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20 死んだと思ったら砂漠に飛ばされてこれからどうしようと思ってたら案外人生うまく行きそう。

お久しぶりです。

キタカミの里に行ってました。スグリくんがとてもかわいいてす。switchの写真フォルダを圧迫してきます。

商業都市フォレスティア。

住民の往来よりも馬車の往来の方が多そうな大通りは、荷車を引くための竜を預かる施設や、竜車の保管を行う店、無論巨大な宿泊施設も完備されている。


「商業都市は伊達じゃ無いんだな…。」


しっかりと商人が来やすいように整えられてるのは素晴らしい。ただ来てくれって言われても、わざわざ長い時間を掛けて行く事を考えると、さすがに気が引けるだろう。しかし、商人の受け入れ体制が整っていれば良い!宿が多ければ泊まる場所の心配も要らない!


しかし、世の中で必要となるのは結局はカネである。ここに居るのは無一文の少年少女。…何?物乞いでもすれば良いか?


「南くん、君たちってこれからどうするの?」


「そうだな、ここまで送っては来たがよ…悪いが俺もこの先までは保証出来ないぞ。」


キアラとノルアさんからの言葉を受け、少しの間考える…。どうするか?と言われてもな、誰が突然砂漠に放り出される事を想定するか?ひとまずフォレスティアに入ったんだし、ここで資金を貯めるという選択肢しか無いか…?


「うーん、アルカナムに戻るにはどれくらい金が要るか……。」


そう。人生には何かしら目標があったほうがいい物だ。今の目標は、アルカナム王国に戻ってクラスメイトたちと合流すること。まぁ、それくらいだろう。

あとは…せっかくこんな遠くまで来たんだし、楽しんでみる…とかかな。


「アルカナム王国に!?…大陸の真反対だからねぇ…船で行くにしろ〜陸路で行くにしろ〜、とんでもない日数と金額になるねぇ…」


「ちなみにどれくらい?」


少しの間の後で、ノルアさんが答える。


「まぁ…どんだけ早くても1ヶ月は切れねえだろうな。金は、金貨で3桁近くは余裕で飛んでくぞ。」


金貨……うーん、見たこと無いことも無いんだけど…さすがに厳しいな…やっぱり金策したい。水魔法である程度仕事は保証されるって話だけど…実際どうなんだ?


「ウルナちゃんはメイドさんでしょ?南くんは前までどんなお仕事してたの?貴族様の子息って感じでも無いよね〜?」


「ん〜、やってたことと言えば、魔法やらスキルやらを調べたりしてたな…。ひとまず俺は戦えないからって感じで。」


他人のチート能力を幾らでも観察出来る環境ってのはやっぱりとんでもないよな。魔法ひとつ取ってもマジで無限に応用が効きそうな感じだし。もちろん、俺も自分のスキルはかなり調べた。


「結局のところ…俺のスキルは物質の加工だ。例えばキアラの持つハルバード、それの研ぎ直しを、俺は一瞬で行える。…やろうと思えばだが、建造物の構築も…不可能じゃ無いわけだ。」


「へ〜それは…凄いんじゃ無いの?」


「まぁ、作った建造物は結局…俺のスキルが外れた時点で倒壊するから、結局かなり限定的な力だけどな。」


「まぁ、水魔法を使えるなら、雇ってくれる所もいっぱいあるよ!僕とおんなじ冒険者なんてどう?…実は水魔法に関する依頼も、結構あるんだよ〜?」


結局、そこがテンプレだよな…異世界なんだから。


「南様…いざという時は、私が…どうにか、しますから。」


「前にも聞いたな、その台詞。」


うちのメイド(ウルナ)のイケメン度がどんどん上がっていくのと対比して、自分の非力さを実感する。

その時、腰に下げている嫌な思い出しか無い剣の柄が手に触れた。武器を引っ提げた若い男…どっからどう見ても駆け出し冒険者(ビギナー)…もしくは冒険者に憧れる男(英雄願望者)だろう。


「形から入るタイプだとしたら、もう完璧だな。…そうだな。…俺も、冒険者になろう。」


「決まりだね!新人が増えるのは僕も、嬉し〜よ。案内したげるから冒険者組合(ギルド)に行こっか。」


「んじゃ新たな門出を見届けたし、俺はそろそろ行くぞ?」


「ありがとう。ノルアさん。…いつか、借りは返すよ。」


「ははは、気にすんな!じゃあな。」


ノルアさんの背中を見送り、俺はまたスタートラインに立った。強くなったかと言われると微妙だし、強くなりたいわけでも無い。とはいえ、動かなければ何も始まらないのだ。

それに、俺は運が良い。ノルアさんに拾ってもらわなければ、あの場でウルナもろとも確実に死んでいた。


「自信を持て…小鳥遊 南。」


自分に向け、小さく呟く。そして俺は、一歩を踏み出した。















それはほとんど明かりの無い真っ暗な空間だ。僅かな隙間から外の様子は垣間見えるが、ただそれだけ。

そんな中に、ひとつの安楽椅子が置いてあった。そこに座るのは、仮面を被った一人の少女。眼を瞑り、揺られながら静かに眠る。しかし、眠りながらも右の手には、特異な紋章が描かれた杖が握られていた。

睡眠という絶対的無防備な状況ながらも、杖を手放さないのは、彼女が杖を持たなければ活動出来ない事情がある故か?それとも誰か…それも特別な存在からの贈り物だからか…?


「…は」


少女は息を吐く。それは久方ぶりの呼吸だった。

伸びをするように立ち上がり、その背に持つ両翼を広げる。


「1ヶ月…かなりの間、時間を無駄にしましたね。」


自嘲気味にそう溢し、少女はその美しい白い髪を束ねる。


世界に求められるままにその力を振るい、世界の均衡を守護する。神の代行者として、いや、自らの身勝手な理想のために。


純白のローブを羽織り、顔が見えぬほど目深に被る。そして着けるのは銀の仮面。


「新たな魔王……『罪の魔王』………次は、確実に。」


覚悟の声と共に、天使(少女)は杖を振るった。












冒険者組合(ギルド)まで付いて来てくれたキアラと別れ、その日に受けられそうな依頼をいくつか消化する。

依頼の内容は様々であり、例えば単純に大量に水を貯めてくれという依頼。これは仕事で使うらしいが、大量の水ともなると店売りの水を買うよりも冒険者に依頼する方が安いらしい。いつも受けている冒険者が休みらしく、たまたま回ってきたという感じだ。

他には、家にデカい風呂があるけど、貯めるのが現実的じゃ無いくらい広くて、たまの休みに入りたいから水を出してくれっていう人。風呂は普通に大きかった。


「…だいぶ水出したけど…まだまだ余裕あるな…?」


魔力が多いらしい俺でも、ここまで使えばさすがに魔力切れになるはずなんだが……?


「南様、どうかされましたか?」


「…いや、なんかスキルでも増えてないかと思ってさ…『ステータス』」


開くこと自体が久々だ。変わり映えのない文字列を眺めながら異世界感を感じつつ毎日ニマニマするのは1週間で飽きた…いや、10日くらいはやってたわ。



Name『小鳥遊・南』lv2


Skill


性別転換(トランス)


錬成(アルケミー)

 ∟『圧縮(リダクション)

唯一の収納(ストレージ)



「上がってる…な。」


lvの上昇。…それはある一定の技量を体得した証であり、lvの上昇によって恩恵を得る事が出来るらしい。例えば総魔力量の上昇、スキルの追加などなど。そして、俺が得たのはたぶん魔力の上昇、そして《錬成(アルケミー)》の新しい技能である《圧縮(リダクション)》の追加。効果は文字通り、物質の圧縮。イヤ待て…圧縮って英語でコンプレスとかそんなんじゃ無かったっけ?コンプレッサーとかあるし。


「物質の圧縮…だけじゃ無い?」


ぶっちゃけ俺は、スキルについてあまり詳しくない。俺の周りのチート人間達を見てると、とんでもパワーに思えるんだが…本来はそんなに凄い能力じゃ無いらしい。産まれた時に得られるスキルは最大で1つだけな上、戦闘に使えたりするスキルを獲得するのは、全体の10%くらい。しかもそれが本人と噛み合うかも運要素。いやぁ…クソゲー極まってるわ。

実際俺も、スキルはそんなに強くないし。


でも、実際名前だけじゃ判別出来ない効果を持つスキルもあったりするわけだ。


「……圧縮(リダクション)


柄を握っていた腰の剣が、脇差しをすり抜ける…。

発動させた効果は指先サイズ。さて、これで小さくなるという効果は確定として─


─ガン!!


「!?」


おおよそ、小さな落下物とは思えない音が響き渡る。いや…たぶんこれが真価だろう。


つまめるほどの小さな剣を、ウルナが拾おうとしているが、まぁ持ち上がらないだろう。


「物質の重さそのままに、物質の密度を圧縮して強制的に縮小させるスキル…。」


使い方によっては…化ける…か?


「あの、南様!ご自分の世界に入らないで下さい!」


「あ、ごめん。」


思いがけず新たな力は手にしたが、ぶっちゃけ依頼では使えないし…あんまり意味無いかもな。

少なくとも、俺がアルカナムに帰るまでの時間を圧縮はしてくれないようだ。剣を元のサイズに戻し、再び脇差しに刺して、俺たちはその場を後にした。








「今日の最後の仕事が…これ、かな。」


それは寂れた教会だった。とはいえ何度も補修された後が見られ、完全に廃れているわけでは無さそうだ。それに、誰も居ないなら依頼が来るわけもない。

ひとまず扉の前に立ち、ノックして少し声を張る。


「すみません、誰か居ますかー?」



返答が無い。とはいえ中からは人の気配がするし、少しすれば誰か…


「ハイ、誰ですかー?」


扉越しにまだ幼さの残る子供の声がした。


「…依頼を受けてきた冒険者の者です。依頼について具体的な話を─バン!!


「え!それ、本当に!?」


勢いよく開け放たれた扉と、活発そうな少女の姿だが、ここで問題なのは悶絶する者が一人居る事だ。


「おーい、ウルナ大丈夫か?」


「だ、いじょぶ…じゃ無いです……。」


鼻を抑えながら涙目でそう訴えるウルナと共に、古教会からの依頼がスタートした。

この世界でのレベル概念は、ゲームとかと同じでlvが上がると強くなる。でも、普通に筋トレしてても強くなるし、魔法の特訓してても強くなる。

ただし、レベルを上げたら確実に戦闘面で強くなるかと言われると微妙。頑固鍛冶師か一生鎚を振るってるだけでもlvは上がる。人間が取る全ての行動に対して経験値が割り振られてる。しかし、さすがに命を危険に晒された状態で生還すると、lvは上がりやすい。

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