9話 定まる目標
書き溜めここまでです。
更新もマイペースに頑張ります。
「よし!やってみるか」
俺はレッドが再び持ってきた獲物を前に気合いを入れる。
捌くのもそうなのだが、村に乗せていってもらった事に対して、レッドにお礼もしようと思っている。
そうでなくてもせっかく一緒にいるのだ。何かしてあげたい。
そこで考えついたのがレッドの保存食だ。
レッドがとってきた獲物を捌くことへは覚悟を決めた。
しかし、とってきた獲物はレッドの物であるべきだ。
俺は後々になるだろうが、レッドからしたら要らないであろう皮や骨といった素材を分けて貰えるだけでも有難いのだ。
お肉もたまにだが分けてもらおうと思ってたりもするが……
そんなわけで、干し肉にしてみようかと考えた。
そうなると恐らくだが1番の敵は水分だ。
きっちり取っておかないと失敗に繋がる。
なので服の袖やら裾を切り、それで水分をとることにする。
勿論しっかりと洗って乾燥も終えている。
干し肉用に切り分けた肉をしっかり洗い、切った布でしっかりと水分をとったあと、日陰の風通しが良いところに置いて乾燥させていく。
とりあえず2日程経ったので見てみると、カビが生えていたり、虫が湧いたりしていた物があったが、殆どは大丈夫そうだ。
失敗した物の状態をマニュアルを通して見たみたが、腐肉と表示され食べることは出来そうになかった。
原因はどうやらしっかり洗えてなかったことのようだ。
反省しつつ、他の物の状態を見てみると、残りは干し肉と表示されている。
どうやらこっちは成功したようだ。
試しに1つ、端の方を食べみるが、硬すぎず、柔らかすぎない、俺としては丁度いい塩梅で出来上がっている。
味も旨みが凝縮されたようで、味付けなどはしてないが、結構美味い。
レッドにもあげるとペロッと一瞬で飲み込んでいた。
試作も兼ねて小さめに肉を切り分けたから、レッドにはちょっと物足りなかったのかもしれない。
もう一日乾燥させる分はそのままにして、残りは回収。
俺のお礼はここからが本番なのだ。
出来た干し肉を細く砕き、俺の主食である木の実を調理した物をさらに砕いた物と水を加えて混ぜ合わせる。
コネ合わせて親指の先くらいに小分けした後、焼き上げていく。
それに合わせて、かまども何となくで作ってみた。といっても石で囲んだだけなのだが……
焦げないように付きっきりで見張り、なんとか完成させることが出来た。
ペットフードならぬ、自作の魔物フードだ。
まずは味見を兼ねて俺が食べてみる。
全て加工済みの物が材料だ。少々生でも問題ないはず。
口に入れると、外はカリッと、中はザクザクで中々の出来栄えだ。
味もめちゃくちゃ美味しい。
「レッド…この間、村に連れていったもらった時のお礼だ。食べてみて」
村人にもらった木のボウルに作った魔物フードを全部入れ、レッドに差し出す。
レッドも俺が食べているのを見てたから躊躇なく食べてくれた。
ザクザク良い音を立てながら無心で食べてくれている。
相変わらず一瞬で平らげ、その後尻尾がちぎれるんじゃないかと心配になるくらい振り回し、飛びかかってじゃれてくる。
レッドもとても気にいってくれたようで俺も満足だ。
まだまだ改良の余地はあるし、練習も兼ねていっぱい作ってやろう。
その夜。
俺はこの世界で自分のやりたいことを見つけた気がして、レッドと火を囲みながら頭の中を整理していた。
村に行った時、門番の人も言っていたが、やはり魔物という存在は人間にとって恐怖の対象だった。
勿論それは俺にとっても同じことなのは間違いない。
だが少し考え方は違う。
村人、というかこの世界の人間ほとんどがそうだと思うが、魔物を最初から悪しき存在、敵として見ているのだ。
俺がまだこの世界の事情に疎く、理由があってのことなのかもしれないが、俺にはどうしても魔物だからと敵視することが出来なかった。
それにはレッドの影響が大きい。
レッドが特別なのかもしれないが、互いに理解することが出来れば共に生きていくことが出来るはずなのだ。
現に俺とレッドは出来ている。
だから俺はこの世界で"魔物と共存"を目指すことにした。
分かり合えず敵対してしまうのは魔物だけではなく、人間に対しても同じことだ。
だからこそ人間は戦争なんて馬鹿なことをしてしまう。
レッドと関わり、魔物とも理解し合うことが出来るのは分かったのだ。
まだ漠然とした考えではあるが、出来ることなら魔物とも仲良くしていきたい。
魔物フードはその足がかりになってくれると良いなと思う。
こうして俺をきっかけに魔物と仲良くなる人間が増えれば、世界的にも何か新しい発見が見つかるかもしれない。
そうすれば世界に変化を望んだノアの願いを叶えることも出来るはずだ。
だがやはりまだ大々的にやるのは避けたい。
面倒事に巻き込まれて動きを縛られるのは御免だ。
現状では生き抜くことを優先したいし、共存を目指すのもまだ先のことだろう。
こうやって漠然とだが目標が定まると、やりたいこと、やらないといけないことがいっぱい浮かんでくるから不思議だ。
明日、リストにでもしようかな。
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