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21話 待て、待機だ

「で? エヴィターあれからどう?」

「傷はすっかり」

「んー、そっちじゃないけど……ああそう、あいつらもかなり悪質な魔法使ってきたしね」

「アルコとフレチャね」


 観劇回にアルコに加え、フレチャが現れた。

 アルコもフレチャも、オスクロからの力で異様なパワーアップをしている。

 その強さはスプレでは見られなかったし、なにより秘密裏に動こうとするはずが、人目に触れて世間を賑わしている。


「それにしてもおかしいわね」

「何が?」

「あいつら物盗りなのよ? 劇場で何も奪わずっておかしくない? もっとスマートに出来たでしょ。ああすれば混乱して、金品を大人しく差し出す貴族なんていないって考えにならない?」

「そうね」

「というか、社交場も劇場も警備厳重で、貴族や王族しか入れないのに、あんな簡単に侵入してくる? ありえないわよ」


 今日は音楽会の周知を市井で行う為、カミラの付き添いでアンヘリカと共に視察に来ている。

 録音と再生の魔法はカミラに預けた。

 そうしたら、こんな素敵な使い方を考えてくれて、今では街中から音楽が聞こえる。

 なんて素敵なの。音がある街中というのは雰囲気があっていいわ。


「これでアルコは退場したのかしら……」

「可能性はあるわね」


 さておき、視察を終えて私達は今、市井の泥棒コンビ、アルコとフレチャについて話している。


「そもそも王都の警備隊が、ここまでしても捕まえられない事がおかしいわ」


 カミラも疑問を抱いているようだ。

 旦那様はとても優秀と聞いている。

 その旦那様が取り逃がし続け、捕らえることが出来ないなんておかしい話だと。

 元々アルコとフレチャはエスパダの仲間。

 見逃しているのは当然だとしても、これだけ長く何度も取り逃がしていると、周囲から疑いがかかる。

 そういうことがないよう注意深く動くと思っていたけど、実際はそうではないのは私も疑問ではあった。


「お、いたいた」

「マヌエル」

「ライムンダ侯爵」


 ライムンダ侯爵が合流した。

 彼もまたカミラと同じく市井視察をしていた。

 あちらも視察が終わったらしく、妻であるアンヘリカの元へ来たよう。


「旦那様は……」

「ああ、あいつ警備の配置修正でまだ街にいるよ~」

「そうですか」

「会いたい?」

「はい」


 リンちゃん可愛いねえ、と笑顔のライムンダ侯爵。


「最近どう? あいつ早く帰ってるでしょ?」

「ええ、ここ最近は夕餉を共にしています」

「うーん、あいつ何か言ってた?」

「なにか、ですか?」


 あーそう、わかった大丈夫とライムンダ侯爵が明るく言うけれど、旦那様は何か伝えたいことがあったのかしら。

 それをきこうとした時、怒声が道の向こうから聞こえた。

 沢山の足音。装備している防具の音と、武器を持つ音。


「何?」

「騎士団だわ」


 ライムンダ侯爵の護衛騎士の一人が走ってきて、侯爵に耳打ちをした。


「へえ、そう」

「マヌエル?」

「アルコとフレチャが現れた」

「!」


 ライムンダ侯爵は手早く指示を出して、カミラとアンヘリカを安全な場所へ誘導する。

 私もアドルフォに促されるも、行くわけにいかず、振り切って走ろうとしたところで、ライムンダ侯爵が止めた。


「リンちゃんは残してあげて」

「しかし、」

「あいつ来るからさ。先行って伝えといてくれる?」


 渋々頷き、去っていくアドルフォ。

 去る前に、アンヘリカが何かをライムンダ侯爵に伝えていた。

 互いに親指立てて笑い合ってるから問題はないのかしら。


「じゃ、ここで待とうか」

「はい」


 程なくして聞いたことのある二つの駆ける足音と共に現れた。市井を賑わす悪の手先、件の泥棒たち。


「げ、あれ」

「アルコ?」

「やべ、面倒な奴が」

「あ、マジだ」


 分かっていて足を止める。

 正義の味方から逃れられると思ったら大間違いだわ。


「変身!」


 隣のライムンダ侯爵が小さく拍手を送ってくれる。

 そして背後から大量の足音。

 成程、挟み撃ちをしようとしてたのか。


「エスパダ」

「クラシオン! マヌエル、お前!」

「まーまー」


 私達を見留めた旦那様が、ライムンダ侯爵をねめつけた。

 侯爵が旦那様の隣に行き、いくらか話をしている。

 私はやるべきことをしないと。

 決まった音楽を流した。


「愚かなる者達よ、貴方達の思い通りにはさせません!

 私達は、大きな恐怖と悲しみを産み、人々の心を凍らせる強大な闇から、愛の輝きを持って人々を救うのです!」


「団長、早く奴らを」

「待て、待機だ」

「はい?!」


 飛びだそうとする騎士を制す旦那様。

 前に口上について話した甲斐があったわ。


「闇の支配が広がり、暗く辛い夜が来ようとも、必ずそれは終わりを迎えます!

 その漆黒の闇が解ける時、人々に平和と癒しという名の夜明けが齎されるのです!」


 さらにはライムンダ侯爵も飛びだそうとする騎士の首に腕を回して止めている。

 彼は文官だけど、力は騎士に負けていないのね。


「私達は! 地を照らし、正義の風を巻き起こす、悪の支配からこの世を守る者!

 闇を切り裂き、悪を討つ、愛の輝き!

 ラブリィブレッシング・スプレンダー!」


「だ、団長?!」

「待機だ」


「いつまでも悪事に自由がきくと思ったら大間違いです! 癒しの戦士、クラシオンがお相手します!」


「へー! すご!」

「感心してる場合ではないぞ、マヌエル」

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