13話 村に迫る危機
当初俺とレッドだけだった生活に、ラピスディロスのコロが加わった。
そして数日一緒に生活したことで新たな発見がいくつかあった。
まず1つ目はスキルに関してだ。
この世界のスキルとは、スキルを得たことで技能が発揮される訳ではない為、あまり重要視していなかった。
そのためレッドと意思疎通が出来るのは、レッドの種族であるルプレックスの知能が極めて高いからで、レッドが幼い頃、人間である俺と関わり、レッドも俺に関心を持ってくれたからだと思っていた。
それ自体完全に間違いでもないのだが、しかし拙いながらもコロと意思疎通が出来ることを不思議に思い、ふと自分のステータスを覗いて見た時、意思疎通(魔物)Lv1というスキルを獲得していたことに気付いた。
恐らくレッドと意思疎通をしながら生活をしていた際に取得したスキルだが、レッドに対してのみ効果が適応される訳ではなく、スキル名にもある通り魔物全般に効果が適応されているようなのだ。
まぁ、ゲームで言うところのパッシブスキルのようなものだ。
このスキルを得たことで俺は全魔物達と意思疎通が出来るようになっていたのだ。
このようなスキルの存在を発見したことがまず1つ。
もう1つの発見はマニュアルについて。
こちらは先程のスキルに関しての嬉しい誤算とは違い、少々困った発見だ。
確かにマニュアルは知りたいことについて知識を得ることが出来る非常に有難い物なのだが、逆を言えば知りたい事柄を知っていないと知識を得ることが出来ない。
現代の検索エンジンのように関連した知識を全く表示してくれないのだ。
これに関してはマニュアルが俺個人に授けられた物ではなく、転生者に授けられた物である為、仕方ないと諦めるしかない。
俺にとって必要な知識でも、他の転生者には必要ない知識である可能性もある。
そんなものを際限なく表示されては邪魔でしかないし、世界の知識なんて量が膨大過ぎて俺が処理しきれない。
知識を得るにしても、他者や文化に触れ影響を受け、自らが関心を持たなければならないというわけだ。
発見としては、現在こんなところだ。
そして現在の俺のステータスはこんな感じ。
―アベル―
・16歳・旅人(仮)
―所持スキル―
・魔法(火)Lv4
・魔法(水)Lv4
・魔法(風)Lv2
・魔法(光)Lv1
・観察眼 Lv4
・調理 Lv3
・調合 Lv1
・木工 Lv1
・採取 Lv2
・意思疎通(魔物)Lv1
―▽▽▽―
神と名乗るノアから貰った匂い袋の効果が残り10日となった日のこと。
「そろそろ村にもう1回行ったほうが良いかな……」
正直なところ、人里で暮らすことはすでに考えていない。
しかし今穏やかな生活が出来ているのは間違いなく匂い袋のおかげだ。
匂い袋の効果がきれ、野生の動物や魔物に襲われることを考えて防衛手段や、それ以前に未だに洞窟生活だ。
生活水準を上げる為にも村にもう一度行こうかと、川で遊んでいるレッドとコロを見ながら悩んでいた時だった。
突然レッドがコロを俺のもとに弾くように飛ばしてきた。
コロも瞬時に丸まっており、俺は何事かと思いレッドを見ると、レッドは体毛を真っ赤に変化させ、声を出さず空を睨んでいた。
(敵か!?…………)
匂い袋の効果で襲ってくる者はいないはずなのだが、戦闘態勢のレッドを見るとそう思ってしまう。
次の瞬間、空が影に覆われる。
それもかなり大きな影だ。
コロを抱え、ビビりながらも声を押し殺して空を見ているととてつもなく巨大な鳥が頭上を通るのが見えた。
(いや、何あれ!?鳥?デカすぎだろ………)
ハッキリとは見えなかったが、とにかくデカい。
そんな鳥が森のすぐ上、鳥からすればかなり低い高度で飛んでいた。
そして嫌な予感がした。
一瞬のことではあったが、あの鳥から苛立ちのような意思が感じ取れた。
そしてあの鳥が向かった方角には村がある。
鳥が高度を下げて飛んでいるのは獲物を捕える為ではないだろうか…
「まさか、村を襲う気かっ!?」
それは不味い。人にとってもあの魔物にとっても。
すぐにコロを洞窟へ運ぶ。
「コロ、お前はここにいてくれ」
コロが頷くの確認し、俺はすぐにレッドのもとに走る。
「レッド、頼む。俺を乗せてあの鳥を追いかけてく…」
俺の言葉を聞き終える前にレッドは俺を背に乗せ走り出す。
「まだ村を襲うって決まった訳じゃない…レッド、とりあえず確認がしたい。一定距離を保ってアイツを追ってくれ」
距離感なんかはレッドに任せ、ただ鳥を追っていく。
そして遠目で村が見える場所までくると俺の嫌な予感が当たり、鳥は村の上空で旋回し始めた。
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