34話 アップグレード
朝イチからアイムと随分話し込んでしまったが、今日はやる事がいっぱいだ。
買ってきた道具で諸々をアップグレード出来るのだ。
ワクワクが止まらない。
アイムには魔物フードを焼く手前の状態まで作ってもらい、ついでに食料集めも頼んでおいた。レッドとヴァンが同行しているので万が一はないだろう。
俺はまず荷物整理からだ。
その為にも物を置ける机なり台の製作から行う。
それを見越して街に行く以前にヴァンに頼んで手頃な木を切って枝なども落とし材料は確保してある。
とはいえ、今は簡易的な物で妥協する。
落ち着いたらゆっくり、ちゃんとした物を作ろう。
丸太を輪切りにした物を2つ用意し、表面を石を使ってひたすら削る。
技才を授かったからだろうか、物凄く思い描いた通りに作業が進む。
台というより座椅子みたいな物が出来たが、その上にガラス瓶を置き、ガラス瓶にはコロバーンを詰めていく。
「コロ炭とヴァンのトゲはキリの実の器で良いか……」
午前中いっぱい作業したが、色々と中途半端になってしまった。だが今日のメインはかまどだ。余裕があれば精錬所も造りたい。
この2つが完成すれば中途半端にやった諸々を後日ちゃんとやっていく予定だ。
まずはかまどから。
ちょうどアイムも帰ってきたので、昼食の後、チョコに頼んでアイムとカスドロを集めに行く。
「中にはがめついヤツがいるから、あげすぎはダメだぞ」
カストロに囲まれアワアワしているアイムにそう告げる。
泥まみれになり、苦戦しながらもアイムはカスドロを集め、俺と2人で結構な量を確保出来た。
「ふぅ…………」
「一息つく暇はないぞ?これすぐ固まっていくからさっさと作業しないと集めたカスドロが無駄になる」
「………ぅぇえええい!!!どんと来い!」
「どこの修行僧だよ!まぁ、さっさとやるか」
気合いを漲られせるアイムと共に、地形を利用し、石を円形に置いた場所にカスドロを塗っていく。
「今は表面綺麗にしなくて良いから、ドンドン塗ってけ」
「わ、分かった!」
1つは買ってきた鍋がすっぽり嵌る穴を開けた物と、もう1つは上に鉄板を乗せれるように組んだ2タイプのかまど、連結したような形でカスドロを塗っていく。
鍋や鉄板の位置調整や、カスドロの再調達を含め、夕暮れ時に何とか形に出来た。
「完成か?」
「あとはカスドロが固まって軽く火を入れてから調整になるかな………カスドロが薄い場所は割れたりするかもだし」
「大変な作業だ………こんな苦労を知らず街で私は使っていたのだな……」
「まぁ、その通りだけど今は理解しただろ?理解出来れば問題ないさ」
アイムは随分マシな方だが、この世界にはホントに漫画のような貴族様がいるらしい。
食事でさえ、召使いに口に運んでもらい食べるヤツなんてのもいるそうだ。
そんな奴とは間違いなく分かり合えないだろうな。
ともあれ、かまどが完成したので、まずは魔物フードを焼いてみる。
アイムはかまども魔物フードも自分で作ったからか、嬉しそうに、かまどに張り付いている。
俺はその間に精錬所の場所に目処を立てたり、魔物達が狩ってきた獲物を捌く。
そしてちゃんとした設備で作った魔物フード1号が出来上がり、顔をススだらけにしたアイムが嬉しそうに持ってくる。
魔物達も匂いに釣られ集まってきた。
「出来たぞ!」
「おぉー!いい匂いだな。俺も1個貰おうかな。(草)の方も」
まずは(草)を食べてみるが、苦味があるがエグ味等は以前に比べてだいぶ無くなっている。
味も良いし、俺的にはかなりの進化に思える。
「コロ、どうだ?」
俺とコロの味覚は違うから、(草)を唯一食べるコロに聞いてみる。
相変わらずダンディーな表情だったが、食べ終わると体を丸め、アイムの周りをグルグル回っている。よほど美味しかったのだろう。
「良かったな!コロも喜んでる」
「わ、私は君から教えて貰った通りに作っただけだ……」
そう言ってはいるが、口元を緩め嬉しそうだ。
次に(肉)の方。
こちらも干し肉が原料なのでジューシーなんてことは全くないが、火が均等に入ったからか抜群に美味しい。
魔物達もみんな大はしゃぎだ。
「しかし火の入れ方だけでここまで味が変わるもんなんだな」
「うむ、石で焼いた物も美味しいと思ったが、これはそれを軽く超えていくな」
こうしてかまど造りは大成功を収めた。
―翌日―
食料集めや狩ってきた獲物を捌く日課は俺に代わりアイムがこなしてくれているため、俺にはかなりの時間が出来た。
この時間を利用し精錬所を造ろうと考えていたのだが、予想以上に手間がかかりそうだった為、まずは中途半端になっている机や椅子などをしっかり作ることにした。
見た目は相変わらずだが、精度はかなり向上し机などはガタつきも無くなった。
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