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非才
体幹は良い。体裁きも申し分ない。しかし才はない。
それが師匠であるヒョウンが俺に下した剣の評価。
だから与えられた。双刀を。
相手の急所に最短距離で走る光速の連続打撃。
技術よりも手数で押し切る。暴風雨の如き乱暴な手段。
しかし、それが俺の拠り所だった。
駆ける。
相手は一本の長剣を構え、静かに佇む。
片手を振るおうとして、辞めた。
切り落とされる自分の腕がイメージできたから。
「読むか、やるな」
そう、淡々と折笠は言う。
そして、もう一本の短剣と長剣で鍔迫り合いとなった。
相手の腹を蹴る。
教科書に乗っていない乱暴な手段ならお手の物。
そこに、追撃をかける。
今度こそ、急所――今回は首だ――への連続攻撃を敢行する。
一撃、二撃、三撃、四撃。
すべて弾かれた。
やる。
相手も一線級。
むしろ格上。
通常手段が通用すると思わないほうが良い。
なら、どうする?
そこで、俺の思考は停止する。
体だけが自然と動き、攻防一体の戦いを演じ続ける。
続く




