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こちら異世界派出所前。  作者: caem
season2【夏】暑苦しい。灼熱は甘い誘惑。
29/63

第9話 そりゃあ皆さん観たがるに違いない!!

ちょい短めです。

(´。・д人)゛



 それは昔、ある日のこと。

 文字通り、看板を背負った大男が、山奥にある道場の前に立ち(そび)えていた。


 数々の有名な門を叩き、破竹の勢いで(ことごと)く潰してきた。

 いわゆる、道場破り(・・・・)である。

 その巨体は見事なまでに鍛え上げられ、最早(もはや)天下に並ぶ者無しと言うほどであった。


 だがそんな彼でさえ目の前の光景を受け入れ(がた)く、わなわなと拳を握りしめる。


 大勢の屈強なる門下生をものともせず、次々と山を築き上げてゆく。

 (まさ)しく、千切っては投げ、千切っては投げ。


 時にその身に帯びた雄大な一本角に串刺しにしながら、()も爽やかに笑い声をあげるのだ。


「 HAHAHAHAーーーHA☆」


 雪も激しく降り(しき)る真冬日。

 なのに、季節感を全く無視した見た目は()の南国を彷彿させる。


 半袖のアロハシャツを着たその男、一角(イッカク)沙夢(サム)


 寒さなど感じない体質なのだろうか。

 惚れ惚れしきその肉体美が鮮烈に眼に飛び込み、心を奪われてしまった。


 卓越された技の数々。

 そして何者をも寄せ付けない暴力(パワー)

 求め続けた究極の形がそこ(・・)にあった。


「く……っ! これ以上好きにはさせんぞ! 師範!!」


「応っ!! 我こそは」


「お仕置きデ~ス!!」


 瞬殺。

 紹介をさせる隙などは与えない。

 体躯はゆうに沙夢(サム)を凌駕していた師範とやらは瞬時にして串刺しにされたのである。


「まだ足りないデ~ス……☆」 


 返り血を浴びながら、ペロリと舌が艶かしく口許を這いずり回る。

 歓喜に酔いしれる沙夢(サム)は辺りをぐるりと見渡し、やがて一人の大男を眼にした途端、態度は一変。

 慎重な面持ちとなり、初めてそれ(・・)らしい構えで、じりじりと足を運ぶ。


「ふ……ふははははは!! ようもまあ、見事なものよ!!」


 開口一番。

 大男は一先ず背負っていた看板を放り投げる。

 そして次の瞬間には猛牛の如く怒濤の勢いで突進。

 低い姿勢で、頭部に光る、二本の鋭い輝きは確かに牛を彷彿させていた。


「……むむッ!?」


 そこらに転がる門下生を盛大に撒き散らかしつつ頑丈な柱へと到達。

 突き刺さった双角をすかさず引っこ抜き振り返り(ざま)大鬼(オーガ)は手応えが無かったことに不思議がる。


「危なかったデ~ス☆」


 僅かに切り裂かれたアロハシャツ。

 どうやら間一髪で身を翻したらしかった。

 珍しくこめかみに汗が滲む沙夢(サム)

 多分、これまで感じたことの無い恐怖心か、または歓喜か。

 沙夢(サム)は拳をバキバキと鳴らし、大鬼(オーガ)に向かい中指を立てる。


「 C'mon♪ 」


 そこからが長かった。


 よそ様の道場で、激しい戦いはまるで決着がつく様子がなく。

 原型を留めていない建物はその有り様を酷く物語っていた。


「「 はぁ……はぁ……」」


 互いに大きく息を切らす。

 自分にこうまで渡り合える者が居たのか。

 ふたりの男は今やその実力を認めざるを得なかった。

 恐らく、次の一手が最後か。

 ふたりは深く息を吐き出し、見つめ合う眼光は激しく火花を散らす。


「うおりゃあああああッ!!」


「 Finishデーーースッ!!」


 敢えて己の武器で挑まなかったのが勝因だったのか。

 二本の鋭い輝きは根元からポッキリとへし折られ、それ(・・)沙夢(サム)手の内(・・・)にあったのであった。


「ぐわあああああッ!!」


 大鬼(オーガ)は襲い掛かる激痛に堪らず頭を抱えて(うずくま)る。


 ── チャンス到来。

 最後の力を振り絞り、沙夢(サム)(とど)めを刺そうする。


 しかしそれは叶わなかった。

 しっかりと描かれた腹部の(アザ)が意識を喰らい尽くしてゆく。


 大鬼(オーガ)は骨を断ってまで、きちんとやり遂げたのである。

 やがてふたりはその場で意識を失い、大地に突っ伏してしまったのであった。






  (U ・ꎴ・)  ᕦ(ò_óˇ)ᕤ






「 ── とまぁ、ヤツとはそれっきり会うことはなかった。だがまさかこんな場所で再会しようとはな! がははは!!」


 バンバンと豪快に背中を叩かれて、それは痛いなんてモンじゃあない。


 トオルは昔話に一人勝手に花を咲かせる大鬼(オーガ)に適当に相槌ちしながら、しかめっ面を強引に笑顔へと。

 結果、変顔ではあるものの大鬼(オーガ)の機嫌を損ねるには至らず。


「いやぁ、流石は先生♪ で、ですねぇ……そのう……出来れば屋上へと奴を誘って頂けないでしょうか?」


「うん? 何故だ?」


「考えてみてくださいよ? そんな御二人(おふたり)の闘いですよ? そりゃあ皆さん観たがるに違いない!!」


「ほう。そうか……そうだのう! うわははははは!!」


 こっそりと様子を窺っていたユージは監守室の窓からもふっと親指を立て「よくやったぞ」とトオルを誉めていたようだった。


 ()くしてふたりは向かい合い、沙夢(サム)は虫の息であったタカをようやく角から引っこ抜いた。

 どうやら邪魔になると判断したらしい。


「 HAHAHAHAーーーHA☆ 今度こそ決着をつけるデーーース!!」


 ぐったりと横たわるタカを介抱するトオルは未だ分かっていなかった。

 時は経ち、既に差は大きく開かれていたということに ───




……誰も観たいと思わないかも(爆)


次回は2月18日辺りの予定です。

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