表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放聖女  作者: はるさんた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/30

第十三章 忍び寄る影


 夜の城内は静まり返り、月光が廊下を淡く照らしていた。

 ミサはイザベルと共に客室で過ごしていたが、まだ城の生活に慣れず、心は少し張り詰めていた。


 そのとき、遠くで鈍い金属音と警鐘の響きが混ざる。

 「侵入者! 捕らえろ!」


 廊下に響く兵たちの足音に、ミサは息を呑む。イザベルが脇に立ち、「落ち着いて」と囁く。

 ミサはうなずき、震える足で廊下に進む。


 中庭の影の中に、複数の人影が動いていた。

 敵国のスパイと思われる者たちが、城に忍び込んでいる。

 護衛たちは迷わず前に出て、一人ずつ的確に包囲し始める。


 突然、スパイの一人が振りかざした短剣が、ミサに向かって突き出された。

 イザベルは迷わず前に飛び出し、体で攻撃を受け止める。

 「ミサ様、危険です!」


 衝撃で体が押されるイザベルだが、彼女は一歩も引かず、護衛としての役目を全うした。

 カイルは冷静に他の侵入者の動きを観察し、素早く封じ込める。

 ダリウスもすばやく動き、仲間の隙を埋めるようにスパイを制圧した。


 その瞬間、赤い瞳を光らせたレオンハルトが駆け寄る。

 一歩でミサの前に立ち、迷わず手を伸ばして彼女の手を握った。

 その温もりに、ミサは驚きと安心が入り混じり、心の緊張が少しずつ解けていく。


「怖がるな、今はもう大丈夫だ」

 レオンハルトの低い声が夜の中で静かに響く。


 護衛たちはスパイを牢に押し込み、扉を固く閉じる。

 赤い瞳を光らせたレオンハルトは、依然としてミサの手を握り、後ろではイザベル、カイル、ダリウスが警戒の姿勢を崩さず立っている。


 ミサはその光景を静かに見つめる。

 ──私を守ってくれるのは、レオンハルト様だけじゃない。

 イザベルも、カイルも、ダリウスも、みんなが私を守ってくれている。


 ゆっくり息を整えながら、ミサは口を開いた。

「……レオンハルト様、イザベル、カイル、ダリウス……本当に、ありがとうございます」


 イザベルは微笑みを浮かべ、少し頭を下げて答える。

「ミサ様、私たちは護衛ですから。これからもずっと、側にいます」


 カイルも頷き、少し照れたように笑いながら言った。

「危険なことには、もう少し冷静になってもらわないと困りますが……無事で良かった」


 ダリウスは無言で軽く手を上げて頷き、視線を外さず周囲を確認していた。

 ミサは三人を見つめ、自然と笑みがこぼれる。

「……はい、これからも、よろしくお願いします」


 そして、握られた手を通してレオンハルトの温もりを感じながら、ミサは胸の中で小さく思った。

 ──ここには、私を守ってくれる仲間がいる。怖くない、安心していられる。


 この夜の出来事は、緊張と恐怖の中で、ミサとレオンハルト、そして護衛たちの絆を確かなものにしたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ