12話 新たな友達
―数日後―
鉄の加工をやってはみたのだが、表面が溶けるだけで形を変えることが出来なかった。
それが分かると今は無理だと判断し、きっぱりと諦める。
代わりに魔物フードの製作に勤しんだ。
「レッド、これ食ってみる?」
レッドとの関係もかなり良くなったように思える。
友達になってくれと言ったあの日、改めて考えると俺はレッドに対して名前も名乗っていないことに気付き、慌てて名乗った。
そして今では随分と気持ちも分かり合えるようになった。……気がする。
魔物フードに関してもサマになってきて、現在はもう1種類作成した。
これには野草や木の実を主に使い、草食魔物達が食べれるようにしてある。
それをレッドに差し出してみた。
「アウ…………」
レッドは肉食という訳でもない為、食べてはくれたが好みではないようだ。
「レッドはやっぱりこっちが好きか」
そう言って魔物フードを2、3粒手のひらに乗せ、差し出す。
これも岩塩をほんの僅かに加え、味を整えてある改良品だ。
レッドは舌で掬いとると一瞬で平らげた。
「そろそろ傷薬の改良もしたいし、岩塩ももうちょっと欲しいところだな……またあの場所に行かないと…レッド、また頼んでいいか?」
「ウォウ!!」
今回は鉄を放置し、岩塩を多めに採取するつもりでラピスディロスがいた場所に再びやって来た。
「アイツ居るかなぁ…」
レッドの背に跨りながら周りを見渡すが、魔物は居ないようだ。
「ま、同じ個体じゃない可能性もあるしな」
魔物が居ないのなら今のうちに岩塩を採取しようと、レッドに頼み川を飛び越える。
前来た時のように鉄粒があったがほんの少しだけだったためそのまま放置し、岩塩を採取する。
今回は袋に入るだけ詰め込んだ。
そして帰ろうとしていたところにラピスディロスが姿を現した。
レッドも鼻をスンスン鳴らしており、どうやら前見た時と同じ個体のようだ。
「お?また会ったな。お前にお土産持ってきたぞ」
そう言いながらラピスディロスの前に魔物フード(草)を3粒程おいてみる。
ラピスディロスも最初は匂いを嗅ぎ、怪しんでいたようだが、すぐに1つを口に入れてくれた。
「どう?………美味い?」
魔物フード(草)は俺も食べてはみたが、火を入れたことで青臭さが際立ち、あまり美味しくはなかった。
改良するにも意見を言ってくれるヤツがいない為進展しなかったのだ。
ラピスディロスはコリコリと良い音をたてながら魔物フード(草)を頬張っている。
飲み込んだ途端、目を見開き残りも平らげた。
トゲのついた鉄球のような短い尻尾で地面を軽く叩くと、喜んでくれているのが伝わってきた。
「美味いか!良かった……」
目的も果たし、帰ろうとレッドに跨り川を再び飛び越えた後、ドボンと川に何かが落ちる音が聞こえてくる。
ラピスディロスが落ちたのかとすぐ振り返ると、先程までラピスディロスがいた場所に姿がない。
慌てて川を覗くと短い手足で必死に対岸に渡ろうとするラピスディロスの姿があった。
「レッド!!」
レッドに頼み、すぐに崖下にある川の側に降り立った。
レッドはそのまま俺を降ろすと、水面スレスレで川を飛び越える勢いで跳躍。
そのままラピスディロスの背を前足で弾き、俺に向けて飛ばしてきた。
飛びながら丸まったラピスディロスを俺は必死に受け止める。
レッドもすぐに対岸の壁を蹴って帰ってきた。
「お前ぇ………何やってんだよ」
そう言いながらラピスディロスを見ると、ラピスディロスは体は丸めたまま顔だけを出し、俺を見つめている。
「もしかして俺達と一緒に来たいのか?」
なんとなくそう思い聞いてみるとラピスディロスもコクリと頷いた。
「はは、そうか!じゃ一緒に行くか」
そう思ったが、すぐに考えを改める。
生活する場所が変われば食べ物も変わってくる。
ラピスディロスが主食にしている草や岩が洞窟近辺にないようなら連れていくべきではない。
すぐにマニュアルで調べてみたが、草に関しては同じものが洞窟近辺に生えているようだ。
岩に関しても極小量しか食べないうえ、その岩も洞窟の岩と同じ物だ。
岩塩もラピスディロスにとって嗜好品であるようで、むしろ摂りすぎは良くないようだ。
「うーん、問題ないかな。レッドも随分馴染んでるようだし、一緒に行くか!」
こうして俺は再びレッドに跨り、丸まったラピスディロスを抱えて洞窟へと戻った。
新しい友達と同居人?だ。
「俺はアベルだ。よろしくな!こっちはレッド」
自己紹介を終え、ラピスディロスと呼ぶのも長ったらしい為、名前を決めることにした。
「丸いし、転がるし、コロって呼んでいいか?」
ラピスディロス改め、コロも納得してくれたようでコクコクと頷いていた。
俺とレッドにコロ……最初は1人だったけど賑やかになってきた。
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