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07 姉

前回のあらすじ

幼馴染みたちと楽しく買い物しました。

                 おわり。

「王国の叡知、リアム・ファルタス・アルカナム殿下、ご機嫌麗しゅうございます。」


「そちらも息災なようだなガレオン公。」


「無論でございます。此度の生誕祭、我が()()()()()娘も非常に楽しみにしていましたから。私としても年甲斐も無くはしゃいでしまいそうでして。」


『アルカナムの輝き』たる王女の生誕祭。近々開かれるそれを前に、王女への貢ぎ物(プレゼント)と、王への挨拶をするために、王城へと来る貴族が多い。とはいえ実際に王城へと入るのは高位の貴族。伯爵階級以上か、もしくはその年に何かしらの功績を残し、爵位を上げることが検討されている者のみだ。

そして目の前に居る男はアルカナム王国の四大公爵家のひとつ、ガレオン公爵家現当主たるペテル・ヘオ・ガレオン。

アルカナムの精霊研究分野に置いてはこの家系に勝る者は無く、リアムの父である現王の全盛期より仕え、凄まじい功績の数々を残してきたこの男だが、リアムはこの男の事があまり好きでは無かった。


「そうか。是非楽しんでいくと良い。心優しい我が妹のことだ、年齢や性別、能力など関係無く、皆が楽しめる祝祭こそが素晴らしいと言うだろう。」


この言葉は本心だ。ただし、目の前の男…というよりはガレオンという血筋にとっては少々嫌味に聞こえるだろうが。


「ええ。王女殿下であればもちろんそう仰るでしょう。少し話は変わるのですが…我が公爵家の醜い方の娘は、何も迷惑を掛けてはいないでしょうか?」


「……ああ、彼女はとても良くやってくれている…と、聞いている。」


「ああ、そうですか。それは嬉しいことです。久々に会う()()()娘の姿がこの目に浮かぶようですよ。」


何を想像しているのか、リアムには分からない。しかし心底楽しそうにそう言ったその男の嗜虐的な瞳に本当に嫌気が差した。






魔法というのはなんとも感覚的なモノだ。魔法に大切なことはイメージであり、そのイメージを具体的にするために詠唱が必要らしい。


「〈満たせ(フル)〉」


身体の中にある何かを捧げるような感覚と共に、机上のコップに水が満たされる。

文字通り、容器を水で満たす魔法。だからこそイメージはつきやすい。容器の形や大きささえ分かれば、目視せずとも発動できる魔法である。


「冷えてればもっと良いんだけどな…」


コップの水を飲みながらそんな事をふと溢す。

この〈満たせ(この魔法)〉で出すことが出来る水は、生ぬるくは無いものの、冷蔵庫で冷やした物ほどの冷たさは無い。

冷たくないってことはぬるいってこと。


「暑い……。」


なんでこんな事考えてるかって言うと、暑いから。時期的にね。チラッと聞いたくらいなんだけど、そろそろ暑い季節になるらしい。

詳しいことは分からんが、まぁ四季みたいなモンだろう。


んな中で訓練なんかしたくは無いが、第1騎士団もモンスター討伐の仕事が無い時はわざわざ時間を使って訓練(しごいて)してくれる。

そんな熱心な彼彼女らには申し訳無いが、これに参加する人がずいぶん減った。とはいえこれは仕方ない。若者というのは総じて珍しいモノに飛びつき、そしてすぐに飽きるモノだ。もう来てるやつ半分も居ないんじゃ無いかな?


「なかなか動けるようにはなってきましたね。」


「まぁ、ある程度は筋肉も付いたんで。」


とはいえ、それは俺の知る常識の域を出ない。

つまるところ、一足飛びで空を飛んだり、拳を振るうだけで風圧による的当てをしたり、剣で岩を両断したりは出来ないのである。


「彼らと比べるのは良く無いですよ。」


心底を見透かされたように、ジャックさんがそう言う。


「人は誰しも限界があります。…越えられない壁は多い。だからこそ、身分相応に出来ることをやるんですよ。」


んー、なんというか深いような深くないような…?ようするに全部諦めろってことかな?もしかしたらこの人の実体験なのかもな。実力主義の騎士団ならあり得るか……。


「ジャックさん、少しよろしいですか。」


「!はい、もちろんです。」


いつの間にか、そこに騎士が居た。ずいぶんと背が高い…多分2m近いかな?背が高い分、その場に居るだけで威圧感がある。何やら話しているが…多分警備関係の話だろう。それより気になるのはジャックさんがやけに襟を正して話していること。

この人の直属の上司はセシル団長だけのハズだけど…お世話になった先輩とかかな?


ふと、その頭まですっぽり覆った覆面鎧兜(フルフェイスヘルム)から覗く瞳と眼が合った気がした。

そう言えば王城でもここまで顔を隠してるやつ見たこと無いな…もはや不審者じゃね?



「分かりました。我が隊からもしばらくは王城警備に人員を割くよう、セシルにも言っておきます。」


「ええ、頼みました。」


話は終わったようだが、何故かまだ視線が俺に向いてる気がする。勇者(笑)()は見世物じゃ無いぞ!帰れ帰れ!!


「ご存じかとは思いますが、彼は勇者の一人で、名を小鳥遊南と言います。」


「どーも。」


「なるほど、君が……失礼、僕は騎士総長、【竜騎士(りゅうきし)】のリウ。簡単に言えば全部の騎士を纏めるトップって感じですかね。」


おっと…思った以上の大物だった。つまりセシル団長よりも強いってこと!?それとも事務的な役割が強いのかな?……あ、そう言えばこの人あれだ。召喚された時に広場でめちゃ威圧感出してた人だわ。…多分。


「俺たちが召喚されてこっちに来たときも居ましたよね確か。」


「ああ、あの時ですか。確かにそうです。一応僕の仕事は王族の警護ですので、召喚されたばかりの勇者さんたちが何をしても良いように配置されてたんですよ。まぁ、杞憂だったようですけどね。」


あっけらかんとした様子で語るリウの姿は威圧感を放つ全身鎧と相まってやや滑稽に見える。とはいえ言ってることはなかなかだ。この異世界でも強者であるはずのセシル団長を制するほどの力を持つ勇者を制圧することが出来ると、軽く言っているのだから。


「まぁ、今日は全く別件ですけどね。近々開かれるのはなんたって王女様の生誕祭ですから。豪華にやらないとダメでしょう?そのための警備がなかなかに大変なんですよ。」


まぁ、招待状には書いてあったけど、王女様の生誕祭か…そこで俺たち勇者のお披露目……むむむ…何かしらの意図を感じてならないな……。単純にすぐある祝祭がそれだって理由なら良いけど。


「まぁ、頑張ってください。」


戦力にならない俺にはこれくらいしか言えないが、頑張って欲しいのは本心だ。警備は重要、何よりも優先されるべきことだろう。


「ええ、ありがとうございます。僕はこれで。」


そんな感じでリウさんの背を見送り、俺は再びしごかれに行く。『騎士総長』なんていう華々しい地位を持つ存在と、力無き勇者では見ている方向も違うだろう。

俺は俺一人、自分だけの安全を守るだけだ。あっちは違う。国民を守るという義務を果たすために騎士となった。


「端から次元が違う。」


そんな卑屈な言葉と共に、俺は訓練に精を出した。






「はぁ…疲れた。」


毎度の事だが、これだけ訓練を続けて身体を鍛えても尚、訓練終わりには疲れ果ててしまう。やはり基礎体力の問題だろうな。戦闘面では期待出来そうに無い。


ー!!


「ん?」


ヒステリックな声と共に、何かが割れるような音がした。さすがに自室の周りで騒ぐのはやめて欲しい…。無視でも良いかとも思ったが、よく見るとそれは俺の半専属メイドであるウルナさん…と誰だあれ?


「あーあ、私の服が汚れちゃったわ。ねぇ、どうしてくれるの?」


「申し訳ありません。」


俺が思っていた数倍のなかなかの惨状。割れた紅茶用のカップが散乱し、額を切ったのか頭から血を流すウルナさんが頭を下げて必死に謝る。

一方ドレスの袖が濡れていることを怒ってるらしい少女…ふむ、どうやったらウルナさんの頭が切れてこの子の袖が濡れるのか?


「で、何があったの?」


「は?あんた誰。」


oh……まずは状況を聞くという大切な事をしたかったのだが、残念なことに受け入れられなかった。悲しいね。


「あんたも使用人かしら?ずいぶんと品が無い…。王城とは言っても、平民を雇いだしたらもう終わりね。クビになりたくなかったらさっさと消えなさい。これは私達の問題だから。そうよね?」



「ー出来損ない。」



なかなかハードな言葉の刃がウルナさんを襲う。ウルナさんは小さな声で「はい…」としか答えることが出来なかった。というかあの……俺にも突き刺さってるんだよ。言葉のナイフが。


「どーでもいいか。ウルナさん、ちょっと失礼。」


「え?」


俺はウルナさんを持ち上げ、抱きかかえる。というか軽っ!?何食ったらこうなるの??おかしいだろ。


「ウルナさんの手当てをしますんで、俺はこれで。」


「ちょっ!待ちなさいよ平民風情ー」


「〈遮視(ブラインドネス)〉」


「きゃぁ!!」


何気に人に魔法使うの初めてだな。取り敢えず効いてくれたようで安心安心。つーか華やかな社交界想像してた俺が馬鹿らしくなってくるなぁ…あれが貴族かぁ…。


「やばいです………」


俺の腕の中でお姫様抱っこ状態のウルナさんが何かを呟く……


「やばいです、本当にやばいです!お姉様絶対怒ってますよあれ!!南様どうしましょう!?次会ったとき何言われるか分かんないですよ!!!!」


おっと、キャラ崩壊するくらいヤバいらしい。とはいえんなことは後の祭りだ。それ以上に気になることはひとつだけ。


「お姉様って?」


俺が魔法ぶつけてしまった少女が、実はウルナさんの実の姉であり、ガレオン公爵家の長女、ヘレナ・ヘオ・ガレオンだったというのは後から聞いた。

番外編として観光後の望月野乃葉の小話を投稿しました。600字くらいなので少ないです。


ちなみにウルナさんの身長は150無いです。

ウルナさんのお姉様は160はあるので普通の身長。

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