18 捕縛された。
主人公の運命やいかに…
「……?」
心地よい揺れを感じた直後、ガタン!と激しく揺れた衝撃で尻を強打する
「ッ痛!!」
思わず声が漏れるほどだったが、何故か尻を擦れない…あぁ、そう言えば片腕無くなってたんだっけ………………あれ?
「おや、起きたかい?」
疑問符が付いていそうな少女の声を聞いても、俺はその信じられない状況に驚愕せずにはいられない。
俺の記憶が定かなら、俺は胸を刺し貫かれて死んだハズだ。いや、その記憶が確かなのは、俺の服の胸元に開いている穴が証明している。つまり、あれは現実だ。切断されて感覚が無かったハズの腕も、感覚がある。しかし左の袖が無く、まるで世紀末ひゃっはーのような服装に………
「じゃあ…なんで俺生きて………」
─パン!
「おい少年!僕を無視するとは、いい度胸だね。」
さすがに怒らせたらしいが、今はそんな場合じゃ………
そこで、俺の視線は釘付けになった。
無論、眼の前の少女は美少女だが…そもそもこの世界の顔面偏差値高すぎるから置いておこう。俺が釘付けになっているのは、その少女のこめかみの辺りから生えている“角“である。羊のように曲がって前に突き出したその角は、俺の中では異世界ではメジャーたるとある種族を思い起こさせる。その珍しい黄金の瞳がジト目気味になっているが、そんなことは関係ない!むしろその後ろでゆらゆら揺れてる鱗の生えた尻尾はもっとヤバい!完全にソレだろ。異世界で見たい種族No.1(俺的)かわいい美少女とカッコいいの象徴たるドラゴンの合体!萌えない訳がないし、燃えない訳がない!!竜じ─
「えっち。」
「あ…」
「も〜、僕がかわいいのは分かるけど〜、初対面なのにそんなに見つめられると〜僕だって、思うところがあるよ?」
そりゃそうだ、リアルで初めて見る竜人に興奮したからって言っても、初対面の女性にこれは失礼極まりない。しかし……服の露出が多いな…。民族衣装的な?
「すみません、見惚れてました。」
「うむ、素直でよろしい。さてさて、君にはいくつか質問したいことがあるんだけど、君は僕に質問あるかな?」
「はい。まず最初に……なんで俺、捕縛されてるんですか?」
さて、今の状況。眼の前に美少女ドラゴン。そして俺は後ろ手を縛られて寝かされてる。…なんで?
「良い質問だね、答えよう!簡単に言うと、君を信用出来ないからだよ〜。こんな砂漠のど真ん中で剣1本だけ持って倒れてるなんて〜、怪しい以外何もないでしょ?」
剣1本…?
うわ…めちゃくちゃ見たくないもの見えた。
それは馬車の隅に立て掛けられていた。胸貫かれた時に見た特徴的な彫りがある剣身…あれ間違いなくそうだろ。うわ…なんか胸痛くなってきたぞ……あ、物理的じゃ無くて、精神的な方ね?
「なるほど、理解できました。………ん?砂漠!!?」
視線を動かし、そこは馬車の外。それは一面の砂!砂!砂!道理でクソ暑いと思ったよ!!!
「ま、いいか……あと、もう一つ個人的なやつが…」
「何だい?」
「…俺、男か女かどっちに見えます?」
「?…男の子でしょ。」
さて、おわかりいただけただろうか?
俺の見た目に対する質問で、俺を男だと認識した!そう、さっきからもはや違和感があったんだよ。座った時の目線とか、股のナニとかで分かる!……戻ってきたのか…お前。
そう。ついに俺は、真の姿を取り戻したのだ!
「?良くわかんないけど、最初の質問をするね?」
「どぞ。」
「君の名前は?」
「南。」
「なるほど、南くんね。じゃあ質問…南くんと一緒に倒れてた女の子…結構なケガしてたり、火傷の痕があったけど…あれやったの、キミ?」
寒気すら覚えるくらいの声で言い終えた少女……ふむ、コレ多分この子の中での答え出てるよね。………あー、多分だけどウルナのことだよな……。ん?少なくともウルナは生きてるってことか。そこは良かったと言えるな、うん。さて…覚悟の準備をしよう。ここで俺が何を言っても言い訳にしか聞こえないと思うんよ。じゃあ、俺は少女に暴行を加えた最低男のレッテルを甘んじて受け入れるしか無いと?……いやいや、絶対ヤダ。
「いや、俺じゃ無いぞ。…ケガに関しては俺が守りきれなかったのもあるけど……。」
「本当に〜?」
「そもそもコレ、証明しようが無いだろ!ウルナが起きるの待っとけよ!」
「既に起きてますが。」
「「うわっ!?」」
積荷の奥からひょっこり顔を出したのは、普段は包帯を巻いている右側の瞳を閉じたウルナ。
「………あ、起きたんだね!良かったよ〜。」
「……」
ウルナが黙る時というのは総じて何かしら情報を整理するときだ。例えば俺が無茶振りしたときとかに発動する。
「……誰ですか?」
「僕の名前は、キアラ。しがない高位の美少女冒険者さ。」
「俺の名前は、南。現在進行系で尋問を受けてる可哀想な男さ。」
「………」
またフリーズしたウルナの視線は、俺のもとに突き刺さっている。さて…5秒ほどが経過した。
「え?南様…戻ったんですか。なんで?」
どうやら正解を導き出したらしい。まぁ、一応スマホに保存されてた写真で俺の男Verは見せてるからね。…もう充電無くなったから何もできないけど。
「……いや、そもそも…今どういう状況なんですか?」
「………完全に砂漠ですね。」
「ウルナ、なんか思い当たる節は?」
「…全く無いです。」
地平線まで広がる砂原……、いや、向こうを向いたら切り立った山岳が見えるな……。とりあえず、俺が言いたいのはここがとんでもなく広い砂漠地帯ってコト。
「まぁ、少なくとも…俺達を拾ってくれたのはありがとう。お陰で死なずに済んだ。」
「いやいや〜、お礼なら僕じゃなくてこの竜車の持ち主の商人くんに言ってよ〜。」
俺たちが乗ってるのは荷台だが、御者台でこの馬車……いや、竜車って言ったか?を操ってる商人のところに顔を出す。
「ん?おぉ…お前ら目覚ましたのか。」
「はい、お陰様で。」
「はは、まぁ気にすんな。竜車が賑やかになるなら歓迎だよ。」
おぉ…めちゃいい人、しかも俺とあんまし歳も違わないな……いやぁ…凄い。この若さで商人って…個人経営だから、つまるところ社長だぜ?
「ありがとうございます。この御恩は忘れません。」
「もちろんだ。ただし…何かあった時には頼んだぜ?」
ニヤリと笑うその顔を見て、やはりこの人は商人なんだなと、改めて思う。
「もちろんです、南と言います。」
「俺は良い商人のノルアだ。よろしく南さん。」
というわけで、俺とウルナは良い商人のノルアさんの竜車にお世話になることになった。奔るは砂漠地帯。その砂漠で思い当たる場所は……
西の大砂漠…ベスティア王国、か…。
それは大陸の東に位置するアルカナム王国とは、大陸中央にある山岳地帯を挟んで対極に位置する大国だ。港を持っているから流通も盛ん。まぁ、無人島に漂流とかってより全然マシだ。
「どーにかなるさ。」
こうして俺の、第二の異世界生活がスタートした。
始まりましたー、ベスティア王国編です。舞台は広大な砂漠地帯!大量の犠牲者を出したアルカナムを置き去りに、物語は進みます。
そして主人公は男に戻る。
9/22修正─変更点。キアラの容姿についてイメージしづらいため、瞳の色を追加。




