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ブランコに乗った少女
タワーマンションの階段を駆けていく。
エレベーターは既にその機能を停止していた。
そして、最上階へと躍り出る。
いや、現状の最上階というべきか。
かつて中階層だったそこは、徹底的な破壊によって最上階へと変貌していた。
まだ高いその位置からは、灯りに照らされた夜の街が一望できる。
エイミーは、赤い目をして俺に視線を向けた。
「なんて禍々しい……」
女神が慄くように言う。
本当にそうだろうか。
圧迫感は覚える。死の危険を覚える。
けれども、俺が今のエイミーにかぶさって見えるのは、幼い頃の、ブランコに座った帽子を目深に被った少女だった。
「こんなところで一人でなにしてるんだ?」
俺はなんでもないようにエイミーに問う。
エイミーは腕を掲げる。
その瞬間、建物一つを飲み込むような巨大な火柱が俺を包んだ。
それを防いだのは女神の結界だ。
「友達、いないのか?」
俺はエイミーに歩み寄る。
エイミーの表情に、初めて戸惑いのようなものが宿った。
続く




