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11 笑い話をしよう

なんか話の進み方が急ぎ足に見えるかも知れません。

「昔からなんだが…俺は朝起きるのが苦手で、毎度毎度妹に起こして貰ってるんだ。」


しかし事件が起きたのは妹が修学旅行で居なかった時…何時ものように聖域(ベッド)からなかなか出られなかった俺なんだが…誰かが起こしに来て…


「いつも通り、日向…ああ、俺の妹の名前ね、日向が起こしに来たのかと思って渋ってたらさ…」


『日向もうちょっと寝かせて……』


『ふふ…あはは』


『ッは』


『ぷっ…』


『ん″!!?』


いつもと違うと思って俺は聖域(ベッド)から飛び起きた。まあ寝起きでイカれた頭じゃあんまり状況は理解出来なかったものの、なんか見覚えがある顔が3つあった。


「あれは恥ずかった…妹に甘える兄の姿を幼馴染み全員に見られるとかさすがに死ねるだろ。…って話なんだが、どうだ?」



「…え?」


ふむ、当然の反応だな。そりゃそうだ。自分の話したくない過去を話した後に、俺がこんな訳分からん話をし出したんだから。狂ったとか思われそうだが、俺は決して狂ってない。


「俺が引き合いに出せる重めの話題なんか何も無いからな。恥ずかしい笑い話だ。」


「悪いが、俺は女の子の重い話題に対して同情なんて出来ないし、慰めるのも得意じゃ無い。なんたって、面倒だからな!」


『大変だったね』とか『大丈夫?』とか誰でも言える慰めは、俺じゃなくて心の優しい誰かにやって貰えば良い。


「でも、1個だけ言っといてやる!」


「穢れた血だとか、んなもん関係無い。ウルナはどこにでも居る、面倒くさい話を持ってる普通の女の子だろ。」


ありふれてるだろ、そんなこと。面倒くさい過去持ってる女の子なら、俺のクラスメイトにも居る。昼ドラばりのドロ沼で両親が離婚して3回苗字変わったやつから、厨二病拗らせすぎて昔の話をした途端にもだえ苦しむやつも居るぞ。


「まぁ、俺が言いたかったことはこれだけだな。」


「……南様絶対女性にモテませんよね?」


「………うん。」









豪華なパーティーの会場には、様々な存在が居る。パーティーという華やかな会場とはかけ離れた存在、例えば聖職者などである。


「ビスマス、これは何かしら?」


「それはワインですので、セラ様はこちらにあるケーキとジュースにして下さい。」


「へー、ワインってどんな味なのかしら?」


「とても苦いのでセラ様にはお勧め出来かねますね。」


眼帯によって両眼を塞いだ少女が、会場のことなど気にしないようにケーキを食べる。見る人が見れば、それが誰かなど一目で分かる。


「お久しぶりです、【壁視の聖女(へきしのせいじょ)】セラ様。覚えておいででしょうか、リアム・ファルタス・アルカナムです。」


「その声は確かにリアム殿下だね。お久しぶりですー。」


「ビスマス殿も、変わり無いようで。」


「ええ。おかげさまで。」


【壁視の聖女】セラ…それは世に『天使教』の名で知られる実在する神を崇める宗教に属する聖女の一人であり、齢10歳にして聖女の冠を与えられた少女である。

壁視の名の通り、その瞳には何も映さない。代わりとして聖女としての権能により、先の未来を見る事が出来るのだという。


「…、セラ様、ひとつお聞きしたいことがございます。」


ビスマスの感知は、リアムが魔法道具(マジックアイテム)を発動したことを嗅ぎ取る…とはいえそれは、貴族や王族、上位の地位に至るなら誰でも用いる類いの物…鶏の卵くらいのサイズのそれは、狭い範囲の音が外に漏れないようにする『雑音域(ノイズ・エリア)』である。


「あのお話ですか?結果は伝えたとおりです。何も変わってはいませんよう。」


ケーキを食べながらそう言う聖女セラだが、国家に関わる問題である以上、リアムもここで退くことは出来ない。


「我が国の滅びは…避けられないと?」


「んー、正確にはですけど、滅びの未来を見たわけじゃ無いですよ?竜の襲来、そして王城の崩壊、最後に王女様の死。私が見たのはこれで全てです。次期国王であるリアム殿下の死は見えて無いですし…国としては存続するのではないかしら?」


「それは……ッ」


確かに、その記述だけを見れば()()()()()とは言えないかも知れない。しかし王城の崩壊を許し、己の妹たるアイリスが死に、竜によって蹂躙された王国が、安泰などと言えるのだろうか。


「民の安寧が守られず……滅びでは無いと言えるのでしょうか……。」


小さく溢した未だ王で無い者(リアム)の独白に、聖女セラは少しの沈黙の後に口を開く……


「全ては、我らが神。【広き翼】のシセラフ様の御心のままに。」


それは、正しく『天使教』の教えに沿った答えであり、彼女たちの宗教観を表す物だった。

事実、天使シセラフが国の危機を救ったという話は幾つもある。しかし、同時に天使は平等では無い。一身で全ての災いを退ける事など出来はしない。


だからこそ、広いながらも、全てには届かない…【広き翼】の神、天使シセラフなのだ。


「あら?もうよろしいんですか。」


雑音域(ノイズ・エリア)魔法道具(マジックアイテム)を解除する。


「ええ、お時間を取ってしまい申し訳ありませんでした。」


「構いませんとも。」


聖女セラはニコリと笑う。


「眼は無く、全てを見ることは叶わずとも、あらゆる声に耳を傾け、世を知り、あなたを知る。それが【壁視の聖女】である私の務めですから。」


そう、務めだ。自分も、自分の務めを果たそう。王子として、次期国王として……。


「どうだった?」


「やはりこちらでどうにかするしか無い。シリウス…その時は、頼んだぞ。」


「無論。兄貴は兄貴の仕事をしてくれ…俺は、俺の務めを果たすとするよ。」


「まぁその前に、兄としての務めもありそうだな。」


リアムが指を指した先には、アイリスが中心となって剣呑な雰囲気を出す者たちを諫めている様子があった。



「ひとまず、お二方とも落ち着いて下さい、ね?」


「我らは落ち着いている、怒りも無い。」


「いや、僕に魔法を使ったのは分かってる。何の魔法を使ったのかだけ教えて欲しいだけだ。」


方や勇者の中で最も戦闘力の高い北瀬優輝様、もう片方を見たとき、私はやや頭の痛い話だと思った…


「勇者様、竜の神官殿…何かありましたでしょうか?」


竜の神官、それは竜公国にて神事を行う者たちであり、竜の神を信仰の対象とする『竜の子』の教えを守る宗教集団だ。

竜の神官特有の面によって口元を隠す初老の男は、特に焦るでも怒るでも無く淡々と答える。


「世を護る等と大見得を切れるだけの実力が果たしてあるのか、それを我らは識りたかっただけだ。他意は無いと識れ。」


その言葉を聞き、私は頭を更に抱えた。神道を進む者の中には、一種の盲信によって自身を神に近い存在であると信じてしまう者も居る。いわば自己愛(己自身の信仰)であり、最も奇妙で、ありふれた価値観だ。


老いた竜の神官の瞳には、未だに神より借り受けた奇跡たる神聖魔法、〈竜看破(ドラゴン・センス)〉の紅い光が宿っている。効果は我が国にある特異魔法宝具(アーティファクト)である蒼き正眼(ル・ラトの蒼い瞳)簡易看破術式(シースルー)とは違い、真なる意味での看破だ。それは本質を見抜く瞳であり、そこに偽りは通用しない。


「……勇者であることは紛うなき、さりとてその勇が足りるかは些か疑問が残る。」


竜の神官は眼を瞑り、神聖魔法を解除するとそれだけ言った。


「《聖剣(インヘリテット・)召喚(ソーズ)》!」


それを見て、誰もが…竜の神官までもが息を飲む。圧倒的過ぎる物質…世界にひとつ。唯一無二の産物…それは美しく煌めき、艶やかに光る。


「何を言ってるのか僕には分かりませんが、これこそが僕が勇者に選ばれた証です。僕は自分の役目を果たしますし、誰にも負けるつもりはありません。もちろん魔王にも。」


きっぱりとそう言い切った優輝に対する反応は、大半が好意的な物だ。世界に勇者が存在する限りは、この世界は安泰なのだと、とはいえ全てが全てその反応では無い。


「なるほど、覚悟の重みを識っているという事ですな…とても青く、高い導でありますな。」


竜の神官は重く、頭を下げる。


「青き勇者殿、貴殿の芽が咲く事を我、【竜祭】アレングス・リュース・ドグラは心待ちにしております。〈竜導の祈祷(竜の導きがあるように)〉」


やや皮肉が混じっているようにも思えたが、竜の神官アレングスは共を連れ、会場を後にした。しかし、それは本当に優輝を勇者として認めた故なのか?そんな思考を奥底にしまい、リアムは普段の笑顔を作る。


「さて、祝祭もあと少しだ。皆、是非とも最後まで楽しんでいってくれ。」

主人公ちゃんとウルナちゃんの仲良し度が上がりました。

竜の神官は竜公国のドミネイト・ドラゴンを信仰してる集団……とかでは全然無くて、その仕事を補佐してるいわゆる摂政業務。そもそも国教が竜信仰だから内外的にまぁ分かりやすいってことで神官って名前になっただけだよ。





そろそろ。




7/21 一部編集

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