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22話 運ばれてきたモノ

魔力風呂への通路は完成したが、突貫工事であるのは間違いない。



俺はカスドロを集め、通路に補強作業を行う。

こちらも3日ほどで完了し、これにて工事は完全に終了だ。



それと大したことではないのだが、魔力風呂の水を少し飲んでみたが、瞬時に立ちくらみがした。

栄養ドリンクを一気に何本も飲んだようなものなのだろうか。

今後は飲まないと固く誓ったが、代わりに魔力風呂の水を口に含んだまま少しすると、びっくりするくらい口内が綺麗になった。

下手に歯磨きするよりずっと楽で綺麗になることが分かったのだ。



一先ずは目標にしていたことが終わり、朝から日課をこなした後、今後のことについて考える。



「やっぱり魔鋼を採取して街に売りに行くべきか…」



魔力風呂のある空間には魔鋼という高級素材も存在している。

これを売って鍋や日用品を買い揃えるべきかどうか悩んでいたのだ。



というのも、魔鋼は貴重品だ。

それを俺みたいな奴が持って急に街に現れたら面倒事になるんじゃないかと思ったのだ。



「田舎の村じゃなくて、大きな街だしなぁ……」



しかし実際問題、行く以外の選択肢はないように思える。



「短剣もだいぶ切れ味悪くなってきたしなぁ…」



小さい塊を少量…偶然見付けたていで目立たないようにすれば大丈夫だと信じ、魔鋼の採掘をすることにした。



魔力風呂のある空間へいき、薄紫の光を放つ剥き出しで、かつ小さめの魔鋼を見付け、根元をナタでぶっ叩き採取する。

魔鋼自体、硬くてナタで砕くことは出来ないのだ。



採取を終え、洞窟へと戻ると、寛いでいたはずのレッドやコロが入口まで出て、外を見ている。



「チョコが帰ってきたのか?」



チョコは朝から狩りに出てまだ戻ってきていない。

たしかにいつもより帰りは遅いが、まだ昼くらいだ。

心配するようなことはないだろう。



そう思い、俺も外の方へ向かうとチョコの鳴き声が遠くで聞こえる。



「やっぱりチョコが帰ってきたんだな……」



そう口にし外に出た瞬間、思わず固まってしまった。



チョコが帰ってきたのは間違いないのだが、その両足にガッツリこれまた巨大な蛇を掴んでいる。

しかもまだ生きているようで、蛇はグネグネと身体をうねらせていた。

チョコはそのまま真っ直ぐ洞窟へと向かってくる。



「ちょ、ちょちょちょ…………」



俺はすぐさま洞窟の中へと引き返し、レッドやコロは俺に寄り添ってくれる。

そしてついにチョコは蛇を掴んだまま洞窟へと入り、着地する。

途端に蛇は顔を上げ、俺に向かって威嚇し、激しく暴れだす。



「ジャーーーーーーー」


「ち、チョコ!!!仕留めるならさっさとやってくれ!!!」



蛇が鳴いて俺に向けて顔を伸ばそうとした瞬間、チョコは蛇の顔の後ろをガッツリ掴んでいた足をそのまま振り上げ、バッコンバッコン地面に叩き付けていた。



「うぉっ………………お、おい!チョコ………」



再度呼びかけるとチョコは翼をバサバサして鳴き声を上げる。

しかし蛇は大人しくはなったがまだ生きている。



チョコが何かを訴えているのは分かるが、それが何か分からない。



「どうしろってんだよ……」



その蛇は暴れるのを止め、じっと俺を睨みつけてくる。

するとチョコがクチバシをカチカチと鳴らした。

それはチョコが魔物フードを欲しがる時にする仕草だ。



「い、今魔物フード欲しいのか!?先に仕留めてくれよ……」



いつもは手渡しすることもあるが、今はすぐそばに大蛇がいる。とても近付けない。



「行くぞ?……そら」



チョコの口目掛けて魔物フードを下投げしたが、チョコはそれを食わず、そのまま下に落とす。

そして蛇に向かって鳴き声を上げた。

一方の蛇は落ちた魔物フードには目もくれず、再び暴れ出す。



そしてそのままの状態がしばらく続いた。



「ホントに何がしたいんだよ………」



戸惑う俺を見兼ねてか、レッドが蛇のもとに行き、落ちている魔物フードをパクッと食べた。



「へ!?レッドが食っちゃうの?」



レッドはわざわざ蛇の前に座って魔物フードを咀嚼し、飲み込んだ後、脇に移動する。

今度はそれをみたコロが短い前足を伸ばし、俺の足をカリカリと引っ掻いてくる。



「こ、コロも欲しいのか?」



もうなる様になれと、コロにも草食用の魔物フードを手渡すと、コロも蛇の近くで魔物フードを食べていた。



さらに今度はチョコが再び魔物フードを催促してきた為、同じように投げ渡す。



落ちた魔物フードを食べようとチョコが蛇の拘束している片足を退けた瞬間、蛇が俺へと飛びかかる素振りを見せた。



しかしそれをレッドが凄まじい速度で蛇へと近付き、顔面をぶん殴って制止する。



蛇は胴体をチョコに掴まれたままであり、レッドに殴られ壁に激突。

チョコが魔物フードを食べ終えるまでレッドが蛇を睨みつけていた。



そして再びチョコが暴れる蛇の顔の後ろをあっさり掴み、さらに魔物フードを催促するが、今度はここに置けとばかりに蛇のすぐそばに何度もくちばしを向ける。



(蛇に魔物フードを食べさせたいのか?)



そう思いながら、近付くのは怖くて、また投げるように魔物フードを蛇のそばへと落とす。



当然だが、蛇は魔物フードは食べず、ジャージャーと何度も威嚇してくる。



そしてまた時間が経ち、再び蛇が威嚇しようと口を開けた瞬間、レッドが落ちている魔物フードを前足で弾き飛ばし、蛇の口へと放り込んだ。



「ジャっ……………ジャー、ジャー、ジャー」


「お、おぅ………これまた分かりやすい反応だな」



蛇は最初口に入った魔物フードを吐き出そうとしていたが、何かの拍子に噛んだのか、一気に表情が変わり咀嚼しながら顔をユラユラと揺らしていた。



「…………美味いか?」



そう言いながら、俺は近付こうとした瞬間、蛇は再び大口を開けて俺に飛びかかろうとしたところ、レッドに顔をぶん殴られ、チョコに顔を叩きつけられ、コロの尻尾で顔をぶっ叩かれていた。



「こ、こぇ……………」



蛇も怖いが魔物達みんな怖い。



「ピェ……………」



そしてチョコは小さく鳴くと、蛇を掴んだまま飛び上がり、外へと出ていった。



そして顔を掴んでいた足は蛇から離し、蛇が上空で逆さ吊りの状態となる。



「おいおいおい、まさか………」



チョコはそのまま草原へと滑空し、地面に当たる直前で器用に身体を捻り、蛇を勢いそのままに叩きつける。



そして再び蛇を掴んだまま戻ってきた。



「ピエ!!」



1声鳴くと、あろうことかチョコは蛇を俺の前に落とした。



慌てて隠れるが、蛇もこっ酷く痛めつけられたのが堪えたのか、随分と大人しい。



そして顔を上げないまま、尻尾をピコピコ振りながら俺に近寄り、まるで俺の機嫌を伺うかのようにジャージャーと鳴いていた。

読んで頂きありがとうございます。

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