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越戸ゆかり 越戸みのり

「『くろすおーばー☆ちゃんねる』、登録者数2000人突破おめでとうございまーす!」

「yeah! やったぜー! ありがとうございまーす!」


 自分たちの動画チャンネルの登録者数がキリのいい数字を迎えたことに、越戸(こえど)ゆかりと越戸(こえど)みのりは歓声をあげていた。

 高校のときから毎日コツコツと動画をあげてきたチャンネルが、ついに大台の数字に乗ったのだ。これが嬉しくないわけがない。


 ゲーム実況から楽器演奏まで。

 自分たちが面白いと思ったものを、ひたすらジャンルを問わずやってきた。

 大手というには全然まだ遠いけれど、たまにやるライブ配信などではそれなりの人数が集まって、楽しくワイワイやっている。


 もっと視聴者層を絞って戦略的に登録者数を増やせ、などと言ってくる(やから)もいるが、お気楽にやるのが好きなのでそこまでガツガツとはやっていない。

 しかしまあ、そんな中でも定期的に覗いてくれる人がこれだけの人数に達したのだ。

 諸手を挙げてハイタッチし、ゆかりとみのりはお互いに画面を見ながら言う。


「これは記念動画とか作るべきかな? うん!」

「ていうか2000人てすごくない? うちの県の大ホールがいっぱいになるんですけど!」


 画面越しだと分かりにくいけれど、自分たちの前にそれだけの人間がいると思うとすごい。

 最初はストリートパフォーマンスだったものが、いつしか大舞台の上での演奏をするようになっていた、みたいなものだ。数字が地元の大ホールの客席数と同じだっただけに、そんな風に思う。

 実は東関東大会の会場だったよこはま芸術劇場は、座席数1800である。既にそこは越えている。

 あのオペラホールより人が集まっているということは、二人にとって重要なことであった。


 いったい、節目にはどんな動画を投稿しようか。

 二人でああでもないこうでもない、と言い合っていると、最新の動画にぽん、とコメントが書き込まれる。


「お、(みなと)だ」

「あいつもマメだねえ。毎日見てコメントくれるんだもん」


 動画主を始めて、一番にチャンネル登録をしてくれた最初の視聴者。

 そんな同い年のチューバ吹きに、ゆかりとみのりは笑ってそう言った。こちらが毎日投稿をするなら、あちらは毎日コメントをしてくれる。


 決して長いものではないとはいえ、毎度というのはそれなりに大変なはずだ。

 というか、若干執念めいたものも感じてちょっと引く。以前そう言ったら、彼は半眼になりつつも「いいだろ、別に」と応えそのままの姿勢を貫いてきた。

 半分本気、半分冗談というこちらのスタンスを、長い付き合いで分かっているからだろうか。律儀にファンでいてくれる同い年に、呆れとありがたさを覚えつつ二人はクスクスと笑い合った。


 正直に言えば、この反応があったから毎日投稿してきたようなものだ。

『くろすおーばー☆ちゃんねる』は、三人で作り上げてきたといっても過言ではない。まあ、そうでなくたって動画の投稿は続けていただろうけど――見てくれる人がいなくたって、やるつもりではあったのだけれども。


 毎回毎回いちいち反応してくれるものだから、こっちも意地になって毎日やり続けていたのだ。

 どんな会場であっても、最前列で拍手してくれる。

 そんな存在がいるだけで、案外と心強いものである。ああ、だったら次の動画は――とそろって思いついて、二人は言い合った。


「今度は湊も撮影に参加してもらおうか。なんたって一番最初のお客さんだもの。ステージには引っ張り込まないとね」

「記念ってことなら、いっちばん最初に撮ったときみたいに女装させてみようかー。顔に線でも入れる?」


 なんだかんだあって高校のとき初めに撮った動画はお蔵入りになってしまったが、今でもパソコンの隅に大事にしまってある。

「男の乳首って規約的にダメなんだよねえ」「意外と、規制かかってるんだよねえ」などと好き勝手なことを言いながら、同い年の着せ替え計画を練るゆかりとみのり。

 二人いっぺんに相手をしてもらいます――そう昔言ったことは、今でも有効なのだった。


 三人で動画を作るなら、やはり演奏系の内容にするべきだろうか。それとも三人でゲームをするか。悩みどころだ――とアイデアを紙に書きだしつつ、二人は言う。


「今週末には、涼子ちゃんの演奏動画も撮ってアップしてー。ああ、クッソ忙しい!」

「OBOGバンドのチャンネルも作らないとだもんねえ。まったくあいつら、分かんないことは全部わたしたちに振りやがって。その分自由にやらせてもらうから覚悟しとけよな!」


 周りの他のメンバーも巻き込んで、双子姉妹は前へと進んでいく。

 くるくる、くるくる――楽しく賑やかな方向へ。

 線路は続くよどこまでも。

 電子の海の中で、彼女たちは今日もステージに立つ。

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