31話 イサリアでの用事
教会に来たのは勿論、主スキルを授かる為だ。
中に入ると司祭がすでにいて、名前を告げると案内してくれた。
教会と聞いて俺は挙式を行う場所を想像していたが、この街のは違うらしく、いわゆる神殿みたいな造りだ。
内部の壁には色んな模様というか絵みたいな物が描かれており、柱が何本も建ち並ぶ。
俺が行くのは正面入口から丁度裏側に位置する場所で、地下へと続く階段があり、それを降りていく。
そこからは1人で進むようで、奥にある像に祈りを捧げるとスキルを授かるとのことだ。
「しかし手の込んだ造りだな。こういうの見るの好きだけど、今は執事さん待たせてるからな…」
通路を進むだけでも細やかな彫刻をいくつも見つけて関心してしまった。
通路を抜けるとこじんまりした部屋があり、そこに両手を胸の前で組み、祈っているかのような石像が佇んでいた。
「これ、ノアか?うーーん、男とも女とも見てとれるから判断出来ないな………」
近付きながらそんな感想が出てしまうが、前まで来ると片膝を付いて、目を閉じて両手を組み祈りを捧げる。
(技才、技才、技才、技才、技才、技才、技才、技才……)
【もうっ!わかったって…………】
そんな声が聞こえた気がして立ち上がり、自分のステータスを確認する。
―アベル―
・16歳・旅人(仮)・技才
―所持スキル―
・魔法(火)Lv7
・魔法(水)Lv7
・魔法(風)Lv5
・魔法(光)Lv2
・観察眼 Lv5
・調理 Lv6
・調合 Lv3
・木工 Lv2
・採取 Lv6
・意思疎通(魔物)Lv4
久しぶりに自分のステータス見たけど、やっぱりアイムに比べると赤子同然だな……
まぁ16歳ではあるけど、実質生まれて3ヶ月くらいの赤ちゃんだしな。
兎も角、目的の技才は授かる事が出来て一安心だ。
「ありがとうございました」
一応、石像に頭を下げて礼を言い、司祭と合流、司祭にも礼を言い、教会を出た。
すぐに執事さんが馬車のドアを開けてくれる。
そのまま馬車に乗り込むと、アイムが中央広場に到着したと教えてもらい、急いで戻る。
あくまで気持ちだけだが…………今乗っている馬車は送迎用の物らしいので、あまり速く動くことを想定してない造りなんだそうだ。
無事中央広場に戻り、またまた執事さんがドアを開けてくれたので、外に出るとアイムが笑顔で迎えてくれた。
「随分と早い到着だったようだな。スキルは授かることが出来たか?」
「………あ、あぁ。お陰様で」
「ん?どうした?」
「いや、もっとこう……お姫様っ!って感じの服装かと思ったけど……」
「バカを言うなっ!これから街を回るのに、そんな格好じゃ動きづらいだろ」
アイムの言うことはもっともなのだが、正直見てみたい気持ちはあった。
今の格好はまるで女っ気がない、男みたいな服装だ。
それが違和感なく似合っているのがまた凄いのだが……
「あ、そうだっ!………これ、約束のコロバーンな!くれぐれも慎重に取り扱ってくれよ?」
そう言ってキリの実から削り出した小さなの器に入れたコロバーンを手渡す。
勿論、簡易ラップフィルムで密閉済みだ。
「……………承知した」
返事に間があったのが気になるが、アイムは俺から受け取った器をそのままメイドさんに渡す。
そして代わりに小さな布袋を手渡してきた。
「代金だ。確認してくれ」
中を覗くと金貨が3枚入っている。
俺が渡したコロバーンはほんの少し、恐らく大さじ1くらいの量だ。
それに対して金貨3枚………金貨1枚が前世だと約10万円ほど。30万円支払ってもらったことになる。
「いやいやいや、こんなに貰えるはずないだろ!」
「私からの気持ちだ。多いに越した事もないだろ」
なんやかんややり取りした結果、金貨1枚だけ貰うことにして、後はなんとか返すことが出来た。
「全く………では買い物に行くとしようか」
「あぁ、案内、頼む」
ここで執事さん達とは別れ、アイムと2人歩きながら目当ての店を巡る。
意外にもアイムが紹介してくれる店の商品は、庶民的で実用的。
さらに騎士として遠征などをした経験からか、色々とアドバイスも貰いながら商品を買っていく。
大きなリュックにショルダーバッグ、大小の鍋にオタマ、コップなどの食器類と調理器具。
大小のガラス瓶。これが1番高かったが、それでも金は余裕で余った。
ならばと、ツルハシ、シャベル、オノ、さらに包丁と短剣も買った。
これだけ買ってもまだ銅貨が余っている。
大まかに、銅貨=1000円、銀貨=1万円、金貨=10万円となるが、前世とは物価が違う。
金貨1枚で大体の物は買えてしまう。欲しい物も思いつく限りは全て買うことが出来た。
「ふぅ……………」
「レッドは運べそうか?」
「アイツは力持ちだから余裕だぞ?」
「ふっ………そうか」
広場に戻り、買った物を早速リュックに入れ、割れ物類はショルダーバッグに移し、一息つく。
しばし無言の時間が続く。
先に口を開いたのはアイムの方だった。
「さて、それでは街の入口に向かうとしようか……」
「了解!」
再び歩き出し、入口まで戻ると大きな門の前に豪華な馬車、そしてその近くに綺麗なドレスを着て、日傘をさした女性が立っている。
「あれは……」
アイムの呟きと同時に女性も俺達に気付いたらしく、傘をたたみ、歩み寄ってきた。
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