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43話 旦那様と一緒(街中定期巡回)

「クラシオン、出掛けるのか」

「はい、定期巡回です」

「……私も行こう」


 終わらないんだな、と旦那様は何度目かになる言葉を呟いた。ほぼ癖になっているといってもいい一言。

 アルコとフレチャ、そしてサンドグリアルが捕まったとはいえ、デートの日の違和感が気になって、練習の合間を縫って調べに行こうと思っていた。やっとその日が来たと意気揚々としていたら、旦那様が一緒に行くと立ち上がった。

 アドルフォを下がらせて二人で巡回。二人きりで、巡回。


「私ったら不謹慎だわ」

「どうした?」

「旦那様と一緒なのが嬉しくて。いけませんね、真剣に原因を探らねばいけませんのに」

「うぐぐ」


 旦那様は最近よく唸る。

 けど体のどこかしらは赤くなるから、心配してくださっているのは分かるし、最近は少し言葉にもしてくれる。


「クラシオン、私から離れないように」

「はい、旦那様」


 歩きながら旦那様がデートの日からの詳細を教えてくれる。魔術師長に直々に申し出て調べてもらったらしいが、特段魔法は関わっていないらしい。

 

「魔術師長が仰るなら、やはり私の勘違いなのでしょうか」

「クラシオンの耳は特別だ。初期に何も感じなかったのに、今になって違和感が出るのは気になる」


 魔法が関わってなくても別の何かがあるかもしれないと旦那様は考えているよう。他の騎士達にも調査してもらい、多方面から探ってはいるらしいけど。


「それに、これは王女殿下が提案し始めた事だ。そこに悪意を混じられたら、王女殿下の立場が危うくなる可能性も出てきてしまう」

「カミラが……」


 もうすぐというところまできている音楽発表会。今では最後の確認作業だとカミラも多忙を極めていた。

 両国の友好をと隣国から音楽師を呼び共演、私達学生が参加するなど前例にないことをカミラはやろうとしている。しかもこの音楽祭は、市井の人々も鑑賞することができるよう一部の演目を野外で広い会場に設置したり、街中でも聞けるようにと、こうして初期段階から宣伝もかねて流している。

 ここまでカミラが率先し、動かしているものが、何かしらの不和を招くものだった場合、カミラはその責任をとることになる。一歩違えれば首が飛ぶような話だ。


「カミラの為にも、どうにかしないと」


 オスクロを早く倒さないとと思っていたけど、その前にこの不安な要素を取り除いてからのがいいわ。根拠はないし、魔術師長も何もないと仰っていたけど。


「羨ましいな」

「旦那様?」

「あ、いや、ちが、」


 うっかり口にしたとばかりに手で口元を隠し頬を染めている。


「旦那様、何が羨ましいのですか?」

「うっ……」


 じっと待つ。

 今までなら気分を害されたかと思って話を終わらせてしまいがちだったけど、今は旦那様が応えてくれるのを待つことにしている。

 旦那様が望まれたからだ。少しずつであるけど言葉にする、だから待ってほしいと。


「不謹慎、だが……王女殿下が羨ましいなと」

「?」

「その、クラシオンに、そこまで心配されて、想われてて……羨ましいなと」


 旦那様の視線が宙を彷徨う。


「旦那様」

「その、忘れてくれ」


 情けないと旦那様は嘆く。少しずつ話してくれるのは嬉しいけど、何故か高い割合で忘れてほしいと言われる。曰く、私が幻滅するとか自分が情けないとか。そんなことはないのに。


「旦那様、ありがとうございます」

「クラシオン?」

「旦那様がカミラと同じような危機に陥ろうものなら、私は全力でお守りしますわ!」

「い、いや、逆じゃないか?」


 何が逆なのだろう。


「大好きな人を助けたいと思う気持ちに、優劣はありません」

「っ!」


 耳まで赤くされて。

 私もカミラも心配してくださっているのね。


「!」

「クラシオン?」

「音……」


 ここにきて、以前と同じ違和感にぶち当たった。

 これだわ、いつも流れている音と同じなのに、妙に心がざわつくような不快感がある。少し頭痛もするような、金属的な音が混じっているような。

 旦那様は私の様子にすぐに察して、音の出る元へ連れていく。商店前に設置させてもらっていた小さな箱。

 違和感は変わらない。けど今度は旦那様が不快そうに眉根を寄せた。


「旦那様?」

「この箱に魔法をかけて音を出しているが……違うものに変わっている」

「え?」


 旦那様曰く、騎士立ち合いの元、王宮魔術師が魔法を施した箱を設置していった。その箱自体が違うという。


「かけられている魔法も、もしかしたら」

「ああ、全く別の魔法の可能性が出てくるな」

「けれど旦那様、魔術師長は何も仰ってなかったのでしょう?」

「……この箱自体に他の魔法が介入出来ないよう保護をかけていれば、遠隔で調べていた魔術師長の目を欺く事は可能かもしれない」

「そんな」


 我が国の魔術師長は世界に名を轟かす程の実力の持ち主と謳われている。遠隔で精査していたとしても、分かりそうなものなのに?


「後は、この箱にかけられたものが、より高度なものなのかという所か」


 魔術師長を欺くレベルの魔法使いがいるとでも? 近隣国にだっていないのに?

 旦那様が難しい顔をしたまま、箱を回収した。


「騎士達に伝えよう」


 一斉に街中の箱を調べようということらしい。設置したものと違うものがある場合、全回収すると。それを魔術師長の元で調べてもらえば、何かしらの分かるのではと言う。


「旦那様、私達は」

「大元を見に行くか」

「はい」


 箱は一つの所に結びつけられている。

 箱の大きさは一回り程大きくなるだけ。魔術師長が組み込んだ魔法を王城から受け取り、市井に張り巡らした小さな箱に伝わり音が出る。

 転生前の世界で例えるなら、電波とか回線といったとこかしら? 大きな箱はさながらハブとか。

 そのハブの役割をしている箱は、王城すぐ近くの王室管理の公園にある。サンドグリアルと相対した場所。


「旦那様、やはり……」

「大元までか」


 大元ですら替えられていた。

 時間は充分にあったとは思う。けど常日頃、騎士が王都を警備し、この箱も定期的に確認しているのにも関わらず、取り替えることが出来るのだろうか。


「おやおや」

「!」

「!」

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。


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