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19話 新生活

―スライム―


死骸や他生物の排泄物、老廃物を体内に取り込み分解し、自らの養分にする魔物。

また時折吐き出す体液は微量の魔力を弾く。

その為、およそ人間の目で見える大きさの命ある動くものや、魔力を有したものは取り込んでも分解する事が出来ず、すぐに吐き出すため極めて危険の少ない魔物の1つ。

知性と呼べるようなものはほとんど有しておらず、本能で活動をし、充分に養分を溜め込むと分裂する。

このような特性を持つ為人間に捕獲され、街や村の下水処理場に放されることもあるが、形状から捕獲が少々困難でもある。



「ほうほう……人間に都合のいい魔物なんだなぁ」



外はやっと朝日が昇り始めたくらいでまだ薄暗いが、2度寝する気にもならず、スライムをマニュアルで確認してみた。



「正直……トイレ事情には困ってたしな…」



当然だが、俺や魔物達も出す物は出す。

前の洞窟で生活していた時は、催す度に頑張って穴を掘っていたが、スライムが居着いてくれたらかなり楽が出来そうだ。



「なぁなぁお前、俺達と一緒に暮らさないか?」


「……………………」



ダメだ…スライムに話しかけてみたが、お掃除ロボットに話しかけてる気分になってしまう。

マニュアルでも確認していたが、知能は低いようだ。



一応、話しかけると動きを止めはするが、またすぐにプルンプルンしだす。



「まぁ、このスライムが自然と居着いてくれる場所を造ってやれば問題ないな」



そうと決まれば今日はやることが盛り沢山だ。



「周囲の確認、食料や素材集め、トイレ作り、魔力風呂への開通工事………地道に1つずつだな!」



俺は立ち上がり、洞窟の外へと歩いて行く。

そんな俺にレッドは付き添ってくれ、コロはまだ眠いのか目をシパシパさせ動く気配はない。チョコもたまにコックリと舟を漕ぎながらも翼に顔を突っ込み、モゴモゴしていた。



「んんんーー……っはぁ」



ぐぐっと外で伸びをした後、仁王立ちで周囲を見渡してみる。



「めっちゃ綺麗だ!ホントにいい所に来たな……」



草原と川や森、まだ日は登りきっていないが心做しか輝いて見える。



視線を横を向けると、この洞窟より背の高い山がもう1つあり、そこから水が流れ落ちている。

その水は壁に沿って流れ落ちている為、騒音もなく、貯まった水が洞窟前へと流れ、また草原へと流れ落ちる。



「ははっ……滝がすぐ近くにある家とか大富豪かよ……」



勿論事前に分かっていた事ではあるが、改めて…というやつだ。



流れてくる水で顔を洗い、細い木の枝を噛んでほぐした自家製歯ブラシで歯を磨く。



「これもなんとかしたいな……新品は口の中が痛てぇ…」



歯を磨きながら、入口周辺を軽く見て回る。



「んぉ?ここ良さほぉ……」



入口のすぐ近くに岩で風避けとなっている場所を見つけ、かまどの設置場所にする。



(んー、トイレは水場の反対側……あの辺かなぁ…)



こんな感じで色々と妄想し、頭の中に予定として組み込んでいく。

妄想だけは得意だ!

なんたって前世では妄想を小説としてネットに投稿していたくらいだ。結果は悲惨なものだったが……



歯を磨き終えた後は、チョコに乗せてもらい、周囲を空から見てみる。



まずは洞窟周辺をグルっと見て回った。



ホントによく出来た場所で、中腹の広くなっている場所は突き出たような地形になっており、草原から洞窟まではその突き出た地形の傍からよじ登るルート1つしかなく、それ以外は鼠返しのようになっており絶壁だ。そのルートを防衛すれば襲ってくるヤツは洞窟まで登ってこれないだろうし、後々は整備もすれば俺も楽が出来る。



レッドがその絶壁を遊び気分で昇り降りしているのを見ると不安になるが、レッドが特別なだけだと信じよう。



さらに洞窟の入口の傍には、小山の頂上へと行けそうなルートがあり、頂上は見晴らしの良いそこそこ開けた場所となっている。



「頂上にも何か施設つくっても良いかもなぁ……」



とりあえず周囲の確認はこれくらいにして、まだ匂い袋の効果は2時間くらいは残っている。

徹底的に使う為にも、今のうちに素材集めをしておきたい。



チョコに洞窟へ一旦降ろしてもらい、ナタと短剣を装備。コロには留守番をしてもらい、レッド、チョコと一緒にまずは森へと入った。



チョコに乗ってこの地に来る移動の間、素材に関しても予め目処をたてておいた。



まずは目処をたてていた物から採取する。



まずはヤシの実のようなキリの実という木の実だ。

そのキリの実は、()は食料となり、硬い樹皮は俺が村人から貰ったサラダを入れるようなボウルのような皿の材料になっているのだ。



落ちていたキリの実を5つ拾い、一旦預けに洞窟へ戻ったあと、今まで使っていた木のボウルを手に、再び森へと入る。



そして水飴のようにネットリとした性質の樹液を採取する。

これが傷薬の材料にもなるのだ。



「順調、順調!!」



そのまま薪に出来そう物をいっぱい集めチョコに運んでもらった。



「チョコ、ありがとな!今日は無理かもしれないけど魔物フードいっぱい作るからな」


「ピエーーー」



翼をバサバサして喜ぶチョコはそのまま洞窟で休んでもらい、レッドと一緒に次は北側に流れている大きな川にいく。



そこでは川底にある石そっくりな見た目で、石貝という食用の2枚貝を採取する。これは殻を乾燥させ砕くと傷薬の材料となる素材で、殻を砕かずそのまま使用すれば傷薬の入れ物にもなる。



その後、草原で薬草や木の実を集めた。



そしてこの地にも俺が主食にしていた木の実、ンチャジョの実が存在している。



「なんでこの木の実、こんな言いにくい名前なんだよ…」



ずっと言いにくい名前だったから木の実と呼んでいたが、この地は他にも色んな種類があるため呼び分ける必要が出てきた。



「よし!まぁ、とりあえず傷薬の試作品作るくらいの薬草と俺の食料兼魔物フードの加工用のンチャジョの実もいっぱいとれたし、戻って加工といきますかぁ!」



そう意気込み洞窟へ戻ろうとした時、足が地面に張りついて動かなくなった。



「なんだ!?………ん!!このっ!!!」



物凄く粘着力のある汁を出す草を踏んづけていたみたいだ。



「これ何かに使えるかな……侵入防止の罠とか?」



マニュアルで調べると名前も安直でモチョ草というらしい。

読んで頂きありがとうございます。

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