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51 魔剣イワバシラ

遅筆。

死ぬ間際というのは何やら時間が遅く感じたりするもの…っていうのが定番だ。恐らくこの時間で走馬灯のように過去を振り返り、後悔や幸福を思い出すのだろう。

……んー、後悔…後悔………無いわけじゃ無いんだけど……んー、死ぬ間際になんかあるか?


やはり思い出すのは家族の顔だ。優しい母さんと父さん…まだまだ目が離せない妹の日向…芸能の道に進むって言ってるけど…いやぁ…華やかなイメージはあるけど裏がドス黒いみたいな感じするし、俺的には強く反対したい。お兄ちゃんは心配だよ………いや、まぁ日向の将来はあくまで日向に任せたい。口を出し過ぎると嫌われると思うし、そもそも日向は俺より人間が完成してる。ゲームもスマホもほとんどいじらず、勉強しまくって常に成績上位だし、かといってガリ勉でも無く友達も多い…中学の時にはバスケ部でスポーツ推薦受けれるレベルで打ち込みながら成績トップだったし……

あれ?もしかして俺の方が出涸らしか?

コレで許してくれる両親優しすぎてヤバいな。

中学の時は帰宅部で、成績は中の上くらい、高校からはちょっと成績落ちて中の中〜上くらい。変わらず帰宅部。趣味はゲームで、かといってプロゲーマーになれるほどの実力は無い。割と深夜帯までやってたりするせいで授業中眠い故に教師からの評判が悪い。

だいぶ好き勝手してるのは自覚してたけどこうして思い出してみると俺完全にヤバイ奴だな。


でもまぁ……そんなに後悔は………


ふと浮かんだのは1人の少女の顔だ。

ミニスカだったり胸元が開いてたりするわけでも無いガチメイド服に身を包んだ灰色の髪の少女。最初の頃はそうでもなかったけど…最近めちゃめちゃガツガツ言ってくるようになったしなんなら確実に俺より強い事が発覚したからこっちもあんまり強く言えないという少女。

いやー、最初のインパクトは凄かった。部屋に戻ったら突然女の子待機してるんだもん。マジでハニトラかと思った。なんて憧れるシチュエーションだよ!家帰ったらメイドさんが居るとか!もう最高だろ!という非現実っぽいリアルを体感してたけど…いつの間にやらかなりの付き合いになってきたな。


……俺が巻き込んだのか?


ここまで連れてきたのは間違いなく俺だ。

俺がふざけて死ぬのは俺の自由だが…ウルナを巻き込んで共倒れなんて許されるのか?


「許されるわけねぇだろ。」


そう、許されるわけが無い。

幸い、ウルナまでの距離は近い。ウルナの盾となるように腕を広げ、前に出る。

さあ覚悟を決めろ痛い覚悟を。



「ぬぅん!!!」



剛腕一閃の一振りが、向かってきた矢を払い飛ばす。鏃が当たる事で硬質そうな甲高い音が響いたが、重厚そうなその鎧は凹みどころか傷ひとつ出来てはいない。

顔まで覆った全身鎧の巨人にとって、たかが矢では意味など無い。


「やはり言葉では分かり合えぬ事もあるか…悩ましいものであるな。」


兜の隙間に突き刺さった矢をズルリと引き抜き、血のひとつも着いていないソレを投げ捨てる。さて、その間俺は腕を広げたTポーズで唖然としているワケだが……まぁいいか。


「刺さってないのか?ソレ。」


「無論であろう。この程度では我が皮膚は貫けぬ。とはいえ…」


ヨモロは自身の兜の隙間を指差してから続ける…


「眼を狙うとはなかなかの物だ。生憎と()()()()()()()()を狙われた故に痛痒には感じぬが、な。」


「なるほど、では狙いを変えましょうか。」


と、ヨモロから視線を逸らし、何故か俺の方を見るメガネの男がどこからか長剣を取り出す─


「ンな隙があるかよクソボケがァッッッ!!」


止める声を出す間も無く、地面を割るほどの凄まじい踏み込みによって彼我の距離を詰めようとするグラッゼアが寸前の所で()()()()()大きく飛び退る。


「おや、バレましたか。」


いつの間にやら眼鏡さんの手に握られていたのは朱色の幅広の短剣…とはいえ攻撃のための握り方では無く、逆手に持って剣の腹を外に向けている…。防御的な感じ?


「『ノグ・チェビエル反奪の魔剣』ッオレサマのモンをテメェのモンみてぇに使いやがってよぉ!!」


クソが!と吐き捨てながらも、手を地面に着け陸上のクラウチングスタートのような─いや、四足獣が狙いを定めて今にも襲いかかろうとしているようにも見える。というよりそっちにしか見えない─姿勢で構えるが、グラッゼアは当然の如く丸腰どころか半裸の変態モードである。その状態でどう戦うつもり………いや、もうすでにサ◯ヤ人ばりのとんでもアクロバット目の前で見せられたばっかだった……。


「すでにこれは私の物ですよ。ご安心を、あなたよりも上手く使ってさしあげます。」


「うっせーハゲ!ばーかばーか!オレサマのが上手く使えるに決まってンだろーが!!」


その小学生のような煽り文句が効いたのかは知らないが、錆びたようなボロボロの刀の切っ先をグラッゼアへと向け、それとほぼ同時に弓部隊が矢を放つ。


「ん?」


普通であれば「ひー」とか言いなから頭を抑えて蹲るところだけど、ヨモロの後ろに隠れている俺はちょっとだけ気が強くなってるので、片目だけ開けて見ていたワケなんだけど、なーんか矢の軌道に違和感が……ホーミングしてる?んな誘導ミサイルみたいな軌道あり得る?

ってかソレ全部避けてへし折ってとんでもアクロバットしてるあいつ(グラッゼア)はなんなんだよ!!!化け物過ぎるだろオイ!!


「オイオイオイ!『嘯き(うそぶき)スズリの魔刀』使ってその程度かぁ!?当ててみろやクソが!ッはは!!」


むしろ楽しげなコイツ見てるとやっぱ人外だなー。なんだコイツおもしろすぎるだろ。


「ふむ…圧巻の戦いと言えるな。古き時代にもあれほどの猛者は数える程しか無かったであろうな。」


「古き時代ってーとどんぐらい前?」


ふむ、とか言いながらヨモロが太い指を顎に当て、考える素振りを見せる。


「1000年…以上は古であると思うが…正確なソレは判らぬな。」


ここにも化け物居たわ。

巨人って長生きなんだなー、まぁ神話とかに出てくる存在だしそんなもんだよな。


「面倒ですね…」


両手に剣を握りながらも器用に眼鏡をクイッと上げ、どこからか3本目の剣を取り出す。三刀流?マジで器用じゃん。というより見た目がヤバいな。何アレ…青白いホログラムみたいな剣身と輝く文字列みたいな物……ファンタジーから突然SFになったんだけど!?


「ッだる!!」


振るわれたSFソードは、グラッゼアの言葉通りの効果を発揮する─

いつか何処かで見た真空の刃、見えない刃…俺の身体を切り裂き、いつか左腕を切断した例の刃…。


「だるっ!!」


なんでこんな時にアレ思い出させるんだよ!!楽々傍観者で居させてくれよ!!

グラッゼアは飛んで跳ねてと避けているが、なんで避けれるんだよ!!剣の軌道とか読んでるのか!?俺もあの時避けたかった!!

つーかアレはゲームだから許されるんだろ!ダメだろ現実で斬撃飛ばしブンブンはアウトだろ!!許されないだろ!!


─ガン


重い音と共にヨモロの腕甲の表面が弾ける、それは真空の刃の流れ弾が命中した結果であり、重い音はそれがどれほどの威力を持つかを示している。


「貴公ら…前に出るでないぞ…、紛い物の劣る力とはいえ触れれば斬れる。あれ(グラッゼア)と同等の動きが出来れば別ではあるが、な。」


と視線をグラッゼアに向けると、丁度口角を上げて煽るような言葉を吐くところだった。


「『ユラネレの空断刃』…、そりゃそれ持ちゃ誰だろォが強えだろぉよ!!」


嘯き(うそぶき)のスズリの魔刀』『ノグ・チェビエル反奪の魔剣』『ユラネレの空断刃』とりあえずあの3つの魔剣の名前はコレなんだろう。

弓矢ホーミング魔剣が……スズリの魔刀で、近接牽制魔剣が……ノグチの魔剣、真空ブンブンが…ユラネレの魔剣ってことか?結構バランス良いというかガチで選んだ感があるな。でも…グラッゼアが魔剣盗まれたのって昨日今日の話だろ?それだけの時間しか無くてそんな魔剣選んだり出来るか?


「いつまでその威勢が持ちますかね。」


眼鏡さんの言葉通りだな。だっていずれ体力は尽きるし避けてるだけじゃ勝てない。こっちは火力担当居ないし……んー、グラッゼアにまた剣持たせるか?

ヨモロはなんか……火のスキルとかなんかあったりする?んー、んー?なんか…なんか閃きそうな気が…気が……


「あ、そういえばお前らのこと忘れてたわ。」


「今っ!?いや、まぁありがたいけど!」


何を隠そう『四番目の剣』のアーディのことである。

牢獄に捕まってるこの馬鹿ども…いや、閃きはこれじゃ無い気が……


「いや、あのそこで考え込むとさすがに可哀想なのでは…?」


「………あれ?ウルナちゃん???んー?南のメイドだったハズ……クビになった?」


「んな鬼畜じゃねえわ!!」


ヨモロの影からひょこっとウルナが顔を出した途端にコレである。この一瞬で俺の株を下げるんじゃねぇ!!そんなことしないわ!いや…そもそも給料ちゃんと払って無いぞ?あれ?俺ってもしかしてクズ雇い主だったのか?


…まぁ……まぁいいか


「ってわけで《錬成(アルケミー)》!出てこい道化共〜」


「誰が道化だわ!」


檻を無理矢理溶かし壊し、捕まった馬鹿どもを出してやる。さてさてこいつらはあんま居る意味無いけども……肉壁にでもなってくれ。まぁこの中だと一番最初の肉壁は俺だと思うけど。

……棒きれも石ころも使い方次第ってやつだよな……。

というわけでとんでも対決をまた眺めて……いや、よくよく見るとグラッゼアもちょっと疲れてるか?さっきより動きが鈍いっていうか?


「チッ!」


これまで避け続けてきた真空の斬撃が、ついにグラッゼアの肌を切り裂く。とはいえ薄皮一枚だ、まだ戦闘の決定的な決め手にはならない…、まだ…そう。まだ大丈夫だ……大丈夫だよな?


「…マズイな。」「そうだな…あのままだと…」「いやー、これは……」「むぅ…」


どうやらある程度戦闘慣れしてる奴らには俺とは違う景色が見えているらしい。そうか…このままじゃマズイのか…どうしようかな…。


「アーディ、一応聞くけど……アレ勝てる?」


「いや無理だろ…。数でも負けてるし。」


だよな……じゃあやっぱグラッゼアに頑張って貰うしか無いよな。もちろん俺も無理だし。ってな訳で…











さすがにちょっとキチィな…

使い方が一辺倒なヤツばっか使われてるから避けられてっが…結局のトコ隙が無ぇ。効果が判る分突っ込むワケにもいかねぇし、他に何本効果知られてるかも判らねえからな…

魔剣効果が判んのがオレサマしか居ねぇ以上…他の奴らを前には出せねえ…ヨモロのヤツにぁ他の奴らの盾になって貰うのぁそうだが…ミナミとあのちっこいのは前に出た瞬間アウトだ。


あん?あぁ…あの馬鹿どもも外に出たのか…たぁいえ戦力は期待出来ねえのは判るな。パッと見チームワークで乗り切ってきたようなタイプだ。個々の強さってなぁ期待出来ねえな。

期待出来ンのは神官の治癒魔法くらいか?いや…弓も牽制なら使えンのか?


「ッ!」


思考に深く沈み過ぎた故か、『ユラネレの空断刃』の回避方向をミスる。

仕方なく空を蹴り、ダメージを最小限に抑え─


─!!!


地面から飛び出すように生え揃った無数の岩柱の内のいくつかが、『ユラネレの空断刃』による真空の斬撃とぶち当たり、凄まじい砂煙と共に砕け散り相殺する。


「こいつぁ…」


岩の剣を作った時と同じ能力…つまりミナミのアシストってぇワケか?あぁ…なるほど?理解したぜ?








「ッ何が…」


─!


砂煙を切り払い、()()を手にした男が現れる。それはあまりにも巨大で、分厚い武器。


「ハッハァ!!こォーいうこッだろ!ミナミ!!!」


岩の柱を無理矢理引っこ抜き、指を食い込ませて片手で振るう…。剣でも武器でもない単なる岩の柱。しかしながら100kgでは足りないほどの重量を誇るソレを、化け物の如き怪力が振るえばレベルが違う。だからこそ俺は言うのだ…


「─いや、全然違うからな!!?」

魔剣の名前は最初の持ち主とか、最初に見つけた人の名前が付く感じ。

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