魔道具屋
夜も十時に差し掛かった辺りで、紗理奈の意識がぱったりと落ちた。
どうしたものかと与一の電話番号をコールする。
なんとか、電話がつながった。
与一は慣れたもので、すぐに合流場所を指定してきた。
紗理奈を背負い、店を出る。
紗理奈の体重は、思ったより軽かった。
やはり、デジャヴ。
この温もりには、記憶がある。
それがどこで感じたものかわからず、俺は戸惑う。
紗理奈は誰かと似ている。それは確かだった。
合流場所の公園に行くと、与一がベンチでコーヒーを飲んでいた。
「悪いな、初日早々迷惑をかけて」
「あんたの相棒は随分背伸びしたがるタイプみたいだな」
与一は目を丸くする。
「紗理奈の性格をもうそこまで把握したか。流石は軟式王子だ」
そう言って、くっくっくと笑う。
「この外見だ。実際舐められることが多くてな。本人は至って気にしている」
「大丈夫か? 明日のスリーマンセルは」
「大丈夫だよ。明日になればケロリとしている」
どうやら随分酒に強いらしい。
尋常ではないペースで飲んでいた気がしたのだが、
エイミーとの幼少期との質問や先輩との進展について根掘り葉掘り聞かれて大層疲れた。
「けど、明日は紗理奈と魔道具屋に向かってもらう」
「魔道具屋?」
「こういうのだよ」
そう言って、与一は木の枝を振る。
次の瞬間それは立派な日本刀へと姿を変えていた。
「悪霊にだけダメージを与えるアイテムだ。お前の攻撃手段は紗理奈にも聞いている、けど念のため持っていたほうが良いだろう」
「助かる」
それは、本心だった。
人混みの多い町中で悪龍つきと出会ったら決闘のクーポンが起動できない。
それは俺のささやかな悩みだった。
「じゃ、また明日」
懐かしい重みを受け取って、与一は去っていく。
悪霊つきの本場京都。
確かに、東京とは一味も二味も違いそうだ。
続く




