表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちら異世界派出所前。  作者: caem
season 3【秋】忌々しい。 美味しいモノが待っている。
57/63

第15話 ごめんね、ごめんね~~~。


「おいトオル、お手柄じゃんか」


「さすがトオルさまです♪」


「よくやった方だな。特進ーーとまではいかないだろうがな」


 略して"さすトオル"。

 響きがビミョーである。


 いったい何故、そんなに誉められていたのか分からない。

 ただ、二人の先輩に誉められるより、ちんまりしていた美少女の笑顔だけがすごく嬉しかった。

 見た目が獰猛な犬でしかない姿より、かつて見慣れた姿のほうが良い。


「え~っと…………ありがとうございます」


 ひとまず先輩はたてて(・・・)おくべきだと、そう思った。

 組織というのは世知辛く、恩を売っておくに限る。

 縦社会は、ここ異世界でも同じく。


「でーー、これはいったい?」


「何言ってンだよ、トオル」


「お前がたてた作戦じゃないか」


「うむ、よくやってくれた! このふたり(・・・)とは大違いだ」


「「ちょっと署長、そりゃないんじゃないの!?」」


 そんなやり取りを見ていて、トオルはかつての日常を思い出す。

 そういえば、こんな感じだったと。

 ただ正直、やり過ぎじゃあないかなぁと。


「オイッ!? 俺は被害者だろーが!?」


 むしろ協力者だったとーー、そんな気がしてならない。

 "すべて見なかったことにすれば良い"

 この異世界に於て警察というのは、えん魔様よりもひどい。

 痛がっていたら手を離すーー、それだけで無罪放免という。

 大岡裁きというのでさえ、なのだ。


「ごめんね、ごめんね~~~」


 正直。

 今はただ早く済ませたかった。

 後始末なんて考えずに。

 次の一週間は山ほど積まれた書類に、ビタミン剤の小瓶が戯れていることだろう。


 主役であるハズだが、脇役に撤していたらいったいどれだけラクだったのか。

 運が悪い 引きが悪い。

 頭が痛い、頭痛が痛い、クラクラしている。

 思い返すのも面倒だ。


「よく分かんないけど……これで一件落着なんだよね?」


 小さな肩を借りて、トオルは帰路に着こうとしていたのだった。

 明くる日、ささやかな朝食で。

 衝撃的な一言を耳にするまでは。


「…………来ないンですの」


「…………え?」


 手を出した覚えなんて、1㍉たりともなかったのに。

 これは事件でしかならない。

 いわゆる"おめでた"ってヤツが。


「…………嬉しくないんですか?」


 いったい、どう応えれば良いのか。

 ただ嫌われたくはなかった。

 朝飯を一気に頬張って逃げ出すように。


「いってきます!!」


 次の章でかた(・・)をつけなければならない。

 トオルにとって、異世界で初めての、冬が来る。

 それはとてもーー、寒い季節の到来であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ