48 大弓の巨人とヤクザ
次の話もほとんど完成しててあとちょっと直すだけなのですぐ出せると思います。
「ふむ、美味い水であった。生き返る、とはまさにこのことである。感謝するぞ貴公。」
「いい飲みっぷりだな。全く、」
俺の魔力をかなり削って出した水の塊を飲み干して満足げな声を出した存在に対して、俺はまだ結構興奮している。巨人って良いよね。デカイ!ゴツい!カッコいい!の三拍子揃ってる巨人。確かにロリがクソデカ武器をぶんぶんするのも良いんだけど、男子ってこういうのが好きなんでしょ?を地で行く、重鎧を纏った巨人が巨大武器扱うのはカッコいいだろ!!ロボット物に近いアレがある。
ちなみにウルナはずっと俺の服の端をぎゅっとしながら後ろに隠れてる。お前は幼女か!!………いや、背丈と容姿と行動全部幼女だな。
「ふむ、名乗りがまだであったな。我は巨人の戦士、ヨモロと云う。とある使命があり旅をしていたが…どうやら眠りこけてしまっていたらしいな!」
がははと笑う巨人の戦士は、少なくとも話は通じるし、某漫画の巨人みたいに誰彼構わず人を喰ったりはしないっぽい。
「俺は南だ。まぁワケあってある場所を目指して旅をしてる。こっちはあー、旅の相棒のウルナだ。」「誰が相棒なんですか!マスコットじゃ無いですからね!!」
「がはは、仲の良いことだ。ふむ、しかし奇しくも我らは同じく旅人のようであるな。なんとも数奇な縁に恵まれたものだ。」
まぁそりゃ巨人と縁があるってだけで結構凄いんだけどな?にしてもどっから巨人なんてものが湧いて出たんだ?確かにファンタジーの鉄板?いやどっちかというと神話方面か?結構こっちの世界の文献漁ったけど、全く聞いたこと無いぞ?
「そういや、俺は大陸の東を目指してるんだが、ヨモロの目的地はどこなんだ?」
「…うむ、我が使命の地は大陸の北部、終わらぬ冬の地だ。」
終わらぬ冬の地……そういや北方の大国フランメ帝国は積雪に閉ざされた冬の国ってのは聞いたな。異世界ファンタジーの定番たる帝国ったらなんか軍事国家でやべーみたいなイメージあるけど、フランメ帝国も実際軍事国家だったらしくて、周りの国を併呑してデカくなっていったらしい。
しかし突然降り止まない雪が降り積もって国力は低下、軍事国家から転落し、誰も欲しがらない土地になってしまったらしいけど。
「さすがに行き先まで一緒ってわけじゃ無かったな。」
「ふむ、残念ながらそうらしい。とはいえせっかくの縁……喉の渇きを救ってもらったことだ、このまま送るのは忍びない……何かしら礼を……」
「いや、別にいいぞ?そんな大したことは─」
「─無い?」
「ん?」
ヨモロは自らの腰にあるベルトのような物に触れ、驚いたように声を上げる。「無い」とはつまり?俺にあげる物が無い?じゃ無いよな…多分。
「我が矢筒が無い……か、これでは我は単なる木偶となってしまう。」
「使い切ったとか?」
「いや、我が矢筒の中には他にも雑物を容れていたのだ。それがゴッソリと全て失われている。」
いや、矢筒ってそういうモンじゃねえだろ!とツッコミを入れたくなる状況だが、巨人が使う矢筒ともなるとかなり大きいから、確かに色んな物が入りそうだ。
「これは困った……、旅先で拾った様々な物を容れていたのだがな。」
「なんか有用なモン容れてたのか?」
「無論、他者より見れば単なるガラクタと呼ばれるようなモノであろうが…」「じゃあそっちはいいな、矢は問題だけど。」
「いや…あれらは我にとっては……」
さてさて、今知り合ったばかりの巨人さんが困ってる。少なくとも俺は見たことないな…困ってる巨人は。なんか面白い状況だなぁ─
その時、ぐいっと袖を引っ張られる、それが誰かなんて判ってるから睨まないでね。
「み・な・み・さ・ま?先を急ぎましょうか。」
ゴリゴリのファンタジーの代名詞たる巨人の動向が気になる俺と、日々の生活すら不安定すぎる状況で寄り道とかマジふざけてんのか!?というヤクザ視線を向けてくるウルナちゃんの攻防である。
いや…俺は負けないぞ!良く考えてみてくれ!………こんな機会もう無い…ってくらいしかメリットが無いな…。
「……新たに造ろうにも、我が鍛冶槌すらも失った故…、どうすべきか……」
「それなら俺が…」「南様!!」
人助け?巨人助けを(おもしろいから)したい俺と、絶対に寄り道を阻止してやるという、ウルナとの攻防の中で、揉み合いに…はさすがにならない。
この世界に於いてウルナは貧弱、俺はもっと貧弱なのだ。そんな2人が暴力的な手段を取るハズも無い。故にやるのは睨み合い。からのじゃーんけん!
「ん?」
ウルナとのじゃれ合いも中断し、目を閉じて耳を澄ませる。ヨモロも何かを感じ取ったようであり、地面に置いてある弓に手を掛けている…、まぁ矢が無いしそんな至近距離じゃどうしようもないだろ…って感じだけど。
「オラァッ!!!オレサマの剣はどこだァーー!!!??」
「は?」
完全に姿を現す前からとんでもなくデカい大声を出しながら突如として現れた乱暴な闖入者は、なんとも凄い格好だった。何せ上半身裸で、その鍛え抜かれた肉体を魅せつけて、その丸太のような腕の先で握り拳を作り、何度も何度も「俺の剣ー!!!!」と叫んでいる。いや、なんだコイツやべーやつ過ぎるだろと巨人と俺とかわいいメイド…いやいや混沌とし過ぎだろこれ。
「ふむ、では貴公も気付けば身ぐるみを剥がされていたわけか…。」
「そぉいうこった!!!オマエもか!!クソめんどくせぇことになりやがったな!!」
変人と巨人が合わさったが、思ったよりも話は出来るようで、もっとカオスな展開になることは避けられた。いや、充分カオスな展開ではあるんだけど!
「とはいえ貴公は身ぐるみ全て…対する我は矢筒のみ。この差は如何に思うか南よ。」
「なんでそこで俺に振るんだよ。パッと思い付くのは鎧が重すぎるって事じゃ無いか?普通の人間だと余裕で重量オーバーだろ。」
ヨモロは全身鎧を纏っているが、兜だけでも10人以上は持ち運びに必要だろう。もちろん弓も同じであり、こんなもん持てるか!状態。少なくとも俺は持てない。
「ふむ確かに…我の鎧は貴公ら人間種や他の種族には重いであろうな。竜などであれば無論違うであろうが…」
「人型ですら無くなってるじゃねえかよ」
「はン!!意地ってェモンがねえな!!雑魚どもが!!んな覚悟で俺のモノ全部持ってきやがってクソが!!!」
とりあえず勢いが凄いし暑苦しい。
暑苦しい脳筋といえば楝が思い浮かぶけど、この人程じゃ無い。この人はなんというか多分話はほとんど聞いてなくって、脳死で会話してるんだと思う。
楝は違うんだよ…あいつはさぁ…一応全部聞いた上で、理解してないんだよ。…どっちもヤバいな。
「にしてもデカイな!オマエやべえな!なんかすげえな!!」
「うむ、我が巨体は巨人という種族故だ。何も凄くなど無いだろう。生まれとは選べぬ物…、それが善き物でも、悪しき物でも、な。無論…我は我の産まれを恥じたことなど無いが…。」
「身体がデケェ、指が太い…ってなると繊細な操作が必要になる弓っつーのは使いづらいモンだ…そォいう種族だから…って理由で諦めて腐るでも無く、努力してオマエは弓を選んだンだろ。間違いねえそれは凄いことなんだ…それはオマエ自身が認めてやれ。」
おぉ…なんだコイツ突然めちゃくちゃまともな事言い出したぞ。
「ふむ……そういうモノか。確かにそれは刻んでおくとしよう。……そう言えば貴公の名すら未だ聞いてはいなかったな…我は巨人族の戦士たるヨモロだ。」
「オレサマは冒険者グラッゼア・ルドーってェモンだ。よろしく頼むゼ兄弟!」
「─すまぬが我らは兄弟では無い。我が兄弟は…我より強く、我より勇ましく、我より聡き兄たちのみ…、そこだけは曲げること叶わぬ…許せよ貴公。」
ちょっと冗談っぽく言っただけなのに予想以上の地雷を踏んでしまったグラッゼアは、キャラも忘れて「あぁ…おう…」みたいな感じになってしまう。そりゃそうだまさかの角度でぶん殴られた上で謝罪までされては黙るしか無い。
「で、どうする?」「ふむ…」「どーすっかな」「もうこれアレですよね南様…確定ですよね?」
というわけで、ヨモロとグラッゼアの身ぐるみ剥がした犯人を探すべく…俺たちはジャングルの奥地へと足を踏み入れた………
「あぁ、俺はちと眠くなったからよ…森ン中で寝てたんだが…気づいたら陽が昇ってて、いや…沈みかけててよ、全裸だったワケだ!」
「無論我は人の街でなど寝れぬ故な…野宿しかせぬが…我の最期の記憶はいつであったか…気付けば数十年寝ていることも多くある故な……。」
「……俺はこの前ぶっ倒れて……あれ?丸1日くらい寝てたっけ?」「私は丸3日寝てましたけど、南様の方が最終的には起きるの?というか治るのが遅かったですね。というかこの話関係無いですよね?」
というわけで最近の睡眠に関する会話は以上だ。みんな最低8時間睡眠以上を取れてるようで何より。平均値にしたら数百日になりそう。こっち来る前の俺は毎晩のように日付けが変わるまでゲームしてたから睡眠時間めちゃくちゃ短かったけど、こっち来てからはわりと寝れてる。だって娯楽が無いんだもん、寝る以外何しろと?
というわけでみんな寝てる間になにかがあったらしい。グラッゼアは身包み剥がされて、ヨモロは矢筒を盗まれ、ウルナは半身ファイアー無くなったし、俺は……昨日の俺より新しい俺になったということで。
「んー、なんというか不用心すぎやしないか?」
異世界来てそんなに経ってない俺でも、そこそこ治安が悪いってのは理解出来るぞ?比較的治安が良い日本でも、酔っぱらいのおっさんか、酒覚えたての大学生くらいしか外で寝たりしないだろ。しかも森の中では誰も寝ないぞ、野生動物とか虫とか怖いし。こっちには更にモンスターとかいうガチモンの化け物まで居るんだぞ!
なんだコイツらは…ある一定水準の強さを超えてくると馬鹿になるのか?
「旅してンなら野宿くらい普通だろ。」「うむ。」
「いや、見張り付けるなり、魔法道具で対策するなりは?」
「オレサマに付いてこれるヤツがいねぇンだよ。」「我に扱える魔法道具というものはなかなかに無いであろうしな、もし手にしたとしても、すぐに壊してしまうであろう。」
まぁ、仕方ない事情がそれぞれあるってことだな。
いや、さすがにもうちょい対策しろよ。俺ですら防空壕的なの作るか土壁作って野宿しようとしてるんだから。
「っつーかマジでほぼ何もなく森の中歩き続けてるケド…、迷ったらヤバいだろこれ。」
「ふむ、安心せよ貴公…、我がスキルたる《導きの火》を用いれば、少なくとも街道に出ることは叶う。何も無い暗き闇である程に、小さい灯火は輝き、そして導きとなるものだ。」
若干ポエム感が否めないけど、それは俺がまだ異世界に馴染めて無いからだと思う。もっとファンタジー脳になれば、俺も立派なポエマーになって、詩集で稼げるかも知れない!
しかし、火のスキルか…属性持ちなのに魔法じゃ無いんだな?
「便利なスキルもあるもんだな。」
「うむ、確かに我もこの力には助けられて来たが…どれだけ道を標されようと、歩くのはこの足であり、動くかどうかは我次第だ。そも、向かう理由が無ければ誰も足を動かそうとすら思わぬだろう。」
まぁそういうモンだろうな…とは思うけども…またポエムって………ん?
「なぁ、そのスキルで自分の持ち物の場所って判らないのか?」
道標のスキルなら、カーナビみたいに目的地設定出来たりとかしないのかな?いやいや、でもスキル持ってる本人がすぐにそれをやってみないワケ……
「…………あ。」
作者は朝が強すぎて起きたい時間の数時間前には目が覚めてそこから寝付けなくなるので、ヨモロくらい寝たいです。




