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35話 魔鋼の加工

かまどの完成から数日、予定していた精錬所も、かまどと似せて造りはしたが思うように成果が出ない。



金属を加工するには大まかに製錬、精錬の2つの工程が必要になる。



製錬は鉱石から金属を取り出す工程。

精錬は取り出した金属からさらに不純物を取り除く工程だ。



製錬に関しては俺が今持っている鉄は、すでにコロによって鉱石から鉄が取り出されて粒になった状態だ。



その為、製錬の工程は必要がなく、精錬も加工の段階で行えると思い、手持ちの粒をコロバーンを使って熱し、一纏めの塊にして、ボロボロになってきたナタで叩き形を整える。

その塊の中心から薄く鋭くした柄の部分を作り、そこに木材を半分に割り、柄に合うようにモチョ草の汁で貼り合わせる。

こうして不格好ながらも片手で持てるハンマーを造り出した。



ここまではまだ良いのだが、俺達には魔鋼という貴重な素材がすぐそばで手に入る。

それを使わない手はないと、かまどに入れたが変形すらしない。



温度自体はコロバーンを調節すれば問題ないのだが、肝心のかまどがそれに耐える事が出来ず、炎が漏れ出す結果となってしまった。



街でも魔鋼の加工は行われている。

ちゃん造られた施設なら魔鋼も加工出来るはずなのだが、俺達が使っているかまどは、所詮素人が有り合わせで造った代物だ。



何度も繰り返していると、コロバーンの火力、もとい魔鋼を溶かす温度に耐えられなかったようだ。



「うーーん」


「また失敗か?」



そんな頭を抱えている俺に見かねたアイムが声をかけてくる。



「カスドロをもっと多めにしたりしないとダメなのかな」


「…………新しい素材ではダメなのか?」



アイムのその言葉にハッとする。



街で加工が出来るという先入観から素材を変えるという選択肢が見えていなかった。



「ありがとうアイム!やっぱ1人で考えてもダメだな」


「そ、そうか?役に立てたなら良かった」



何故がアイムが照れながらも嬉しそうにしている。

マニュアルで条件に合う素材を夜中にでも探そうかと考えているとアイムから提案が出された。



「せっかくだし、ダンジョンに行ってみてはどうだろうか?」


「ダンジョン?」



アイムから簡単にダンジョンの事を聞いたのだが、夜アイムが寝付いたのを確認しマニュアルで改めてダンジョンについて調べてみた。



端的にいうと、ダンジョンとは局部的に魔力の濃い場所のことを指すらしい。



俺達が暮している場所は魔力風呂が出来るくらい魔力が濃く、その範囲はこの地域一帯に及ぶ。



だがダンジョンと呼ばれる場所は、その範囲が狭まり洞窟などの閉ざされた空間に限定され魔力が溜まる場所を指すそうだ。



そしてダンジョンは様々な資源を生み出す場所らしい。



1番近くにあるダンジョンは洞窟型で、最奥に魔力が高濃度で集まる魔力溜りがあり、そこから溢れた魔力が色々な影響を与え特別な資源に変生まれるようだ。



その為、ダンジョン毎に採れる資源の特性が変わる。

例えば鉄であっても、硬度が違ったり、別の特性が付与されていたり、そんな物が存在するのがダンジョンなのだ。



そしてダンジョンには特別な魔物がいる。

ダンジョンの魔物は一般の魔物とは異なり、魔力溜りから漏れ出た魔力から生まれた魔物であり、厳密には生物ではないようだ。



当然ダンジョンに入るのは人間だけでなく、動物や魔物も迷い込む。

そんな動物や魔物をダンジョンの魔力がコピーしたのがダンジョンの魔物なのだ。

だが、すぐにコピー出来るわけではないようで、数年単位でダンジョンに住み着いた者をコピーするようだ。



そんな背景もあり、ダンジョンは人間が入口を封鎖、監視している為、コピーの魔物が外に出ることもなく、またダンジョンに迷い込む者も現在ではいない。

しかしダンジョンのコピー魔物はダンジョンの魔力以外の魔力を感知するらしく、それ以外の魔力を感知すると襲ってくるそうだ。



「うーーん、中々のファンタジーだな」



つまりダンジョンにはお宝となる資源があり、中にいるのは、もれなく敵。

自身の魔力以外を感知することから同士討ちなどもないし、数が減ればまた魔力溜りから生まれる。



「たしかに魅力的ではあるけど、俺戦闘力なんか皆無だしなぁ………それに魔物達やアイムを付き合わすのも気が引けるし」



人間同士のいざこざが絶えないということは今はおいておき、ダンジョンに出入りするのは冒険者がほとんどらしく、一般人が入ることが出来るような難易度の低い場所はホントに極1部らしい。



近くにあるダンジョンはそれほど危険ではないようだが、冒険者も駆け出しは入ることが出来ないような難易度らしい。



「よしっ!ダンジョンは諦めよう。そこまで貴重な素材が欲しいわけでもないしな」



まぁ後々のことは分からないが現状ではダンジョンに入るメリットが無さすぎる。

なんとか手持ちでやりくりして魔鋼を加工出来るように頑張ってみよう。



―翌日―


「と言うわけだ」


「うむ、私も無理にとは言わない。そういう場所があると教えたかっただけだ」



アイムにダンジョンに入らないことを理由と共に伝えると納得してくれたようだ。



「とりあえず急場凌ぎで良いから魔鋼の加工する設備を造ろうと思う」


「了解した。他にもやることはあるからな!」



そう!魔鋼に拘っているのは魔鋼を使ってある物を作り、そこからさらに作りたい物があるからだ。



その後カスドロをふんだんに使い簡易かまどを完成させ、コロバーン頼みで魔鋼をなんとか溶かし、加工に成功。やっと念願の物を作ることが出来た。


「やっと針が出来たな!」


「あぁ、鉄製の針じゃ魔物の皮は硬すぎてすぐ折れちゃうし、魔鋼の針は買うと高いからな!値段見た時は目玉飛び出るかと思ったぞ」



やっとの思いで出来た小さな針だが、これを作り出すだけでかまどは壊れ、結構な労力を使った。

やっぱりちゃんとした設備は今後のことも考えると必要だが、今は後回しだ。

これでやっと、いつも持て余していた皮などの加工に着手出来る。

この針で色々な物を作っていかないといけないな!


読んで頂きありがとうございます。

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