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32 ヒーローとかは遅れてやって来る 2

久々のめちゃくちゃ脳内独り言モードを書ける。

実は2話分あったのを合体させた。

「え、なにそれ。覚醒した?」


「ッ違います!!」


半身を炎で包まれたウルナが、激しく抗議の声を上げるが、覚醒イベントじゃ無いとしたらその姿は何なのかって話だろう。それにウルナと共に現れた白い大蛇…、無関係とは思えない。

既に夜空となった空は巨大な炎の蛇によって照らされ、未だザアザアと降り注ぐ雨を瞬時に蒸発させ、白い霧に包まれている……


「もう…ほんとに、どれだけ探したと…、思ってる、ん……ですか…、」


荒い息を吐きながら呟いた言葉は、力が無く、あまり良い状況では無いらしい…。恐らく王城の時と同じだ。"何かしらの制限付きの能力"をウルナは持っているんだろう。一見すると強力無比に見えるが、相当な無理をしているに違いない…。だって半分燃えてるし。

とりあえずウルナを安全な場所に……いや、動けないキアラが……


「がはは!…尋ね人は見つかったようだな!!」


迷っていた俺の耳へと、樽で酒とか飲んてそうな豪快な笑い声が響いた。というより聞いたことある声なんだよな……、


「はい、ここまで連れて…きて頂いて……、」


「構いません、それより…無理はせず、早くこの場から逃げて下さい。」


その2人は、ウルナを探している時に会った冒険者だ。少し焦げてはいるが、ピンク色のモヒカンヘアと少し凹んだ鎧は相変わらず、弟の方も、金属製鎧の上から無理矢理着たような、まだらに汚れた白衣と、ボロボロの伊達メガネ……七三分けは………残念ながらぐちゃってしまっている。


「ってよりオイ!」


「む?」「なんでしょうか?」


俺は2人に詰め寄り、怒りと共に指を指すと、

ピンク色の兄を守るように伊達眼鏡白衣の弟が前に出る。


「先に逃げるように伝えてくれって俺は言ったよな!!」


あの時俺は確かにこの2人にウルナの外見を伝えて、言ったはずだ。『先に逃げるように伝えてくれ』と。それがなんでこんな最前線まで連れてきてるんだよ!!


「貴殿が我らと顔を合わせたのは初めてだと思うのだが……?いや…まぁ、確かにそうだ。我らはあの時の少年の頼みを違えてしまった…、それは確かにすまない事だとは認識しているとも。」

「それは……申し訳ありません。」


「私が、頼んだ…んです……。……*****(イフリート)で脅して…ちょっと無理矢理………」


「お前の方がオイ!!そんな悪い子に育てた覚えはありません!!」


「あのー、そろそろ僕も会話に入っていいかなぁ?いいよね!?いいよねぇ!!早く助けてー!!」


血塗れで倒れるキアラの叫び声とほぼ同時に、黒い輪が回転し、炎に包まれて爛れた身体の竜が頭を上げる…裂けて開いた口の中にはサメのような幾重もの鋭い牙が並んでいる…。光熱によって剥げた鱗を突き破るように、再生した翼は、樹の枝のようにいくつも別れ、それぞれの先が触手のようにうねうねと蠢く…。


「うわキモ…」


「もはや竜とも呼べぬなアレは……」


『ッハは!!奇襲とハ…卑怯なコトをシタものだ…ナッ!!』


再び黒い輪が回り、金属を擦り合わせたかのような雄叫びと共に、魔法が展開される。ソレは得意の岩の槍!数は数え切れない程であり、動けないキアラはもちろんの事、俺も、ウルナも防ぐ手立てを持っていない。


「ッ!」


ウルナだけでも守ろうと前に出る……までも無かった。



『***……』



何かを呟きながら、高熱を発する大蛇がその身を盾とするように前に出る!

そうなってしまえば魔法で造られたとはいえ所詮岩の塊てしか無いソレは、蛇の身体に当たる瞬間にドロドロに溶けた溶岩となってべちゃりと地面に落ちるだけだ。

いややっぱり炎って圧倒的だよなー、強すぎんだろ。とはいえ、それが全くの無制限(タダ)で使えるというわけでは無いらしい。


「ッ…ぐ……ぅう…」


苦しむように燃えている方の眼を抑え、ウルナはその場に蹲る…荒い息を吐き、大量の汗をかくが、流れた汗は流れた先から蒸発し、本来の"少しでも身体を冷やす"という役割すら果たせず、少しの霧へと変わっていく……


「…やっぱり、代償付きの能力か…さっさと逃げるぞウル─」

「ッダメです!!!」


俺の言葉を遮るように、ウルナの叫び声が響いた。

暫しの静寂…既にウルナの身体を持ち上げるために脇に差し込んでいた手のひらが凄まじい熱を持ち始め、もう溶けたんじゃ無いかと思い始めた頃……


「南様、あ、れは…魔王です!魔王、なんです!」


「は…?」


突然ウルナの口から飛び出したその言葉に、俺はウルナの脇から出した手を庇いながら頭に『?』を浮かべながら思考を回す……


「え?…俺が倒せってこと?」


「はい!勇者である…南様以外に、アレを…倒せる人は居ないんです!」


普段こんな熱いこと言うキャラじゃ無いハズだけど…この感じは王城の時のイケメンモード…。


「勇者…?ですか。」


あー、そんな大声で言うから…逃れらんなくなっちゃったじゃねえかよ……


「そういえば…あのドラゴンもそんな事言ってたよねー、それより早くタスケテ!!」


キアラの声も、白衣眼鏡の声も聞こえない…。今はただ、ウルナへと視線をまっすぐ向ける…。それはアイコンタクトのようなもの。なんたって俺とウルナの仲だ。言いたいことは判るよね?

(否定してくれー!俺は勇者じゃ無いからー!!)


俺の圧倒的目力(アイパワー)による頼むから否定してくれ(説得)に対して、ウルナの目は……

あー、これダメなやつだ。期待とかそういうやつが凄いもん。ヒーローショー見てる子供とかと同じ目してるもん。


「がはは!これは良い出会いもあったものだ!…少女の話を信じるのであれば…貴殿がこの戦いの鍵となり得る。」


「もはや古びた伝説の存在の力…、まさかこの目で見る日が来ようとは……」


元ドラゴンだった化け物は絶えず攻撃をし続けているが、それをせき止めているウルナの蛇は…たぶんだけどそんなに長く持つものでも無いだろう…。この防壁が破られた瞬間、ここは戦場になる。

そんな極限状況下で…『出来ない』は言えない。

でも、出来ないものは出来ない!無理なもんは無理!!それなのに、それなのに!勇者以外に殺せない…全身燃やされても死なないアレを殺す手段を期待されているッ!!!

何この状況!?地獄か?ここは地獄なのか!?


必死に頭を捻れども、出て来るのはなんかすっごい下らない話だ。あー、酒飲んで現実逃避したい。肝臓ボロボロにして今すぐここで死にたい。ここに北瀬優輝(あのバカ)連れて来たい!あいつが今ここに居て、あの時の状況ならもう、誘導して必死に避けて当てるっていう頭使うタイプのゲームのボス戦みたいに─



「あ」



ひとつだけ、閃いた物があった。

見つけたのだ、見つけてしまった…。勇者では無いこの俺が、魔王を倒す勇者になれる方法を。だが、それは不確定要素を大いに含んだ綱渡りのような方法だ。

ここで、死ぬわけにはいかないんだ…。俺は、元の世界に帰りたい。…そして幸せ女子高生ライフを送りたい!都会のカフェで生クリームたっぷりのパンケーキ食べるだけで画になるタイプの女子高生になりたい!

だが、この状況で安全に逃げられる保証がどこにある?このままアレを放置すれば、都市を滅ぼす。その前にこの都市から出ることは可能?分からない。全部分からない。とりあえず何故か今は…


「なんかパンケーキ食べたい口になってきた…。」


「は?」


カロリーとか何も考えられないくらい、ふわっふわのやつ食べたい。生クリームとバニラアイスとミックスベリーが乗ったやつ。そこに上からはちみつ垂らして食べたい。

誰だよこの状況でパンケーキの話したやつ。死刑だろ死刑。これで死んだら俺の遺言「パンケーキ食べたい口になってきた…。」になっちゃうだろ。

あー、さすがに雑念が過ぎる。そろそろさすがに考えは纏まった。もともとそんなに賢い方でも無いんだから…馬鹿みたいに考えるよりも、直感で動いた方が俺は強いんだよ!たぶん。


「ウルナ…俺は、魔王を殺してやる(勇者になってやる)よ。」


パンケーキの話からどう繋がったのかというとてつもない深淵に頭を突っ込むような疑問を持ったウルナが、頭に特大?を浮かべているけど、そんなもんは無視だ。勇者以外に殺せない魔王という不死の存在。

そんな化け物の最も厄介とも言える点が、『ひと目で判断がつかない所』だ。化け物じみた力を持つ存在なのに、殺してみるまで不死身なのかすら分からない。魔法による再生なども考慮してしまうと、もーどうしろって話だ。


だから、勇者の居ないこの場でアレを倒す方法は"本来は存在しない"そう、()()()である。今の俺の手札の中に、それを突き崩す手段がひとつだけかつ"一回のみ"ある。とか以前に…


「……ところで、ウルナはなんであれが魔王だと?」


「それは─」


「もう!!いい加減に僕を無視するのはヤメロー!!」


『ナラば…我が少し戯れテヤロウか…?』


いつの間にか大蛇の身体を張った守りを突破し、倒れているキアラの真後ろにまで来ていた竜の低い声が響く…、


「い…いやぁ…遠慮しとこぅ…かなー、?」


「あれ?大蛇やられた?」「すみません…あれ非実体です。」


「あ。」


すまないキアラ…お前のことは忘れないよ。

とは言っても…キアラと俺達の距離ってほとんど離れてない。キアラの位置が竜の目と鼻の先だとすれば、俺達の位置は竜の一歩先とかそんなもん。つまり、大技なら巻き込まれてそのまま死ぬ。


「がはは!!よかろう、弟よ!我が抑える、あの娘の回収は頼んだ!!」

「無論です!!!」


輪の回転すら無い、一瞬で決まる凶爪の一撃!

超常の化け物から放たれる超常の一撃故に、防げるような人間が居るハズも無し…まぁ、ここに常人は居ないのだが……


「《豪撃》!!」


桃輝の鎧(ピーチメイル)】タウロのスキルを伴った一撃は、竜の爪撃を真正面から受け止め、一瞬の拮抗の後に竜の爪を斬り飛ばす。クラス6冒険者たる存在の一撃は、短時間とはいえたった1人で竜の攻撃を捌いていたキアラを優に越える超常の一撃すら斬り断つ()()()の一撃である。

その後も続く攻撃を容易に捌いていることからも、あの竜に関しては任せていても構わないだろう…。とりあえず、考えるべきは殺す手段では無く、『方法』だ。


「少なくとも…頭じゃ無いな。」


さっきも大蛇の炎でふっ飛ばされてもすぐ復活してた。でも、思考自体はしてるっぽいから脳はある。少なくとも頭をふっ飛ばされた直後は動かなくなるって事は…一応頭部に脳はあるのか?なら心臓は?でもあそこまでぐちゃぐちゃの身体だとどこに心臓があるのかも判らん!

とりあえず、今はひとつひとつ疑問の解決をしていくしか無いな。


「んでウルナ…なんであれが魔王だと?」


「……*****(イフリート)が教えてくれました…、たぶん…間違い無いです。」


その名前すら、俺には聞き取れないんだが…たぶんあの大蛇の事だよな?いふ…と?とかなんとか…少なくとも俺にはあの蛇の声は全部雑音にしか聞こえない…。でもさっきから何度もあれが鳴き声っぽいのは上げてるし……、『精霊の声が聞こえるわ…』みたいな不思議ちゃんキャラってことね…、ウルナのキャラがあまりにも混沌とし過ぎてるだろ…。

メイドで、炎が使えて、なんか過去に色々あって、精霊の声も聞えちゃうらしい。ついでに包帯ぐるぐる巻き。

………字面だけで見ると"女の子版厨二病"みたいだな。


「今、なんか失礼な事考えませんでしたか?」


「カンガエテナイヨ、オレハナニモシラナイヨ。」


─ズン!!

と凄まじい音と共に大地が揺れ動いた。それはキアラを救出した後にも続くタウロの剣撃を受け止めきれず、竜の巨体が吹き飛ばされた事による物である。目算でも何百kgとかそんなんじゃ足り無さそうなソレをこうも簡単に転がす姿を見るとマジでヤバさが理解出来る。


「っがはは!!竜というのも大したことは無いらしい!!それとも…肉弾戦はあまり得意では無いのか?動きにムダがあるように見える!」


動きにムダ?

復活して触手になった身体が慣れてないみたいなことか?


『舐めルなヨ…矮小ナる、ニンゲン如きガ!』


天に座す巨大な輪の回転…


─ドン!


と起きた風の爆発、凄まじい渦巻き、墜する岩弾…そして炎の─


『ッマタか…!精霊擬キが!』


掻き消えた火の魔法と共に放った苛立たしそうな竜の悪態の直前にはウルナの精霊語(よくわからない言葉)が紡がれていた、つまり火に関してはウルナの妨害が効いているわけか…。

現状で竜が使っているのは王道のファンタジーでは基本となる4属性。いわゆる四大元素たる火、地、水、風である。水魔法という物自体が微妙魔法である関係上、実質的に使っているのは地魔法と風魔法。

風は広範囲かつ、魔法によっては視認不可能というかなりの殺傷力を持つ物だ、一方で地魔法は魔法でありながら純粋な物理攻撃が可能という特異性を持っている。


「それを捌いてるあいつらなんなんだよ……、」


恐らく特殊能力(スキル)による防御や特殊機動を取っているんだろうが、飛んで跳ねて斬り裂いて、2人の兄弟は竜の攻撃をかすり傷程度で受けている。

変わらず兄が竜の物理攻撃を逸らし、弾き、受け流し、弟の方はそのサポートに徹している。あれがあの2人の普段の戦闘スタイルなんだろう。

キアラも強かったが、こちらは個々が強い上で連携が取れてる。


『ッ!!!邪魔ダァぁあ!!!』


「ぬ!なんだ!」「兄者、警戒を!!」


竜自身の身体すら包み込む砂を巻き上げる巨大な竜巻…それが、()()()()()()発動した……。


「ここに来て新技か!?」


という俺の心配は、見事に的中する。

俺の居る建物の正面から、巨大な触手が生えたのだ。


「ッ…そうだったな!」


最初にコイツを見た時も、竜巻に隠れて一瞬で眼の前に現れた。竜巻に視線を集中させている間に地に潜り、獲物を狩る……。まさしく、ファンタジーに出てくるモンスターに相応しい狡猾な技だ……。

いや、最強のドラゴンがやっちゃダメだろ……。


「南くん!!」


触手に捕らわれていた意識を取り戻し、最初に目に入ったのは血塗れで、未だ消えない痛みによって顔を歪ませながらも、横からウルナを攫い、続いて俺を─




「ぁ…」




治りきっていない怪我からか…キアラの指が滑り、俺からどんどんと離れていく……。キアラの表情も、ウルナの表情も、なんとも曇った物なのが見えた…。

遠ざかっていく悲痛な声─


『ッは……コレで…終ワりダな─』


最期に聞いたのは……



「南様ッ!!「ッ南くん!!!」」


















「………、ッは……酷い、光景…だな…。」


頭から流れる血は、まだ止まらないがそれでも、今のこの光景を見て…眠っていられるハズも無い。

地面から這い出るように、その前脚に力を入れる歪な竜の足下には、とてつもない量の血が未だに流れ出ている……。前脚を上げれば、その肉片が血溜まりへと落下し、眼を背けたくなる程の凄惨な光景を作り上げた…。

すすり泣くような声と嗚咽…、少し石に当たって気絶している間に、この光景は作られた。


「……僕、が…悪い…な、」


定まらない視界の中、ラトゥイは2本の杖を構える……。

子供の頃に見た憧れの存在には程遠く、まだまだ足りていない…それでも、精一杯笑ってみせろよ…、誰もが安心するような、そんな笑みを見せてみろよ…

放つのは、出し惜しみしていた…、己の魔法使いとしての人生全てを捧げ、編み出した…そんな究極の奥義。ラトゥイの全身に、魔法陣が浮かび上がる……自身の肉体を媒介としたソレは、属性魔法から逸脱していると言っても過言では無い故に─



「はは……ッ〈空間崩壊(ワールド・クラック)〉」



空間干渉魔法……禁忌とも言えるその力を、種族としての禁忌たるその身にて使う。

竜の存在していた"空間そのもの"に、亀裂が走り…一瞬にして崩壊する。竜の肉体は、一瞬にしてボロボロに崩れ落ち、凶悪な牙も、無数の血を吸った凶爪も、まるで始めから何も無かったかのように……






それでも、天使の輪(ヘイロー)は回る。

一応言うとキアラがヒロイン枠。

ラトゥイは最後に出た時に頭に石塊めり込んで血塗れ気絶してた(当初はもっと出番あったんだけど…君じゃ無くても別にいいんじゃね?って描写が何個もあったんだ許してくれ)

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