42 ハードな試し切り
ブックマーク300件突破しました!
ありがとうございます!
「ナガマサさん、さっきの素材ってこの奥のやつだよね?」
「そうですよ」
「なるほど」
モグラが何やら悪そうな顔をしている。
なんか嫌な予感がするぞ。
「どうしました?」
「いや、折角だから奥のMAPをちらっと覗いて剣の試し切りをしたいなと」
「さっきの素材に興味があるし俺も行ってみたいでござる」
「え、モグラさんはともかくゴロウさんは危なくないですか?」
ゴロウさんまで乗り始めた。
危ないと思うんだけど。
どう諦めさせようか悩んでると、モグラが耳を貸せとジェスチャーをするので耳を向ける。
「多分放っとくと一人で突っ込んでいくから、今一緒に連れて行って危険なのを分からせた方がいいよ」
「そういうことですか……わかりました」
それならもう仕方ない。
素材欲しさに一人で突っ込んで死なれても困る。
素材見せたのは俺だし責任もあるだろう。
この先のマップは危険度が急上昇するが、俺とタマ、おろし金がついていれば大丈夫だろう。
「じゃあ行きましょうか。その代わり、ゴロウさんはタマの側を離れないでくださいね。危険な場所なので、離れると死にますよ」
「オッケーオッケー」
ゴロウの返事は軽い。
本当に分かってるのか怪しい所だ。
でもまぁ向こうに着けばすぐ実感してくれると思う。
「タマ、ゴロウさんのこときっちり守ってくれよ。おろし金は俺の指示に従って敵の殲滅だ」
「らじゃー!」
「キュルッ!」
タマとおろし金にもきっちり念を押しておく。
寄ってくるモンスターは俺とおろし金とモグラで片づけよう。
俺は範囲攻撃が無いから、おろし金もつけておかないと、万が一撃ち漏らしたら困る。
「それじゃ行きましょうか」
こうして更に奥へと向かうことになった。
あんまり出入り口付近に固まってないといいけど。
「着きましたよ。ストーレの森04です」
「危険だって聞いてたし、オレも入口までしか来たことなかったんだよね」
「周囲の様子はあんまり変わらんね」
エリアを移動したばかりではゴロウの言うように、そこまで違いはない。
少し薄暗くなって木々が太くなり、間隔も広くなっているだけだ。
でもそれは大きいモンスターが沢山来たら囲まれやすいってことでもある。
少し進むと暗さも増すし、余計に危ない。
今は安全性を重視して、全員でパーティーを組んである。
これで同士討ちの危険はない。
「ここはアクティブモンスターだらけなんで気を付けてくださいね。来ましたよ」
説明していると羽音が聞こえてきた。
そのまま突っ込んできたソードビートルを剣で切り落とす。
「はえー!」
「ナガマサさんの動きが見えなかったんだけど……。これがさっきの剣の素材か!」
「モジャモジャ、どんどん来てるよー!」
モグラは感心してるようだ。
ゴロウは俺の動きに驚きながらも、消えていくソードビートルの死骸に興味津々だ。
タマがモンスターの接近を教えてくれる。
いつまで呑気にしてられるかな!
「モグラさんも構えてください。色々来ますよ」
「了解」
「ゴロウさんはホントに危ないので、タマから離れないでくださいね」
「勿論わかっておおう!?」
「せーふ!」
ゴロウが言い終わらない内にどこからか矢が放たれてゴロウの顔面に迫っていた。
直撃寸前でタマが掴み取って防いでくれた。
ナイスセーブ!
そこからは激しい乱戦だった。
言いだしっぺのモグラに頑張ってもらおうと、俺とおろし金は最低限しか戦わない。
武者クワガタが複数来たり、複数のクワガタ弓兵に囲まれた時だけ頑張る感じだ。
後は存分に試し切りしてもらった。
タマも、背後に控えるゴロウを狙って飛んでくる矢やソードビートルを、華麗に撃ち落として活躍していた。
時折クワガタ弓兵を狙撃して倒したりもしていた。
時々モグラのHPが少し危なくなることもあったが、すかさず≪応急手当≫で回復したり、介入したりで大事には至っていない。
≪速度増加≫は敢えて使わない。
使えば余裕になるだろうけど、そしたら危機感を持ってもらう作戦が台無しだからな。
「今日はもうこの辺りで済まさない? 強いし多いしすっごい疲れた」
「このMAPはしばらく来れる気がしない。試しに攻撃してみたけど全然無理」
しばらく戦って、モグラがギブアップした。
距離的に言えば出入り口からそんなに離れてないし、時間にしても15分くらいしか経っていない。
でもその間ほぼ戦いっぱなしだったから疲れただろう。
「じゃあ帰りましょう。エリアを移動するまで油断したらダメですよ」
「勿論。ゴロウちゃんはタイマンでも勝てないだろうし、特に気を付けてよ」
「油断なんかできる訳ないって。してなくても普通に死ねるよ」
冒険者の危険さも充分伝わったようで良かった。
帰ろう。
「それじゃあお疲れ様でした」
「お疲れモジャモジャ!」
「おつー。今日はナガマサさんのおかげで助かったよ」
「お疲れ様でした。ほんと助かりました。いい剣や素材を売って貰えたんで、これを合成して売ればお財布がサンバカーニバルですわ」
街に入ったところで挨拶をする。
時刻は16時。
今日はここで解散だ。
今日ストーレの森04で得た素材は、俺とモグラで2等分した。
くっついてただけでもらうなんてとんでもないと、ゴロウが言い張ったからだ。
なので俺もモグラも、その中からゴロウへ少し売った。
それでゴロウはご機嫌だ。
相変わらず言ってる意味がちょっとよく分からないけど。
「それじゃまたね。おつおつー」
「お疲れ様でした。暇な時は露店もやるから覗いてみてくださいな」
「それではまた」
「二人ともばいばーい!」
ゴロウとモグラも各々別の方向へ散っていく。
俺も行こうかな。
とりあえずもう夕方だしマッスル☆タケダの露店かな。
頼んであったタマの装備がもう出来てる筈だ。
受け取りに行こう。
レベルが2つほど上がってた気がするけど、処理はまた宿に戻ったらでいいや。
どんな装備になってるかな。
楽しみだ。
「タマ、これからタケダさんのところにタマの装備を受け取りに行くぞ。どんなのが出来てるか楽しみだな」
「おー! 超楽しみ! かっこよくてかわいくて、ひらひら~、しゅばっ! って感じになってるかな!?」
「多分なってるんじゃないかな」
「やったー!」
タマの言葉も中々分からないけど、楽しみにしてるのは確かだ。
気に入る出来だといいな。




