12 叫
あ
王女様の生誕祭も終わり、貴族は殆ど領地に戻り、他国の王侯貴族もほとんど自国に戻っていったこの頃…
俺はベッドの上でゴロゴロしていた。
「どう?結構やばくね。」
「はいはい、なら私もこんな感じかしらね。」
「私はこうかな~。」
俺の部屋には現在、野乃葉と麗が居るのだが、やっているのは俺がお試しに木くずから作り出した積み木の玩具だ。色んな形を作ったので、これを崩さずに一人ずつ積んでいくというクソゲー。
定価800円くらいで売れそうじゃね?
「んじゃ…行くぞ!」
_がしゃっ…
積み木は俺が触れた瞬間に跡形もなく無く崩れ去り、虚しい音が響いた。
「南の負けね。これで私の勝ち決定じゃない?」
「いや待つんだ!まだ行けるから!」
俺がそう告げると崩れた積み木が元に戻り、因果は逆転し、俺は何もやってないという事になる。これが錬金術師の特権だ。質量が=であれば形を変えられる最強能力!
「あー、みなみんズルくない?」
「ねえ、こんなことにスキル使って楽しいわけ?」
「……いや、全然。」
さすがにいたたまれなくなったので、俺は自分で積み木を崩す。
「なんというか…暇よね、やっぱり。」
「まぁ暇なのは良いことだろ。」
俺たちはほとんどニートのような生活をしているが、別に好きでやってるわけじゃ無い。あの祝祭の時、どうやら優輝が聖剣召喚ショーをやったらしく、結果的に国内外に勇者が誰かというのが伝わってしまった。
まぁ、俺たちは名ばかりの勇者って訳で、大半の仕事が優輝に集中してる。仕事とは言っても、巨大な化け物をバッタバッタと薙ぎ倒すなんて事はして無くて、取り敢えず民衆にも勇者という存在を知らせる為に軽い物ばかり。
「そう言えばさ、みなみんって貴族とか王様に知り合いって居る?私は記憶無いけど、麗ちゃんがみなみんの居場所聞かれたんだって。」
「あのパーティーの時だろ?…ウルナのパパになら会ったし…あとは王女様にも会ったが……?」
「相手は男性だったけど、肌の色とか髪の色からしてウルナさんとは似ても似つかなかったわ。長身で褐色肌、そして長い金髪を後ろで纏めてた、こんな感じで。」
自分の髪を手で纏め、ポニテにする麗を見ながら考えるが、少なくともその情報に当てはまる人物の知り合いは居ない。
「そんなやつ知らないし、不審者じゃね?何の用事か、伝言くらい無かったのか?」
「無かったわ。居場所は分からないって言ったらすぐ退散していったし。」
顔も知らない人物だが、俺はそいつを不審者認定する。だって誰か知らねえし。本当に用があれば伝言くらい頼むだろ。
まぁ、たぶん他国の下級貴族だろ。優輝に顔を売りたかったが無理だったからニート勇者の俺に……ん?それなら麗たちでも別に良いよな?
やっぱ顔か?俺の顔が良いからか!?
「南様、そのお顔はばかばかしい事を考えている時のお顔ですね。」
お茶のお代わりを持ってきたウルナにソレを言われ、俺は黙るしか選択肢が無かった。
「ウルナ、これ何ティー?」
「レモンティーですが。」
「超おいしい。最高だよ、また腕上げた?」
「そちらを気に入ったんですか?特別な入れ方はして無いですけど。」
訓練やらなんやらで疲れていたからか、この酸味がおいしく感じる。
まぁ、その訓練の成果を発揮する場所が何処にも無いし、俺自身が大した能力も無い。魔法に関してもほとんど独学だし、なかなか身に付いてるって感じがしない。
「ないない尽くしだな。」
結局、この世界は自分の居場所じゃ無いとつくづく感じる。優輝なんかは割と調子乗ってるが、結局のところスペック高いから順応してるし、ほとんどのクラスメイトは明確に強い能力を活かしていけるだろう。
『元の世界に帰りたい』…そんな言葉は、俺だけが思ってるわけじゃ無いだろう。みんな必死にこの世界で生きることで、それを思い出さないようにしてるだけ。
いっそのこと、これが全部夢なんだとしたら…それはそれで良い気がしてきた。
「なんて、馬鹿なお考えは止すか、俺こそ夢から覚めろよ。」
窓際に立ち、俺が散らかした本を軽く掃除するウルナの姿が月に重なる。もはや見慣れてしまったが、女の子が四六時中俺の世話をしてくれるとかマジで天国だろ。
「…いつの間にか…専属だしな。」
「なぁウルナ…」
「はい。何でしょうか?」
_ぁ
窓の外、巨大な瞳と眼が合った。爬虫類のような瞳孔を持つそれは、窓のサイズから考えてみると、容易にこの部屋を破壊し…いやなんならこの城にもダメージを与えられるだろう。
「伏せろ!!!」
_ッ!!!!!!!!!!
咄嗟に伏せたウルナに覆い被さり、直後ー凄まじい破裂音が響き、部屋中の壁が弾け飛び、ガラスが割れ、天井にヒビが入る。
一拍遅れ、本棚の上部分が斜めにゆっくりとスライドしながら落ち、まるで剣で薙ぎ払われたように、部屋に巨大な裂傷が出現した。
「何だよコイツ……ッウルナ、逃げるぞ!」
_
ウルナの腕を掴もうとした左手が、なぜが空を切る………
血の臭いが充満する部屋には、血塗れで怯える少女………
「み、…南、さ、ま…」
平穏な日々など、生温く、それはただの一時の夢でしか無い。
血溜まりの先には、嫌に綺麗な赤い断面を晒す誰かの左の腕がある。
心臓の音が煩いくらいに耳に響く……
「ぁ………ああああああああああああああああ!!!!」
一拍遅れ、耐え難い現実が俺を襲った。
喪った感覚で、もう二度と感じることの無い痛みが。
異変は唐突だった。
「くぁ…、眠っ。」
「おい仕事だぞ、もう少しちゃんとやれ。」
「眠いモンは眠いだろ。」
王城を警備する夜の番。スキルや魔法といった超常がありふれた世界に置いて、その任は何よりも重視される。現に彼らは夜の闇を物ともしない特殊なスキルにより、熱や音などから侵入者を感知出来る。
それに今日は王国最強の竜騎士も警備に当たっている。全てに置いて万全であり、ここに襲撃を仕掛ける馬鹿などそうそう居ないだろう……。
「ん…?」
「どうした?」
「いや…なんか変な音が聞こえて………?」
「音?俺のスキルには何の反応も………」
_ぐしゃ
遙か上空から降った何かによって、男の顔が砕けて潰れ、その脳漿を周囲に撒き散らす。
「ッあ……敵_」
「ばーか。」
音を察知するスキルも、結局のところ音を完全に消してしまえば問題は無い。六つに分かれた男の身体はゆっくりとズレて崩れ落ちる。
「あー、おもしれえな……」
警備の騎士二人を惨殺した存在は、一度指を鳴らす……
_ッ!!!
濃度の高いな魔力が飛散し、王城全体に響き渡る音が、ようやく露わになる。既に的は内部まで侵入し、城を喰らい尽くす為に蠢く。騎士を殺し、メイドを殺し、そして……
「勇者は……どこだ?」
無数の化け物を引き連れて、絶対強者が現れた。
最初にこの物語を創るときに、最初に思い描いた場面をようやく書けます。
私の趣味全開です。




