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16 最悪の死

お久しぶりてす。今回は誰かが死にます。

全てを切り裂く斬撃…本来それは“技“によって成されるが、今のそれは単純な筋力のみによる物。

故に受け止める、もしくは受け流すなどという馬鹿げていて不可能で、絶対無理で、んなもん漫画の中だけだわクソが!!!

な事は避けなきゃいけない。


最悪の事態というのは得てして起こりうる。

それは最強(【勇者】)が敵に回る時、そしてその刃が(最弱)に向かう時。


「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理ッ!!!!!!」


「み、南様落ち着いて下さい!!」


全力疾走で来た道を大逆走する俺─と抱えられてるウルナはもう何すればいいか分かんない大パニック状態だ。小学生の必殺技たるぐるぐるパンチ張りに剣をぶんぶん振り回す優輝だが、その危険度は俺の腕を切り飛ばしたあのクソトカゲ野郎の数億倍!勝率とかゼロだから逃げる!しかしその身体能力も俺の数億倍!いや…それは言い過ぎだけど《錬成(アルケミー)》による全力の足止めでも若干速度で負けてる。


「ッ!!!前にも化け物居るのかよ!!」


それは本来瞳のある場所から鋭利な角が飛び出しているオオカミだ。そしてオオカミってのは絶対に群れる。キモいやつが5匹。

5匹で良かった!絶対死ぬけどさ!


多分だけど目は見えてないハズ、じゃあ…嗅覚で獲物を察知してるんだろ…えーと、確かなんかふざけて一回使ってみたことあったはず……!


「〈芳香錯乱セント・コンフュージョン〉!」


俺の周囲に発動した煙のようなエフェクトはどんどんと広がっていき、ついにはオオカミたちにまで到達する。

さて、結果はわかりきっている。オオカミたちはどこからかするその幻臭によって混乱し、その場でくるくると回るモノ、どこかへ走り去っていくモノ、仲間であるはずのオオカミに噛み付くモノ、それにブチギレるモノなどなど様々な反応を見せた。


クックック…魔法も使い方によってはここまで化けるんだぜ!でも、こういう場面以外どこで使うの?


「…敵か。」


やべ!




─!




三度目に放たれた閃光は、壁を抉り床を削り、オオカミたちを骨すら残らず消し炭にした…いや、炭も残ってないけど。上半身だけ失ったオオカミは半身をその場にだらりと落とし、首から下を失ったオオカミは全ての穴から血を垂らしながら無い肺で必死に呼吸をしようとする。未だピクピクと動くソレは、先程まで確実に生きていたのだ。


「あー、直線だからギリ避けれるけど…肩肉持ってかれたなぁ…。」


「ッ…痛そうですよ…ほんとに大丈夫ですか……?」


大丈夫なわけ無いけど、追加効果みたいな物は無いってだけでまだどうにかなりそうだよな。熱線による物質の完全分解…魔法だとしたら〈分解(ディスマントル)〉みたいな名前かな…?いや、聖剣の効果か?あんな化け物じみた威力してたらそりゃ魔王殺せるわ。


「まだ余裕。ウルナはしっかり捕まってろ。」


魔力残量だけで言ったらまだ余裕あるんだよな…〈偽薬(プラシーボ)〉の魔法で痛み和らげてるし…あとで身体が悲鳴上げそうだが…後先考えてたら多分死ぬ。


「《錬成(アルケミー)》」


決して俺の視界を遮らないように俺が歩いた場所にハードルを作り続ける。地味で面白くもない作業だが、止めた瞬間俺とウルナが死ぬ。いや、無理だったらウルナ放り投げて俺だけ死ぬか。

さすがにここまで来て心中とか笑えない。



「どこまで逃げる気だ?」


「お前が諦めるまでだよバーカ!」



「そうか…」


抑揚の無い優輝の声だが、足音が止まった時、何故か本当にヤバいという直感が働いた。

振り返るとそこには、聖剣を構えながら力を溜める優輝の姿………


「…これマジでやばいか?」


無数の可能性が頭の中をぐるぐると回る。

一瞬で距離を詰めるようなナニカ、もしくは極太レーザー、もしくは城全部吹き飛ばす威力のとんでも必殺技……、もうあの奇跡の回避とか無理か?…いや、全部死ぬわ。


俺はウルナをいつでも投げられるように準備をして…


「南様……今更、私のこと見捨てませんよね?」


「は?今更見捨てるかよ…腹は括ってる。安心して担がれてろ。…まぁ、今まさに仲良く死にそうだけどな。」


ウルナの体温が一気に上昇する…


「うぅ……一回だけ、一回だけはどうにかしてみせますから!あとはなんとかして下さい!」


うわ、発言めちゃくちゃイケメン…じゃなくて…何これ、ウルナの身体エグい暑さして…え?火傷しそうなんだけど…何これマジで?


「ッ『******』!!!!!!」


「【始聖剣(カリバーン)】」




















「憧れだった。」



幼い頃から騎士に憧れ、そのために剣を振るってきた。

国を護り、王の剣となり盾となる。それだけが私の生きる意味。



『ああ、共にこの国を、……未来を守ろう。』



そんな誓いを立てたじゃないか。



『なんだよ、同期の仲だろ?ちょっとした相談くらい乗るさ。』



お人好しなやつだな。…全く、



『いつの間にか、お前が遠くに感じるよ…おめでとう。■■■。いや…■■■団長って言うべきだよな。』



単純な剣の腕では、お前に勝てた事は無かったな…最近はもっぱら…お前と剣を交わす機会なんて無かったが…。



「あぁ…煩いな。」



頭を巡るのは走馬燈のようなナニカ。消えることのない輝かしい日々。

受けた無数の傷は、精霊の力によって瞬時に癒えていく…


考える脳を無くし、観るための瞳を無くしても、その剣筋は変わらず美しい。

騎士の模範たれと、基礎を積み重ね、無数の研鑽の上で成り立つその剣は、基本の型故に隙が無い。奥義たる《魔力収束マナ・コンバージェンス》が無かろうとも、その男は十分に強い。


「…馬鹿だな、私は。何を出し惜しみしているんだ。」


「貴様の上官として…お前に与えられる物などひとつだけだと言うのに。」


それは、死を与えることだけ。

堕ちた同胞に報いるための唯一の方法。


「剣は速度だけでは無い。」


首無し騎士(デュラハン)の、力が乗り切っていない高速の斬撃を弾き飛ばす。


「まず(いち)。」


続く一閃で浅くではあるが胸部を斬り裂かれ、首無し騎士(デュラハン)が数歩後退する。


「剣とは力では無い。」


怒ったらしきソレの、両手による振り下ろしを半歩で避け、腕を切り裂く。


「は…不死者(アンデット)の生命力とは凄まじいな。」


構えだけは一流な、眼の前のソレは敵足り得ない。能無しのためにわざわざ精霊を使うことも無いだろう。


「─力と速度で、剣を騙ること無かれ。」



『愚カダ…』


それが誰の声なのか、もはや喉笛だけがヒューヒューと音を鳴らすだけの目前の化け物……いや、そんなハズは……


『死シテ尚モ剣ニ縋ル我ニ、説教ヲ垂レル等、愚ノ骨頂…』


低く、ドロドロとした声が響く。それは恨みが籠もったような怨嗟の声…それはその騎士が最も仲を深めた、青い日々の亡霊…それが…


『主無キ首無シノ我ニ…騎士ノ誇リ等…面白クモナイ冗談ダ…』


最も語ってほしくない事をのたまう。


『滅ベ…正義ヲ騙ル騎士ヨ…』


それは正しく化け物(モンスター)であり、決してヒトとは分り合えない醜い化け物。首無しは既に主無く、僅かな記憶の奥底にあるのは剣の腕…そして生ある者達への激しい憎悪の念。死した故に生者を襲い、死した故に生者の真似事をして殺した相手の血肉を啜る。

首無しの騎士の何たるかを、知らない程に無知では無い。


切断された首の断面から、無数の触手が伸びていく…それらそれぞれに死して動かぬ骸の頭蓋…


「ッ…」


『アァ…観エルゾ…ソノ歪ンダ顔モ、ナ…』


死者の眼を得た騎士は、かつて王国を支えた王の剣(第一騎士団)の片割れ。死した者の瞳を奪い、力を奪い、頭を飾る。


「あぁ…やはり、私は甘いな。」


私は多分、彼を殺せない。

ここまで来ても、未だに思い出に縋っているんだ。













あんまりにもぐちゃぐちゃの思考だ。

私は何も出来ない。

私にはなんの価値も無い。

私は貴方の役に立てない。

私は迷惑をかけてばかりだ。


背が低く、歩幅の短い私は、仕えるべき主に担がれて揺られるぐらぐらする視界の中で、痛々しく歪んだ傷口が目に入る。【錬成(アルケミー)】のスキルで潰して止血したソコには、本来であれば白き竜のような、清らかで白く美しい腕が生えていた。


ぷらぷらと揺れる両の手は、火傷の痕さえあれど、五体満足と言える。私を助けるために負った癒えない傷。永遠に解けない呪い。



「南様……」



答えなんて分かっている。分かり切っている。でも、これは最後の抵抗。この、底無しの良い人…私の唯一の主人。だから、確認したかった。



「…今更、私のこと見捨てませんよね?」



こんな脅しみたいな言葉をこの人に使うなんて赦されるべきじゃ無いと思う。だからどっちに転んでも、私は……



「は?今更見捨てるかよ…腹は括ってる。安心して担がれてろ。…まぁ、今まさに仲良く死にそうだけどな。」



この先、多分使うことは無いって……思ってたんだ。



「うぅ……一回だけ、一回だけはどうにかしてみせますから!あとはなんとかして下さい!」



だってこれを使ってしまったら否が応でも、私の罪を認めてしまうことになる。



「『始まりの火(イフリート)よ…』」



右腕に纏った包帯という名の封印は解かれ、私の醜い火傷が晒される。しかしそんな事はどうだって良い。今、この時使えれば良いんだ。

火を纏う。私の器では抑えきれない程の火を…。


「『放て…』」


全てを消し去る破滅の光は、私の母を焼いたように、全てを焼き尽くす無限の炎に阻まれる。服が燃え、髪が燃え、肉が焼ける臭いを嗅ぐより前に炭化し、ボロボロとなった女性の姿を幻視する…。

それを実際に見た記憶は無くとも……いや、本当は覚えている。眼の前で踊るように死んだ母を……。


病的に熱くなる身体と怠さの中で、私の意識は落ちていく……多分またあの悪夢を見るんだろう。だから……



「ありがとう、ウルナ……あとは休んでろ。」



心地良い耳障りの声……でも、黒い炭の腕は私を離してはくれない……でもこの地獄でも、その言葉が…それだけが救いになると思うから………。


















「…あ、れ……?」


潰れたときみたいに、肺に空気が入らない。

空咳のときより酷いドロッとした咳に大量の血が混ざる。


「ぁ……は……っ…は………」


どうにか呼吸をするために、まるで笑い声みたいな呼吸が漏れる。


「よーやく、ここまでこぎつけたな。」


磔にされたみたいに、その場に倒れることすら出来ない。血を運べなくなった心臓が悲鳴を上げ、手足をバタつかせることすら出来なくなる。


おかしい。今、俺は……ウルナのお陰で、死の淵から脱したハズだ。優輝も、力を使い果たしたのか、あそこでへばってる…。あとは、気絶したウルナを抱えて逃げるだけ……そう。それで大団円のハズだろ。


─ド


胸を貫いた剣が手放され、俺の身体はロクに受け身も取れずに床に打ち付けられる。


「しかし…まさか勇者けしかけて生きてるとはなぁ…?驚きだ。」


「このガキがその秘密か…?」


「ッやめ、ろ………!」


大量の血を吐き出しながら言ったセリフで、ソイツの動きは止まる。


「……ま、いーか。」


視界が暗み、耳も聞こえなくなってきた……、直感的に、あぁ、俺はここで死ぬんだな、と思った。だってそうだろ?普通に考えて…ここから生存出来るほどに、人間ってのは強く作られてない。

傷口を塞いでも、これだけ血を喪ったらもう無理だ。


無様だな……俺。


左腕を失い、肩も抉れた。最後には胸を刺し抜かれて終わり。召喚された最初は自分がそうであると信じて止まず、浮かれてたよな…どこが主人公だ。


「……お前……誰だよ」


もしも俺の物語がミステリーなら、俺を殺したやつのヒントくらい…残しとくべきだろ?


「俺は、【罪の魔王】スロウ………。安心しろ、もうここでやることは終わった。」


は…最後にやったことが、俺を殺すことだとさ…なんて暇な魔王サマだよ。魔王ならそこに転がってる勇者殺しとけ…クソが。


あー、でも……


「……ルナは、守り切った……ん、だな……」


あぁ、良くやったよ…俺は。


「…ゴフ」


最後に、どろりとした血の塊を吐き出した。それが、多分俺の命だった。

たったの17歳。何も残せず、何も成せず……(小鳥遊 南)は死んだ。

って感じですね。

主人公は死にました。

でもまだ終わりません。

メインヒロインすらまだ登場させてないので終われません。


タイトルを変更しました。

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