09 この国の成人年齢15歳?ふ~ん。
今回のあらすじ
パーティーを楽しむ。
「さて…本日は我が妹、アイリスの生誕祭に集まっていただき、父に代わって感謝を申し上げる。」
そんな口上から始まった生誕祭は、国中を巻き込んだ祭典である。『アルカナムの輝き』たる王女、アイリスを祝い、各地で輝きを表す魔法の花火が打ち上げられる。
そして幼いながらも王に列するどこか浮世離れした儚げさをもつ少女が口を開く…
「本日は、私を祝う為に多くの方々にお集まりいただき、感謝します。アルカナム王国第1王女、【輝白】のアイリス・アルマ・アルカナムと申します。」
王女様の生誕祭、そこで俺たちの事を世界に発表するとは言っても、結局当日まで王女様には会うことは無く、その情報の殆どを隠されていた。理由は何なのか色々と考えていたが、なるほどこれで理解した。
どうやらあの金髪イケメン王子様は重度のシスコンらしい。
なるほど確かにかわいい妹を独占したくなる気持ちも分かる。だがしかし、リアム王子、貴様は何も分かっちゃ無い。かわいいのは今だけだぞ。すぐに分かるだろう。無理矢理妹に叩き起こされるあの感覚を!マジでだんだん殺意湧いてくる。
でも安心しろ、もし彼氏連れてきたら全力で邪魔してやるからな。
「12歳となったこの時、ようやく皆様に公的に姿を見せることが叶いました。…本日より私は王族として皆様に相見え、自他共に認められるよう努めて参りたいと思います。」
アイリス王女がぺこりとお辞儀をし、それを皮切りとして拍手が沸き起こる。王女の生誕祭とは聞いていたが、まさか初宴会だとは思わなかった。
とはいえ聞いた話によるとこの王女様はちょくちょく城下に出て、市民とコミュニケーションを取っているらしい。そのため王女様の姿を見たこと無いのは地方の貴族とかくらい。
とはいえ王城でのパーティーが初めてとかの少年達は多分みんな虜になるだろうね。
「さて、妹の挨拶も終わり、本来であれば乾杯を行いたいが、この場を借りてひとつ、世界にとって重要な話をしたいと思う。」
会場に沈黙が落ち、直後にヒソヒソと何事かと噂する声が聞こえる。何せこの国だけでは無い『世界にとって』重要な話である。知らぬ者にとっては好奇心よりも恐怖が勝るだろう。
「『勇者の降臨』…古の時代より語られてきた眉唾物の出来事が、実際に起きた。紹介しよう。我が国の勇者であり、世界の守護者達だ。」
リアム王子達の横に並ぶように、俺たちは立つ。
陸陽高校2-B、34名。それぞれ全員が強力な能力を持つ人間兵器だ。他国の王侯貴族の居るこの状況で紹介されたことは、確かに大きな意味があるのだろう。
だからこそ、リアム王子はこう言った『世界の守護者』と。
あくまでも、この刃が向くのは、世界の守護の為であると。
だからこそ、真に警戒すべきなのは国内なのだろう。
貴族達は蛇のように、こちらを見る。それは利用する側の眼であり、こちらのことなど考えない。
俺は気を引き締め、そして……
「うめえ。」
超高級果実酒15本を飲み干した。
いや、よく考えてみて欲しい!この世界、15歳で成人なので、17歳の俺たちも酒が飲める。じゃあ飲むしか無いよね?って話だ。
そして俺がハマったのがそこそこ度数の高い果実酒。
「勇者様、少しお話をよろしいでしょうか?」
「いいよ、お酒飲みながら話しましょうか?」
等と言いながら来るやつ来るやつを全員潰した。
みんな「すみません、私はそろそろ…」とか言ってどこかに消えてった。
どうやら俺は凄まじく酒が強いらしい。とはいえ酔えない訳じゃない。確実に酔ってる感覚はあるんだが、意識はハッキリしてるし気持ち悪くもならない。ただふわふわして気持ちいいだけ。マジで最高の気分だ。
「南……お前飲み過ぎ、…だろ。」
ちなみに普段クールぶってる悠真は、丸テーブルの脚を掴んでグロッキーになってる。飲んだ量はグラスの半分。どうやら酒が合わなかったらしい。
俺以外に強かったのは麗かな?飲み慣れてるみたいに普通に味わって飲んでた。なんでも海外旅行行ったときに普通に飲んだことあるらしい。…まぁ向こうだと飲める年齢違ったりするしな。
「みなみん……気持ち悪い……たしゅけて。」
「案の定、野乃葉は弱かったか…。」
今にも吐きそうな野乃葉を連れて、有象無象を通り抜け、テラスに出る。風に当たればある程度酔いも覚めるだろ。
「あら、勇者様どうされたんですか?」
「…王女様こそ、どうしてここに?」
寂しげなテラスに居るには豪華すぎるドレスを着たアイリス王女が、小さなテーブルにちょこんと座りながらお皿に盛ったデザートを食べてる。
こう見るとあんまりにも年相応に見えてしまう。
可愛らしいお嬢様って感じ。
「中だと落ち着いて食べれませんし、お客様の相手も少し疲れてしまって…お兄様達に抜け出させて貰いました。えへへ」
ふむ、かわいい。これは天使の笑顔だわ。
なんでも叶えてあげたくなる。このあざとさは天性の物だろう。でもいずれ俺の妹の日向みたいになると思うと少し悲しくなる……妹がかわいいのって一瞬なんだよなぁ……。
「ご友人の方は大丈夫ですか?もしお辛いのなら宮廷治癒師を呼んで参りますが……」
「大丈夫です。そんなことしたら調子乗ってまたやらかすので、野乃葉にはこれくらいで良いんです。」
「うー、みなみん恨むからなー」
「ふふふ、お二人は仲良しさんなんですね。」
「幼馴染みですからね。もう10年以上の付き合いですよ。」
そう考えると、本当に面白い縁と言える。幼稚園からの幼馴染みが、今も同じ高校に通って……それでまさかの異世界でも一緒に居る。
俺の姿が変わっても、変わらずに接してくれた。
…どうやら酔いは回ってるらしい。こんな恥ずかしいこと、心でも思ったりしないのに。
「そうなんですか。私には、幼馴染みって感じの人は居ないんです。だから、少し羨ましいです。」
王族という立場故なのか、その言葉は酷く重いように感じた。その小さな身体で、どれだけの重責を背負っているのかを、俺は知らない。そしてこれからも、知ることは無いだろう。
立場が違う、生まれが違う…文字通り、世界が違うのだ。そんな少女が語る言葉は…
「そう言えば勇者様、」
「なんですか?」
「ウルナちゃんとも、仲良くしてあげて下さいね?」
そこでふと思い出す。この前ウルナさんに起きた出来事を…ウルナさんの姉であるヘレナに難癖付けられてボコられていたウルナさん……
じゃあ今、この瞬間…パーティー会場にヘレナが居ないとすればどうか?彼女が何をするかは明確だ。
「ッ…すいません、野乃葉のこと…任せても良いですか?」
「構いませんが…その心配は無さそうですよ?」
「ちょっと南、女の子化したからってののと二人きりでテラスとかさすがにヤバいでしょ。」
「……確かに、めちゃ浅はかだったわ。」
「ののも飲み過ぎ……南、私のの連れて帰るわ。」
「ああ、野乃葉は頼んだ。俺は…ちょっと野暮用済ませてくる。」
麗の反応なんて殆ど見ずに、俺はさっさとその場を去る。ウルナさんの居場所は分からないが、城内走り回ればどっかには居るだろう。
馬鹿な俺の落ち度…その尻拭いは、全部俺がすれば良い。
「これで、正式にウルナちゃんは君の物。」
ああ…少し悲しいですね。
ですが、私の周りに残る人、私を慕う人…そんな人は、居ない方が良いんです。
「だって私は_」
そこで、会場が少し騒がしくなっていることに気付く。
どうやらお休みの時間はここまでらしい。
「さて、なんの騒ぎかしら。」
アイリス(A)・アルマ(A)・アルカナム(A)王女。
!!!!!!!!!AAA!!!!!!!




