表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/69

37 国際問題未遂

2話分になっちゃた 

「さて、次だ。クラス1冒険者ミナミ…いや、アルカナムの勇者ミナミよ、何故貴殿が我が国に居る?」


………………あ


レオン王子……王族だ。

ベスティアの魔導水路は、アルカナムの宮廷魔法使いが協力したって聞いてたし…、友好国の可能性がかなり高い。なら、あの王女様生誕祭もとい、勇者お披露目パーティの場にも居たんじゃ無いか?


もう一度、眼の前の王子様をまじまじと見てみよう…。

健康的な褐色肌、何等身だよ!ってくらいの高身長。あと…長い金髪を後ろに纏めている……。見た覚えは無い、無いけど…なんか引っ掛かるんだよな……。



『相手は男性だったけど、肌の色とか髪の色からしてウルナさんとは似ても似つかなかったわ。長身で褐色肌、そして長い金髪を後ろで纏めてた、こんな感じで。』



「あ、あれか!麗たちに俺の居場所聞いてた不審者!」


「不審者…?」


見覚えは無いのに、謎に覚えがあったんだよなー。よかったー、乙女ゲーの時の知識じゃ無くて。クラス転移した先が実は乙女ゲー世界だったらさすがに笑えない。


「はぁ…、それで、本格的に何故貴殿がここに?アルカナムの勇者である貴殿がここに居るというだけでも国際問題になりかねん故にこうして内々の場を設けたのだが…?」


疲れたように言ったレオン王子だが、確かによくよく考えたらヤバイよな?他国の貴重戦力かつ重要人物が、何故かベスティアに居るんだし。誘拐したみたいになるよな?

まぁ、俺もなんでここに居るのか理解に苦しむんだけどな。俺の意志じゃ無いし、誰がここまで連れてきたんだよって話だ。


「んー、俺的にもあんま判ってないんだけど、たぶん【罪の魔王】が原因…かな?」


あの時、最期に俺の胸を貫いて殺したのは【罪の魔王】であり、次に目覚めた時にはアルカナムの王城から何故かベスティア王国に来ていたわけだ。

わざわざ死体をウルナと一緒に移動させるとか不自然極まりないとはいえ、コレ以外に理由とかが思いつかない。ま、刺された以降の記憶は無いから完全に憶測にはなっちゃうけど。


「なるほど…、先に話した件から考えていたことだが…、やはりアルカナム王城襲撃の犯人も【罪の魔王】…というわけか?」


「やはりって言うと?」


「……アルカナム王国の公式発表では、"調査中"という形を取っている。いづれは明かされるであろうが…、文字通り今は調査段階なのだろう。発表によっては敵がよだれを垂らす餌になりかねん故に、慎重になっているとも取れるが…。」


なるほど。王城襲撃自体はあったけど、何者かによる物はまだハッキリしてないから公式的にはちゃんとした発表ができてないのか…。または何か隠したい事情があるか……、いや、そもそも"勇者"が居る国なのに魔王に対して良いようにやられたってのは結構マズい情報か?


「ん?もしかして…俺、敵情視察の情報源にされかけてる?」


ペラペラ喋ってたけど、このままだと国の結構重要情報まで言っちまいそうだわ。やめてくれよ?俺の一言で戦端開かれるとか、無限に怨まれるのはヤダぞ?


「……、アルカナムとベスティアは友好関係が築かれていたハズですが……、次代では違うということでしょうか?」


俺の椅子の斜め後ろに居たウルナでさえ、眼の前のレオン王子を警戒し始めた…まぁ、ウルナは実際公爵家の出身だし…こういう国同士のごちゃごちゃした事情は詳しいだろう。これってどうなん?


「いや、我1人の独断でベスティア王家が築いてきた信頼に泥を塗るような真似はしないとも。私が今求めているのは【罪の魔王】の情報だ。」


「封印されていない新たな魔王の存在…その上強さは天使ですら容易には相手出来ないほどだ。今後のアレの動きにもよるが…、今後は国家間の協力を更に密にしなければならないだろう。特に、正確な居場所などの情報は。」


「おぉ…まともな理由だ。」


余裕で王城襲撃出来る存在な上、ベスティアに現れてる以上、アルカナムでは逃がしてる…。ベスティアも王家直属の精鋭騎士たちがバッタバッタと倒されて、王子さえ命を取られかけた……。あれ?そういえば……


「天使と【罪の魔王】の戦いってどうなったんだ?」


逃げてきたってのは聞いたが、それは魔王が倒されたから逃げれたのか……まぁ、今の話の流れ的に倒されてるとは思えないけど、少しでも手傷を負ったのか……

その質問に対して、レオン王子はこめかみの辺りに右手を当て、やや苦い顔をして答えた…。


「いいや…逃げられた。」









「ガチじゃねェか………ま、逃げるけどなァ?」


いつもは青く透き通る空が、今は半透明の奇妙な膜が張り巡らされ、一羽の渡り鳥がバサリと落ちる…。浮遊の魔法も、スキルによる飛行すらもありとあらゆる空を舞う者を絡め取る蜘蛛の巣がそこにはある。

歪んだような空間は、転移、或いは他の空間に干渉する能力を完全に封じている。世界を守る天使の力、それは絶対的な力だけでは無い。相手の能力を封じ、ジワジワと削っていく…むしろ殺せない魔王という存在と戦う上では、そんな戦い方は必須なのかも知れない…。


「んで、空もダメ、転移もダメで、天使様は分身まで着けて準備バッチリか。」


「諦めて降参してはいかがですか?」


「やだね。」


始まるのは天使の猛攻撃。

分身した天使が【罪の魔王】の背後へと回り込み、魔法によって実体を持った巨大な鎌を振るう。実体の天使は、分身をサポートするように、【罪の魔王】の行く手を遮る。

飛ぶことも、転移することも出来ない、逃げ場の無い状況で、それでも【罪の魔王】は余裕の笑みを崩さない…。まるで、2人の天使を相手に遊ぶ余裕があるかのように…


「じゃ、ちょっと遊んでやるかァ?」


【罪の魔王】の細い腕に、分厚い鱗が生え揃い、その場から一歩すら動かず分身天使の鎌を手の甲で受け止め、逆の手は天を掴むような仕草を取る……


「…〈天墜(フォールン)〉」「─〈厄災(カタストロフ)〉」


魔王の放った空の落下に、天使の放つ黒い塊がぶつかり、双方共に消滅する。余波すら起こらない完璧な相殺は、つまり天使がスロウの魔法の威力をひと目で完璧に見切った事を指す。

魔法を防がれた【罪の魔王】の隙を突くように、天使は続けて言葉(魔法)を紡ぐ…


「〈陽光の輝槍(ハロ・ランス)〉〈聖威の剣ソードオブセイクリッド〉」


まるで天使の輪(ヘイロー)のような光のみで形成された輝く輪が天使より放たれ、続けて喚び出された巨大な光剣が【罪の魔王】へと自動で追尾するように動き出す─

どちらともこの世界の高位の神官ですら使うことを赦されないまさしく神の御業…。天使のみが使い、天使の敵のみが見る事を赦され、ソレを最期の景色とする…。


「〈日蝕(エクリプス)〉─」


本来であれば起こり得ない。

超高位魔法、一撃必殺の超魔法を防ぐでも、逸らすでも無く、完全に消滅させてしまうなど。まるで魔法に重なるように黒い影が覆い被さり、音もなくそれらは消えた。

先程とは立場が逆…ならばやることは決まっている。


「ッは…次は─〈天輪の輝針(リング・オブ・レイ)〉」


「!?」


天使にしか許されない天使の魔法…。

ソレが使われたことにより、仮面の下の瞳が見開かれる、1国家を滅ぼしかねないほどの力を持った魔王という存在を暫時ではあるが縫い付け、動けなくするほどの力が込められた光り輝く針を……



「チッ、」



その身を呈して受け止めたのは、分身体の天使。

持っていた武器を手離して来た故に、受け身も何も取れていない…その上〈星墜の双子(スター・ジェミニ)〉によるある程度の能力保有の分身体であるため、突き刺さった魔法の針によってその身体にヒビが入り、貫かれた身体が地面に縫い付けられる。意思こそ無いが、魔法による拘束から逃れようとジタバタと動くその姿は、死に際の虫に似ている。

スロウの舌打ちは、天使本体へのダメージとならなかった事への物であり、それは明確に…天使の持つ魔法で天使を害そうとした事に他ならない。


今ここに、天使を信仰する信仰者にとって"特別"であったハズのソレが、普遍的な魔法のひとつでしか無い事が証明されてしまった。


「庇いやがってよ…せっかくの"聖域"強化が台無しじゃねえか…とはいえよォ…」


「これで、天使様が出した分身体は使えなくなったワケで、あとの障害は空間干渉阻害と、飛行阻害だけってワケだなァ?」


「やはり、【罪の魔王】スロウ…あなたの能力は…、」


続く言葉を遮るように、【罪の魔王】が手のひらを天使へと向け…


「《染めろ(ペイント)》〈暗黒煙(ディープスモーク)〉…」


深く、暗い黒煙が、爆発的に広がる。

それは当然空間干渉でも、飛行魔法でも無い。ただ単に、ありとあらゆる感覚を遮断するだけの物。どこまでも深く、暗い闇。

闇魔法の中でも奥義中の奥義…。未だ誰も使えない真に極めた者だけが扱える魔法だ。


「まぁ…俺も見えなくなんだがなァ?」


その声は、未だ煙に呑まれていないレオンの耳にだけ届いた。


不可解にして理解不能の魔法…。

故に千年以上この世界の守護者である天使ですら、抵抗(レジスト)も無効化も出来ず、まともに食らい…視界も、聴覚も、触覚も何も感じない…、裸で宇宙空間に放り出されたかのような感覚を味わい……






「魔法効果が切れた時には、既に天使も、魔王も消えていた。」


3人の中で1番耐性が低かったレオン王子一行が最後に魔法解けて、目覚めた時には全部終わってたわけか…。でもまぁ、確かにその感じだと【罪の魔王】は逃げ切ったっぽいな。


「【罪の魔王】か……、目的がいまいち判んないな……。」


俺の視点だと一番最初の行動は、アルカナム王国の王都ステリアにある王城にモンスターの軍勢と共に攻め込んでくるっていう『魔王なら頼むから動かず座しとけよ!!』って言いたくなるムーブだが、今の話を聞くとこの世界の神様的存在である"天使シセラフ"は前からその存在を知ってたっぽい。

んで、次に取った行動は商業都市フォレスティア近郊に封印されてた魔王アルフェドを陽動として解放し、自分はレオン王子を襲うっていう物。


「にしては天使来た瞬間逃げてるんだよな……」


聞いてる感じだと【罪の魔王】が天使相手に苦戦してる姿が思い浮かばない…。まぁ、そこは俺が天使に会ったこと無いからかも知れないけど…。


「さて、そろそろ貴殿もお待ちかねの『報酬』について話すとしよう。」


「え!マジで!?なんかくれるの!」


一番嬉しいのはもちろんお金だ。今回結構頑張ったし…良いんだぜ?聖剣クラスの国宝とかで突然無双しても─


俺と王子を挟んだ間にある装飾が施された机の上に、ゴトリと重い音と共に何かが置かれる。


「……すぅ」「これは……」


俺が思わず息を吸い込み…天井を見上げ、ウルナですら呆れた声を漏らす理由……


それが、光沢を持つ"黒い王冠"だったからだ。


机の上に置かれたのは、どこまでも深い漆黒の冠。

装飾もほとんど無く、宝石などで飾られてすらいないソレは、悪く言えばのっぺりとした、良く言えば逆に高級感がある王冠だった。


「おい!完全にさっき言ってた国宝の王冠じゃねえかよ!!」


「あぁ、その通りだ。少なくとも報酬として貴殿に与える物のひとつはコレだな。」


「嫌がらせかよ!一応俺結構頑張ったんだぞ!?」


文字通り死ぬほど頑張ってこの都市救ったあとほぼ呪物みたいなモン渡して死ねってか!?やっぱベスティアは敵だ!敵!!


「ウルナ、やはり開戦の火蓋を切ってしまおう。」


「…わ、私にそんな権限ありませんし……えっと…あと…流石に国際問題どころじゃ無くなりますよ?」


馬鹿みたいな冗談も真に受けるウルナはかわいい。

これは当たり前として、この王冠についてもう一度考えてみよう。いくら持ってるだけで魔王が狙ってくる呪物とはいえども、その実態は国宝だ。

わざわざ魔王が狙うほどの国宝…、ゲーム的表現をするならば、ストーリー本編で手に入る"伝説の武具"とかそういう類いのアイテムである。魔王に奪われたと思いきやそっちは偽物でしっかりと勇者が手にする展開、魔王を倒して取り返したと思いきや、真の魔王が後から出てくる展開…、そして今の状況は、国を救った勇者に、国宝であるこの剣を与えよう!的なやつ。まさに王道!コブさえ無ければ嬉し泣きしてた。


「あの、レオン殿下…さすがにコレは……いくらなんでも酷いのでは無いでしょうか?」


「ふむ…まぁ今の状況だけで見ればそうもなるか。」


ティカーさんが思わずと言った様子でレオン王子に進言した。いや、そりゃそうだよね?端から見ても今の状況ヤバイよな?


「安心せよ、金銭の報酬もしっかり準備してある。」


「そこじゃねえよ!」


いや、わりとそっちの方が重要か?

アルカナム帰るために結構金が要るって話だし…。王冠置いて金だけ貰いたいんだけど…。

そんな俺の反応を見て、レオン王子はゆったりとした袖口から覗く手を頭に当て、口を開く


「何をそこまで拒むことがある?受け取ったあとは貴殿の自由にしてくれても構わんのだぞ?売り払おうとも、溶かし別の物に変えようとも、我はそれを咎めることも、止めることもしない。"与える"という言葉の意味は文字通りだ。それでも受け取らんか?」


「んー、そうだなどう見ても、押し付けようとしてるようにしか見えないからな。」


「くははは、なかなかに素直に語るな、貴殿は!まぁ、無論そういった意思が無いとは言えぬがな、王族とは臆病になるものだ…アルカナムの国王と同様に、な。」


最後の言葉がなんか含みありそうだったけど…臆病ってリアム王子のことか?あんま関わってないから良く判んないけど…少なくとも臆病者は自分に【叡智(ウィズダム)】なんていう目立つし恥ずかしい二つ名付けないだろ。

いや…リアムはまだ王子か。国王は……いや、会ったこと無いな。病の床に臥せってるんだったか?


「先程も言ったが、受け取ったあとは好きにして貰っても構わん。無論売るのも、捨てるのも、我に返すのも自由にして良い。だが、これだけは言わせてもらおう…」


「─この冠は、貴殿の物だ。」


なんとも断りづらいその言葉…、

俺の視線の先にあるソレは、どこまでも深く黒い王冠。王位を証明するものでも、金銭的価値もあるか怪しい物だが…何故か、たまたま寄ったゲーセンで別に欲しくも無いのに…って思ってたらいつの間にか3000円以上沼って、店員さんが「せっかくなんで取っていって下さいよ」って優しく声掛けてくれて取りやすい位置に移動してくれたのにそこから追加で1000円沼ってもう店員さんすら応援してくれて後戻り出来なくなった時のあのフィギュアくらい心をギュッとされてる気がする…。だって結構頑張って魔王倒してその報酬であげるって言われてるんだぜ?『努力の証』って言われちゃったらさぁ……?


「はぁ…、」


意を決して…というほどでも無いが、俺はその王冠へと手を伸ばす…。



世界に無二たる特別な冠へと。

GWですね。いっぱい出せるように頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ