じゃあアレは誰だ?
陰陽連の捜査に三日が必要とされた。
その三日で、必要なデータは大体で揃った。
俺とアリエルと涼子は、俺の部屋に集まって、テーブルを囲んでいた。
「まず」
涼子は難しい表情で言う。
「衣笠折詠と言う人間は実在します。戸籍も確かです。出身中学から大学まで経歴もしっかりしています」
俺は安堵し、アリエルは落胆の表情を見せる。
幼馴染の傍にいるのが得体のしれない人物だなんてちょっと耐えられそうにない。
「ただ」
そう言って。涼子は付け加えた。
「折笠を知る人間によれば、折笠は自分の面倒を見るのも苦手な人間。人の世話をするなんてありえない、との話です」
俺は唖然とした。
じゃあ、エイミーの敏腕マネージャーをやっている彼は誰なのだ。
「とまあ堅苦しい口調で語ったけど、写真でもあればまだもっとはっきりするんだけどねー」
そう言って涼子は正座から胡座に姿勢を変える。
「折笠と言う人間が実在して、大学卒業と同時に失踪同然に上京した。これは事実みたいよ。その後は、女の元を転々としていたみたい」
「折笠がそんなだらしのない人間だとしたら……エイミーの傍にいるあいつはなんなんだ?」
部屋の中の気温が、数度下がったような気がした。
「女のヒモから敏腕マネージャーかぁ。確かに出来すぎてる」
涼子も同意する。
もう一つ耐えがたい事実がある。
それは、エイミーの生殺与奪が折笠の手の内にあるということだ。
下手なことは出来ない。
「とりあえず、折笠の写真を撮れば良いにゃね?」
アリエルが言う。
「まあ、有り体に言えばそうね」
涼子も同意する。
「なら、撮るしかないでしょ。写真」
俺に視線が集まった。
え、どうやって?
そんな発言は許されない雰囲気だった。
手元には折笠の名刺がある。
続く




