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23話 ヴァン

洞窟へと戻ったのだが、蛇もスゴスゴとついてきて、壁際で大人しくしている。



先程の魔物達の行動を見るに、魔物達なりの上下関係みたいなものを教えていたのではないかと思う。

現に蛇は俺や他の魔物達を襲うような仕草は一切見せていない。



しかし俺としては気が気ではない。

何をしていても蛇が気になり、作業が手につかない。

そんな俺の気持ちを察したのか、レッドかチョコ、どっちかが必ずそばにいてくれた。



するとレッドが洞窟から出て、すぐに獲物を狩り戻ってきた。

その獲物を俺が受け取り、魔物フードを渡して撫で回したあと、獲物を捌いていく。



レッドと入れ替わるようにチョコが出ていき、帰ってきたチョコにも同じように接した。



そんな様子を見ていたのか蛇は洞窟の外へと出ていく。

しかし今度はレッドもチョコも蛇を止めなかった。



少しすると蛇が獲物を咥えて帰ってきた。



「お、お前帰ってきちゃったのか………」



そのままどこかに行くかと思ったが、それはまぁいい。

問題は咥えていた獲物だ。

斑点が連なり渦を巻いたような模様が全身を覆っている。



「あの模様………毒か。それに……」



それは間違いなくチョコを蝕んでいた毒と同じものだ。

しかし、目の前の蛇がチョコに毒を食らわせた個体かどうかは分からない。



蛇は咥えていた獲物を俺の前にそっと降ろし見つめてくる。



「お前の気持ちは分かったが、これは使えない。毒に塗れた肉は流石に食えないからな…」



俺がそう言うと蛇はガッカリした様子で頭を下げた。



「だから今度からは毒を使わず仕留めてくれ。それなら大丈夫だから」



「………っ!!ジャー」



まるでパァっという効果音が聞こえてきそうなくらい、蛇の表情が晴れいく。

そして俺の前に降ろした獲物をパクッと丸呑みにしたあと、またすぐに外へと出ていった。

その後ろにレッドが続く。



「ふぅ…………なんとなく可愛く思えてきたな」



こうやって落ち着いて意思疎通を行えば大体の魔物とは分かり合える。



先程までは蛇が俺の意思を受け取ろうとしなかった為、暴れていたのだ。

この意思疎通というスキルもけっして万能ではない。

一方的に想いを伝えたり、受け取ったりは出来ないのだ。



それから程なく蛇とレッドが帰ってきた。

レッドは手ぶらだったが、蛇はその巨体に狩った獲物を巻き付け器用に運んでくる。



そして俺の前に喉元を切り裂かれた獲物を降ろした。



するとレッドが近く寄ってきて、蛇が仕留めた獲物の首筋辺りに向けて尻尾を振り下ろす。

そして蛇へと視線を向けた。



「ん?……あの蛇が尻尾で喉を切り裂いたってこと?」


「ウォン!」


「器用な蛇だなぁ………ホントに蛇かぁ?」



とりあえず嬉しそうにユラユラ揺れている蛇の為にも魔物フードをあげ、獲物を捌く。



この蛇、見た目は蛇っぽいが、同時にどことなく竜っぽさもある。

鱗も大きく、額にも外へ向けて角が2本伸びており、尻尾もよく見ると先端に鋭いヒレがあった。



今の感じだとここに居着きそうなのでマニュアルで調べてみる。

種族名はリーペントという蛇なのだが、面白い特性があった。

この蛇は地上で暮らすものと、地下で暮らすものとで違った特性が身に付くようなのだ。



まず地下で暮らすリーペントは外皮が岩のように硬く、また石や土の中を効率良く進むため、全身に鋭く小さなトゲが生えるようだ。

一方で地上に暮らすリーペントは体内に毒を持ち、牙から注入し獲物を弱らせ捕食するようなのだが、さらにそこで魔力を使用すると毒が変化し、石化する毒に変わるようだ。



「いや、怖すぎだろ…というか、よくチョコは無事だったな」



恐らくチョコの場合、噛まれて毒を食らったのではなく、リーペントを捕食して毒に侵されたのだろう。



そしてやはり見た目通り、リーペントをドラゴンの1種とみる者もいるそうだ。



「たしかドラゴンの祖先もワームとかいう蛇みたいなやつだったよな……」



恐らくだがその系統の魔物なのだろう。



マニュアルで調べている間、リーペントは俺をじっと見ていたようで、たまに舌をチロチロと出している。



「そういうの見ると蛇なんだけどなぁ……」



まぁ、蛇だろうがドラゴンだろうが仲良くなれれば、結局はどうでもいい。



「お前はここに残りたいか?」


「ジャ!」


「そうか……じゃあ名前決めないとな。蛇とかリーペントとかは名前じゃないし………んーーー、よし!ヴァンってどうだ?」


「ジャ!」



リーペント改め、ヴァンが鳴いたのをみて、頭を撫でてやる。

するとヴァンも目を瞑り気持ちよさそうにしていた。



「やっぱ鱗が凄いな。良く見るとカッコイイし!」



俺の言葉が伝わり嬉しかったのか尻尾をピコピコと振っている。

が、その拍子に尻尾の先から何かが落ちるのが分かった。



「ん?なんだ?」



近付き、見てみるとその巨体に比べ俺の親指程のトゲが抜け落ちていた。



「え?これ大丈夫なのか?」



そう問いかけるとヴァンは尻尾を俺に見せるように動かす。



「あ、もう同じようなの生えてるな……丁度生え変わるタイミングだったとかか?」



ヴァンは毒を持っている為、迂闊に触って毒を食らったとか笑い話にもならないため、慎重にトゲをマニュアルで確認しておく。



結果、そのトゲその物には毒はないのだが、毒を操る器官らしい。

そしてリーペントの魔力が潤った場合に新しい物に生え変わるようだ。



それは問題はないのだが、マニュアルにはさらに続きがあった。


毒はないのだが、このトゲに火が着くと火に油を注いだかのように、凄まじい勢いで燃え上がるらしい。



身体を離れ少しでも湿るとその特性はなくなるようだが、随分と危険な物のようだ。



「ヴァン、そのトゲ抜く時はあっちこっちで抜かないでくれよ。……………まず抜けるのをコントロール出来るのかな……」



マニュアルによれば魔力が潤った時に抜けるとあるが、ここは魔力風呂がある魔力高濃度地域だ。



そこら中にヴァンのトゲが落ちてたら怖すぎる。



ヴァンは顔を左右に振って何かを確認したあと、近くの石の上に尻尾を軽く振り下ろす。

石の上には先程のトゲが落ちていた。



「おぉ、コントロール出来るのか!良かった」



こうしてまた新しい友達、リーペントのヴァンが加わった。

読んで頂きありがとうございます。

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