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15話 ぴえん

かなり緊迫した場面だが、匂い袋の効果でルフが悪意を持っていないことは、なんとなく分かる。



さらに警戒心の強いレッドが、ここにルフを立ち入らせたのも、ルフに悪意がなかったからだろう。



意を決し、ルフに話しかけてみる。



「よ、よし!……………お前はやっぱり魔物フードが欲しいのか?」


「ピェェェーーー」



なんとなく肯定している気がする……



「そうか……でもゴメンな。あれはお前にあげた分で最後だったんだ。もう無いよ」


「ピェ……」


「お、おう……めちゃ悲しんでるな」



笑けるくらいにルフは素直で分かりやすい。



「あっ!お前…腹の模様、薄くなってきてるな。解毒薬が効いたのか」



俺がそう言うとルフはピョンと俺に向かって近付き、顔を寄せてくる。

そんなルフのくちばしを撫でてやった。



「よしよし。お前、顔よく見るとすんごい美形だな……身体もフワフワだし」



俺がそう言うと、ルフは足を伸ばして腰を地面に着け、座り込む。

そして大きな翼で俺をまるで抱くように、身体に埋められた。



「どわっ!?……はは、変な座り方」



そんなやり取りをしていると、レッドもルフの身体に俺と一緒に埋まる。間髪入れずにコロもやってきた。



「お?コロももう慣れたのか?」



やはり魔物同士では互いに理解が早い。

レッドとコロもかなり早い段階で打ち解けていたが、レッドやコロはすでにルフに警戒心は抱いていないようだ。



「よし、とりあえず洞窟に入ろうか…魔物フードも作ってやらないといけないしな」



俺に続きレッドとコロも洞窟に入るが、ルフも入ろうと頭を突っ込み、入口でつっかえていた。



「お前は無理だろ!!外で我慢してくれ…」


「ピエン」


「ピエンて!!」



思わずツッコミを入れてしまう。



ルフも俺達の様子が気になるようで、頭を突っ込んだままその日は過ごしていた。




そして翌日。



俺は更に大変な思いをすることになった。



レッドが獲物を仕留め、俺がそれを魔物フードに加工する様子を見ていたルフも獲物を仕留めてきた。



毒はすっかり抜けて獲物を捕らえることが出来たのには安心したのだが、仕留めてきた獲物がデカい。



「これを捌かなきゃいけねぇのか……」


「ピェー」


「………よーし!やってやんよ!!!」



レッドがとってくる獲物は兎の魔物だったり、1番大きくても鹿くらいの大きさのものだった。

ルフがとってきたのはクマのような魔物。とにかくデカい。



そんなデカい獲物を見てレッドがルフに何やらアウアウと言っていたようだが、俺はコロに見守られながら無我夢中で獲物を捌く。

そして、それだけでほぼ1日が終わってしまった。



そんな生活をさらに数日過ごした。



やはりというか、ルフは俺達のもとに居着いてしまった。

一緒に暮らすのだから名前をまた勝手にチョコとつけてみた。



けっして某ゲームの黄色の鳥に影響を受けた訳では無い。何よりチョコは真っ白だ。

まぁデブの方は白っぽかった気もするが……

とにかくまた新しい友達が増えた。




しかしさらに事態は急変する。



それは匂い袋の効果が残り5日となった日のことだ。

本格的にサバイバルに向けて準備をしなければいけなくなり、村にも再度向かうべく売る物を準備していた昼時のことだ。



レッドが何やら鼻を鳴らし、俺に警戒を呼びかけてくる。



「なんだろう……」



レッドはそのまま偵察に行ってくれたのか、森に姿を消す。



少しすると川下方面の森からガサガサと音が聞こえてきた。

そして草木を掻き分け、3人の村の住人が姿を見せる。



「えっ!?」



まさか村人と洞窟で鉢合わせることになるとは想像もしてなく、俺は固まってしまった。



「やぁ!探したよ。森にしばらくいるって聞いてたからお礼をしに訪ねて…み……た…」



村人は俺の後方にいたチョコに気が付くと、言葉を止める。



「………ふ、ふざけるな!!!!」

「俺達を騙してたんだな!」

「お前があの鳥を使って村を襲ったのか!」



村人達は一気に態度を変え、俺に武器を向ける。



「ち、ちがう!!まってくれ」


「くそ!どうりでおかしいと思ってたんだ…あんたが出てきた後、あの鳥はすぐに村から姿を消したからな!お前が操ってたんだろ」


「話を聞け!!コイツは毒に侵されていて気が立ってただけなんだ!今は…」



村人達に俺の言葉は届かず、手に持った武器を構えジリジリと距離を詰めようとしている。



そんな様子を静かに見守っていた魔物達が動き出す。

チョコが翼を広げ威嚇し、コロも洞窟から姿を現し尻尾を地面に叩きつける。

そしてこうなることを予想し姿を消していたであろうレッドも真っ赤に体毛を変化させ、俺を庇うように姿を現した。



「他にもいたぞ!!」



村人がそう言うと同時にレッドが前足を振り上げる。


「ひぃぃぃ」

「くそ、一旦逃げるんだ!!」



村人はそう言うと走って逃げていく。

そして程なく、遠くから馬の鳴き声が聞こえてきた。



「馬で来てたのか……」



そう呟く俺に魔物達が集まってくる。



「ピエン」



チョコは悲しげに鳴くと、くちばしを俺へと延ばしてくる。



「はは、お前が気にする必要は無いぞ。俺は元から人と暮らす気は無かったからな……でも……もうここにも居られないな」



そう呟いたあと俺は地面に腰を降ろす。



「俺はここを出るよ………お前達はどうする?」



俺の問いかけに魔物達は何も言わず、ただ身体を寄せてくる。



「一緒に居てくれるのか……ありがとう」



ほんの些細な誤解から事は発展し、俺はこの地を離れることになってしまった。

読んで頂きありがとうございます。

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