神の領域
俺の影にアリエルが憑依する。
そして、俺とアリエルは同時に唱えた。
「フレイム!」
唱えた瞬間、足が高熱で焼かれた。
思わず倒れ込みながらも、すかさずヒールを唱えて回復する。
「スペル反射……?」
アリエルが戸惑うように言う。
「ありえないにゃ。そんな高等技術、神の領域にゃ」
折笠は天に視線を向け、淡々と語り始める。
「神に追放された我々が天界に返り咲くにはどうすれば良いかわかるか?」
「方法はないにゃ」
アリエルは即答する。
「それがあるんだよ」
折笠は微笑んだ。
「自分自身が神になることだ」
俺も、涼子も、アリエルも、唖然としていた。
「偶像化された人間は信心を集める。信心は力となり神を作る。そうして俺はそのエネルギーを吸い上げ、神の領域へ至る方法を模索していた」
「じゃあ、京で暴れたアイツは……」
涼子は絞り出すように言う。
「あれは残念だった。あいつは、自我を持ちすぎた。その点、エイミーは違う。負の感情も善の感情も上手く昇華してエネルギーへと変える。理想的な触媒だ」
「ふざけるなよ……!」
俺は短剣の一本で、折笠を指した。
「俺の大事な幼馴染をパーツ扱いするなら、俺がお前を切って捨てる!」
「面白い、やってみろ。ただし」
折笠の手に長剣が握られる。
「俺は肉弾戦も強いぞ」
「気をつけるにゃ」
アリエルが言う。
「この圧迫感、ヒョウン並にゃ」
それは、俺も感じていたことだ。
師匠超えをするなら、ここしかなかった。
続く




