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10話 鉄が欲しい

やりたいことリスト(暫定)



―色んな魔物と仲良くなる―



これに関しては俺の意思だけではどうにもならない為、成り行き次第。



―生活基準の向上―


・とりあえずは冬の到来を見越した準備。


・魔物と仲良くなる為には俺自身の活動範囲を広げる必要があるため、それに伴った道具や技術の取得。


・道具を作るための施設を造る。


・素材集め。



地面に枝で書き出しながら、パッと思い付いた物を纏めてみたが、途方もない気がする。



しかしまずは1年を通して生き残ることが最優先だ。

冬に該当する寒期を安定して乗り越えられないと、寒期の度にドタバタすることになってしまう。



とは言うものの、現在まだ寒期が明けたばかり。

頭の中に考えとして持っていれば、まだ焦る必要も無い。



となれば、生活を豊かにする為の道具が欲しいところ。



やっぱり鉄を用いた道具。

鍋もそうだけど、鉄を採掘する為の道具だったり、武器……



武器は要らないか……扱えない物を持っていても、いざと言う時使えなければ邪魔でしかない。



魔物フードも鉄製品を使って加工する施設が出来ればもっと進化するはずだし、生活基準を向上させる物を作るにしてもやはり鉄製品は必須だ。



それに見合う何かがあれば鉄には拘らないが、魔物素材を加工することも出来ない今の現状だと、鉄が1番信頼出来て、手に入れやすいはず……



精錬施設も必要になるが、俺が使う道具に使う分を精錬出来ればいい。

1度に大量生産するわけではないので、小型で十分だし、道具も俺が使えたら不格好でも問題ない。1級品である必要はないのだ。



ともかくまずは鉄がないと始まらない。

早速マニュアルで1番手短な場所を検索してみる。



村に行くのと同じくらいの距離で、歩いて行ける場所に極小数だが鉄があるようだ。さらに副産物して岩塩もある。



というより岩塩が主に採れる場所に極小数、鉄が採れると言ったほうが正しいか。



道中が心配だけど、幸いまだ神様特製の匂い袋があるし、むしろ今行っておくべきだ。



レッドに頼めば苦労はしないだろうが、これはあくまで俺が使う物を採りにいくのだ。

あまりレッドにばかり頼りたくはない。



善は急げ!早速準備を始めた。



1泊はすることになるだろうし、カチカチに乾燥させた干し肉と木の実があれば食料は大丈夫だろう。

レッドは硬い干し肉があまり気にいらないようで好んで食べてはくれなかったから、俺が貰うことにした。



魔物フードに加工しようと思っていたが、今回は俺の食料にさせてもらおう。



1日かけて準備を終え、夜レッドに伝えておく。



「レッド、明日俺は出かけてくる。その日は帰って来れないと思うから…魔物フードは作ってるから好きな時にも食べてくれ」



レッドはコクコク頷いている。ホントに賢いやつだ。



翌日、夜明けから出発する。

しかしそこにはレッドが当然のように同行してきた。



「レッド、無理についてこなくていいんだぞ?」



そういうとレッドは「何言ってんだこいつ?」みたいな唖然とした顔で見つめてくる。



「お前は好きなことしてても良いんだ。俺と一緒に暮らしてるから俺について来なくちゃいけない、なんてことはないんだぞ?」



それを聞いたレッドは俺のすぐ横に来て、尻尾でビシビシと俺の足を叩いてくる。

そして強引に俺を背中に乗せた。



「レッド…乗せてくれるのはホントに有難いけど…こんなこと別にしなくて良いんだぞ?」



俺の言葉を無視してレッドは走り出す。



俺が地図で場所を確認していると、レッドはそれをチラ見し、また走り出す。



正直、レッドの気持ちが分からない。



1人でいるのが寂しいのか?なんて考えもしたが、俺が洞窟にいる間の日中、レッドは結構居ないことが多い。

だからそれはないと思う。



助けたことへの恩を感じているにしても、それ以上に俺はレッドに助けて貰っているし、レッドのことを知った今だから言えるが、あの時、俺が助けなくてもレッドは自力で激流の川から脱出できたと思う。



俺の何かに惹かれた?

顔か?人間ならともかく狼にイケメンかどうかなんて関係ないだろうし……



朝のやり取りからレッドは機嫌が悪そうだし、マジで意味が分からん。これだから童貞は………



まぁ無難に考えて魔物フードだろうな。

魔物フードが欲しくて頑張ってくれてるのだと思っておこう。



そんなことをレッドの背中で考えていると、レッドが立ち止まる。目的の場所に着いたようだ。



そこは森と岩山が川で隔てられているような地形の場所だ。

川まではそれなりの高さがあり、岩塩と鉄が採れるのは岩山の方だ。



「ありがとう、レッド。帰ったら魔物フードいっぱい作るからな」



そう言って頭を撫でようとしたがそっぽを向かれてしまう。

相変わらず機嫌が悪い。



今はそっとしておこうと決め、レッドから降りようとしたがレッドがそれを拒むように体を揺する。



「んん?なんだ?」



レッドは岩山の一点をずっと見ている。俺もその方向を良く見てみると一体の魔物が居ることに気付いた。



「アイツのことを教えてくれてたのか。ありがとな」



レッドに礼を言い、見つけた魔物をマニュアルで調べてみる。



ラピスディロスというアルマジロみたいな魔物だ。



だが尻尾が太く、先が丸くなっており太いトゲが生えている。モーニングスターという武器を連想してしまった。



だが、肉食ではなく、草や木の実、さらには尻尾で岩を砕き石を食べるらしい。



「へぇー……やっぱり石を食ったりするヤツも魔物の中にはいるんだな…」



比較的温厚な性格らしく、余程の刺激を与えない限り襲ってくることはないそうだ。



刺激を受けてもほとんどの場合は体を丸めて身を守るらしい。



なので俺は魔物がその場を去るまで待つことにしたのだが、その魔物は俺たちに気付き、体を丸めて動かなくなってしまった。



まぁレッドにこれだけ見られてたら、そうなるよな……



「レッド、そんなに見てやるなよ…」



あ、もしかして獲物として見てるのだろうか……



そんな考えが頭を過ぎった瞬間、レッドは俺を乗せたまま川を軽々飛び越え、その魔物の近くに降り立った。

読んで頂きありがとうございます。

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