チェーン店みたいなのはまだあるみたいだし」


「セイコーマート、ホットシェフ。行ってみたいなあ。今度行く?」


「片付いたら俺は帰るよ……なにしてるんだろ、俺達」


「川を見て駄弁ってる」


 そう言って紗理奈は肩を竦める。


「お土産でも見繕う? 近所に紙細工の店あるわよ」


「それはありがたいけど、与一さんだけに任せといていいのかなあ」


「いいのよ。あいつが働きたいって言ったんだもの。それに今日の担当地は観光地。あいつ一人で事足りるわ」


「アリエルの方は進んでるかなあ」


「難航してるんじゃないかな」


 紗理奈はさらりという。


「京都の各地に発生してた新興宗教、粗方潰しちゃったから。東京であったような神を作るって目論見はもう難しくなった。天界人も潜伏していると思われるわ」


「なら、次は連中はなにを狙うだろう」


「……」


 紗理奈は黙り込んだ。そのことを考えたくないとでも言うように。それでも、口を開いた。


「安倍晴明の復活」


「安倍晴明?」


「彼は天界人と人間のハーフ、半分人間よ。天界も手出しはし辛い。しかし天界人特有の強力な神性も持つ。正直復活されてこれほど厄介な敵もいないわ」


「堕天した連中はそれを狙っていると?」


「狙うとしたら……そこでしょうね。けど、もちろんそこは陰陽連ががっちりガードしている。それを崩すために連中が天界の目を掻い潜ってどんな手を打ってくるか。正直未知数ね。ま、しばらくはのんびりした期間になりそうかしら」


「サクッと終わらせてサクッと帰るつもりだったんだけどなあ……」


 草野球の大会には間に合うんだろうか。

 メールが届く。

 エイミーが、その川を見に行くと乗り気になっていた。



続く

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