エイミーのドラマ出演
画面の右上に朝の時刻表示がされている。
「朝ドラ!?」
それはあまりに大事ではないかと俺は驚く。
「去年の軟式王子騒動でお茶の間にも相当知名度上がったからねー。ねじ込みやすかったんじゃないかな」
あずきは冷静に分析する。
それにしても朝ドラだ。大任すぎる。
「あずきさんは見たんですか?」
あずきは苦笑する。
「正直、ちょっと笑っちゃった」
それはどういう意味だろう。
オープニングが始まり、主人公らしき女性が色々なキャラクターと話し合っていく。
そのうち、病院へ行こうという流れになった。
エイミーの出番は中々回ってこない。
「ちょい役とかですか?」
「いや、ガッツリ出るみたいだよー。ドラマ後の番組でも特番組まれてたしねー」
また登録者数が増えるのか。俺はいっそ呆れてしまった。
「エイミーのおかげでNHKのオンデマンドの登録者数が海外から増えてるって噂だにゃ」
アリエルが言う。
なるほど、そういう効果もあるわけか。
主人公が病室を開けた。
窓が空いている。
風が吹き、光加減で金にも茶にも変わる髪が舞い踊る。
それに、帽子を脱いで髪を踊らせた幼いエイミーを幻視した。
「来てくれたんだね、ありがとう」
エイミーはか細い声で言う。
「何言ってんの。幼馴染でしょ」
「幼馴染、か……」
エイミーはか細い声で呟く。
「ねえ、私達、後どれだけ一緒にいられるかな」
そう言って切なげに微笑むエイミーは、何故か俺の心を抉った。
番組が終わり、ドラマの感想を言い合うキャスター達が現れる。そして、エイミーのVtuber活動の密着取材が始まった。
アリエルが笑い転げる。
「あのお転婆お嬢様の柄じゃないにゃ。誰だにゃこのキャストした奴」
「笑うよねえ……岳志君?」
「岳志?」
アリエルは、驚いたような表情になっている。
「泣いてるにゃ?」
俺は戸惑って、自分の頬を伝う液体を拭った。
俺は、泣いていた。
幼馴染が、元婚約者が、晴れ舞台で立派に活動している。
それに、素直に感動してしまった。
エイミー。
俺のものだった、エイミー。
今では、皆のエイミー。
この日、俺はエイミーが今までよりも遠くに行ったのだと実感した。
続く




