16話 新天地へ
「さて、ここを離れるなら、あまりモタモタしてる暇もないな」
村人が村に帰り着くまで馬を使って半日。夜になるため俺を殺しに来るとしても、どんなに早くても明日の昼頃だ。
実際にはチョコやレッドを見てるわけだから戦力を集める時間もかかり、数日はかかるとは思うが、のんびりしていい理由にはならない。
「夜までは可能な限り食料を集めようか」
俺の言葉を聞いたレッドとチョコはそのまま獲物を狩りに出掛ける。
俺はコロと一緒に木の実や野草を集める。
夜、レッドとチョコが狩ってきた獲物を全て捌き、肉は干しておく。
チョコも先日レッドに何かを言われたのか、狩ってきた獲物はサイズが小さくなっていた。
といってもあくまでチョコ基準なのだが……
それでも随分と楽に捌ききることが出来た。
あとは俺が生活に使っていた簡易かまどや、桶など持っていけない物は壊す準備もしておく。
まだ使うかも知れないから、とりあえず準備だけだ。
それが終われば新天地の候補探しだ。
「理想は今採れる素材が全部採れる場所だなぁ…」
レッドやチョコはかなり環境に適応する力が高い。
その為あまり影響はないが、コロや俺はそうはいかない。
コロは基本岩を食べるが、草食でもある。
食べれる草がないと辛いだろう。
俺も食を支えてくれているのは、調理するとポップ〇ーンみたいになる木の実だ。
それがないと食に関して結構辛い。
そしてせっかく新天地に行くのなら目新しい素材も欲しい。
そう都合のいい場所は無いだろうが、マニュアルで夜通し探してみる。
「うぉ!ここめっちゃ良いじゃん……危険ではあるだろうけど………まさに俺の理想だ」
他にも幾つか目処をたて、朝、出発の準備にとりかかる。
「水を持ち運べないのが痛いな……皮袋に水汲んでいこうにもこの袋、汚ったないしなぁ…」
水は道中にあるのは確認しているため、我慢するとしよう。
捌いた魔物の皮を川で精一杯洗い、魔物フードや干し肉を包んで持ち運べるようにしておく。
一応傷薬も作っておいた。
「よし、こんなもんか……チョコ、明日から辛いだろうけど、よろしく頼むな」
「ピエ!」
この日は村人の襲来もなく、丸々準備に充てることが出来た。
そして翌朝から新天地目指して空の旅だ。
俺が理想としている場所は現在地から約5日くらいかかる。
かなり大雑把な計算、もう感といっていいまである。
実際チョコに乗せてもらい移動することになったのだが、チョコの移動速度やスタミナがどれだけ続くかなどが分からないためだ。
その日の内に約一月お世話になったこの場所も、出来る限り元の状態に戻しておいた。
翌朝、火の後始末を終え、灰なども地面に埋めて出発する準備は完璧に終わった。
「これで良しっと………思えば色んな思い出が出来た場所だな……ありがとうございました!」
俺はこの場所と、そして最初の地点にしてくれたノアに感謝を込めて頭を下げる。
そしてチョコの背にレッドと共に乗り、コロを抱える。
「チョコ、宜しくな!!行こう」
こうして俺は新天地を目指す。
しかしその前にやっておくことがある。
新天地へ向かう前に立ち寄る場所があるのだ。
そう、村だ。
別に殺られる前に殺ってやる!なんて考えは全くなく、しかし俺が出て行くことを確認出来なければ村人も安心出来ないだろうと思ったのだ。
だからこそ開き直って、堂々と村の入口にチョコと共に降り立った。
門番の人もまたチョコが襲いにきたと大騒ぎする様子が遠目でも確認出来た。
そして武器を構える門番の人はチョコの背から俺が降り立つと最初は目を丸くしていたが、すぐに鋭く睨まれた。
「噂は本当だったんだな!!!せっかく親切にしてやったのに恩を仇で返しやがって!!!」
分かってはいたが、やはり心に刺さる。
「もう俺が何を言っても貴方達は信じないでしょう。だから俺はこの子達とこの地を去ります。………これは魔物達用に作った食べ物です。万が一の場合があればこれを使って魔物の注意引いて対処してください。使い過ぎればその食べ物を狙って襲ってくるかも知れませんので、使いすぎは注意してください。今の季節だとかなり日持ちもするはずです」
俺は一気に説明し、魔物フードを包んだ葉っぱを俺の足元へ置き、その後チョコの背中に乗った。
「では、お元気で……」
俺は頭を下げ、チョコに移動を促す。
正直なところ、恩を仇で返したなんて微塵も思っていない。俺はちゃんと対価を支払ったし、あの村人達にも親切の裏に何か思惑はあったはずだ。
食料でもある魔物フードを渡したのは、少しでも魔物フードを通じて魔物への意識を変えて欲しいといった想いからだ。
まぁ、無駄になるだろうけど……
「気持ちを切り替えないと……匂い袋の効果もあと、まる3日。それまで辿り着けたら良いけど…」
辿り着いたとしてもマニュアルの地図でしか確認していない場所だ。
実際見てまた別の場所を探す可能性も大いにある。
「また生活も1からだしな!……皆が居てくれるから1からじゃないか」
こうして正真正銘、俺達は新天地目指して出発した。
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