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29話 アイム

アイムが加わり数日が過ぎた。



その間、アイムは何事にも精力的に取り組んでくれて俺としてはとても助かっている。



そして魔物達とも随分打ち解けたようだった。



「アベル!見てくれ。遂に私にも……」


「ん?」



そう言ってアイムは堂々とステータスを開示し見せてくる。



あまり他人に見せるものではないはずだが、アイムが嬉嬉として見せてきたこともあって、ついつい見てしまった。



―アイム・アートネス・アトリシア―


・17歳 ・王女 ・学才


―所持スキル―

・魔法 (水)Lv36

・魔法(火)Lv31

・魔法 (風)Lv29

・魔法 (光)Lv16

・剣術 Lv12

・意思疎通 (魔物)Lv1



いやLv 高っけぇなぁ、おい。



まぁ意思疎通を見て欲しいのだろうけど、Lvの高さについつい目を奪われる。

しかし名前にアが多いな…………



何も言わずそんな事を考えていたらアイムの表情がどんどん暗くなっていくのが分かった。

反応がないことに不安になったのだろうか…



「あぁ、すまん。Lvが高いから見とれてたんだ。やったな!意思疎通があればもっと魔物達の感情が読み取れやすくなるぞ」



そう言ってやると美人な顔を綻ばせ、とても嬉しそうにしているのが分かった。



しかしアイムのステータスに何か重大なことが記載されていたような気がするが…………考えるのはやめよう。

王女なんていう文字は見ていない。



「な、なぁアイム。ステータスってそんな簡単に見せて大丈夫なのか?」


「スキルだけなら問題ないだろう?」


「え?」


「ん?」


「いや、名前とか色々………見えてた…けど」



たちまちアイムの表情から血の気が引いていく。



「あ、いや、わ、私はその、なんだ。あれだ。えっと…」


「まぁ俺は王女なんてっ………ゴメン」


「…………いや、私の方こそすまない。つい浮かれてしまって隠すのを忘れていたようだ………」



手で顔を覆い隠しアイムが謝るが、とてつもなく微妙な空気になってしまった。



「いや、うん…………ま、まぁ俺としてはアイムが王女でも問題ないし……あ、もしかして無礼だ!とか言わないよな?」


「言うわけないだろう!私も今のように接してくれるほうが有難いのだが……」


「分かった。まぁこのことは忘れよう」



育ちのいいお嬢様だとは思っていたが、お姫様でしたか……

俺も鉄板中の大ボケをカマしてしまったが、忘れよう。



気まずい空気の中、アイムは魔物フードを作り始め、俺はそんなアイムを横目に見ながら少し考えこんでしまった。



漫画やアニメの話だが、主人公がたまたま出会ったヒロインが高貴な生まれだったりする事が多いことに少々疑問に思っていた時期がある。



設定に突っ込むのもおかしな話だが、そんな高貴な生まれの人間に簡単に出会うものなのか?そう思っていた。



すぐに設定だから。と納得はしたが、ここに来て正解が見えた気がした。



例えば俺が最初に行った村の人なんかは、行動パターンがほぼ決まっている。



村の外に出ることはほぼなく、出ても用事が終わればすぐ帰るし、ましてや女性でとなると、かなりその範囲は狭くなる。



一方でアイムみたいなお姫様だからこそ、予想外の出来事で遠くまで出歩くことが多い。



だからこそヒロインとして出会うのだと。



話が随分と脇道に逸れたが、だからといって俺がやる事は変わらない。

必死に生き抜くだけだ。

アイムの王女としての立場を利用しようなんて気は一切ないし、ここに居たら王女なんて立場も文字通り形無しだ。



そう考えを纏め一息ついた時だった。

レッドが鼻をスンスン鳴らし、鼻先で俺を小突いてくる。



「ん?どうした?」



レッドはそのまま洞窟の外へと向かった為、俺も後に続く。



「あれは?」



レッドの視線の先は馬に乗り、疾走する5人の人影があった。

距離もあり、土煙も凄いため、詳細まで姿を確認出来ないが騎士っぽい格好をしているように思える。



「アイム!………あれ」



洞窟にいたアイムに声をかけ、アイムが隣まで来て人影を見やる。



「あぁ、イサリアの騎士達だ。恐らく私を迎えに来たのだろう」


「探しにじゃないのか?」


「これでも腕には少々自信がある。浮遊魔法も私は使えるからな。簡単に死ぬとは思っていないはず……………恐らく、追手を捕まえ、ここの場所を聞いたのだろう」


「頼むから面倒事にしないでくれよ」


「分かっている!任せてくれ」



アイムはそう言うと手を上空に掲げ、赤く光る魔法を打ち上げた。

信号弾だろう。



信号弾を見た騎士達が、真っ直ぐ洞窟へ向かってくる。



その間に俺や魔物達は洞窟へと身を隠す。



少しすると4人の騎士が洞窟の前へとやってきた。

1人は山に登らず下で馬の面倒を見ている。



「ご無事ですか」


「あぁ、見ての通りだ」


そんなやり取りが聞こえ、しばらくやり取りが続いた後、アイムに呼ばれた。



「アベル、出てきてくれ」



まさかお呼びがかかると思っておらず、戸惑いながらも騎士達の前へと進む。



「ど、どうも」


「この者が私を助けてくれたのだ」


「そうでしたか。私達からもお礼を申し上げる」


「いや、まぁ、はい」



魔物達が助けた。なんて馬鹿正直に答えてもややこしくなるだけだ。

話を合わせることにした。


「それで?街はどうなっている?」


「はっ。それが…」


「いや、あのさ……ずっとここで話されても迷惑なんだが……」


「む?そうだな。すまない」



短い付き合いだったが、アイムもお迎えが来たことだ。

このまま騎士達と街に帰るだろう。

俺が街に行くことになったらアイムに少しばかり頼ろうか………



そんな事を考えていたのにアイムは出ていくどころか、騎士達と洞窟の中へと入ってきた。



(いや、入るんかーーーーい!!!)



「お、おいアイム…」


「任せておけ」



自信たっぷりにそう言うが、アイムは意外とポンコツな所がある。魔物達の存在を忘れていたりしないだろうな…



案の定、騎士達は魔物達をみて即座に警戒態勢をとる。



「こ、これはどういう………」


「剣から手を離せ。この子達に剣を向けることは許さんぞ」


「いや、しかし魔物でごさいま……………うぐっ」



騎士の1人がそう言った瞬間、アイムの拳が騎士の顔面を捉える。



「許さんと言ったはずだ」


「も、申し訳ありません」


「いや、グーパンかよ……」



そんな感想がつい口から出てしまったが、その後は騎士達も姿勢を正して座り、アイムと話し合っていた。

読んで頂きありがとうございます。

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