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閑話 混沌へ挑む者達

本日二回目の更新です


 某日、22時に差し掛かる頃。

 とあるゲーム内で、とある決戦の火蓋が切って落とされようとしていた。


「もうすぐ時間だ! ゲーム内時刻で8時丁度に作戦を結構する! 準備はいいか!!」

「「「おお!!」」」


 バーリルという村の入り口の前には、大勢のプレイヤーが押し寄せていた、

 その数、なんと二千弱。

 これだけのプレイヤーが集まった、その目的。

 それはとあるキャラクターの討伐であった。


 ここに集った一般プレイヤー達にとって、そのキャラクターはまさに悪魔と呼ぶに相応しい所業を積み重ねていた。


 現在、このゲーム内ではサービス開始以降初めてのイベントが開催中である。

 その内容は、端的に言ってしまえばNPCの討伐。

 それを邪魔し、一般プレイヤー達を一方的に狩っていたのが件のキャラクターであり、今回の標的というわけだ。


 その強さは、サービス開始以降必要最低限以外はログアウトせずに過ごしているネットゲーム廃人ですら、瞬殺されてしまう程だという。

 恐らく運営の用意したお邪魔キャラであるそれを討伐する為、一部の者がユーザーズイベントとして声を掛けたところ、これだけの人数が集まった。


「作戦開始!!」


 時間になると同時に、代表の男が高らかに叫ぶ。

 その瞬間を待ち構えていたプレイヤー達は、怒涛の勢いで駆けだした。

 向かう先は、村の奥に位置する学校。

 例のキャラクターが根城にしているという情報が寄せられており、全員がそこを目指す。

 

「あそこだ! あいつもいるぞ!」


 先頭を走っていた男の視界に、ある意味懐かしい学校のようなものが映った。

 黄色い地面が広がったグラウンド。その向こうにある校舎と、丁度間に佇む一人の少女。


 Agiにステータスの多くを割り振った者達が、全速力で駆けぬける。

 校門に辿り着き、そして越えたところで変化があった。


「な、なんだあれは!」

「あれは、樹か……!?」


 目標の立つ場所から、何かが姿を現した。

 凄まじい勢いで地面を突き破り、少女を天へと運ぶかの如くぐんぐん伸びる。

 全景が確認出来る頃には、先頭グループの全員が足を止めていた。


「樹じゃない! ――あれは、イカだ!!」


 そこに現れたのは、巨大なイカだった。

 樹だと思ったものは烏賊の頭部を覆う貝の中ほどから、貝を突き破るように生えたものだった。

 青々とした葉が茂り、明らかに巨大な果物をいくつもつけている。


「俺知ってるぞ! あれは確か、この村の畑にいたイカだ!」

「聞いたことはある。ということはまさか……!」


 校門を越えた辺りで先頭グループが怯んでいる隙に、更なる変化があった。

 イカの両脇を守るように、八本の足が。

 正面で迎え撃つかのように二本の触腕が、地面を突き破り生えて来たのだ。


 朝日を浴びてキラキラと光るその極太の触手は、その存在をアピールするかのように緩やかに揺れる。

 本体のサイズに合わせてだろうか、その足も充分な太さと長さがある。

 根本の一番太い箇所は直径一メートル弱で、長さは五メートルを越えている。

 

「くっ、怯むな! 行くぞ!」

「そうだ! 俺達Agi型がこのまま目標を達成してやるんだ!」


 ここまで怯んでいた一般プレイヤー達も、ほとんどはトッププレイヤーである。

 すぐに体勢を立て直し、障害を排除するべく走り出す。

 しかし、まだ序の口に過ぎなかった。


 イカの頭部に成った果物が、次々に落下を開始した。

 宝石のように輝く果物達は、空中で逞しい四肢が生えたかと思うと、そのまま華麗な着地を見せた。

 そして、次なる果物の邪魔にならないよう、迅速に駆けだす。

 その逞しい脚で地面を蹴り、そして一般プレイヤー達へと蹴りを食らわせるのだ。


「ぐはぁ!?」

「こいつ!」


 一人のプレイヤーが、腹筋がバキバキに割れたイチゴのような果物の正拳突きをまともに食らい、吹き飛んだ。

 隣にいた他のプレイヤーが剣で切りかかるが、手刀で華麗にいなされる。


 この果物達は大きさが一メートル程あり、脚も含めた身長は二メートルいかないくらいである。

 よく見るとどの果物も見事な筋肉を持っているのだが、宝石のように光を乱反射する為分かりにくい。

 果物達は誰もが修行者であり、迎え撃つ者である。

 鍛え上げた技と肉体を試す為、何時でも挑戦者を待っている。


「もう始まってやがる!」

「なんだこいつら!?」


 宝石果物細マッチョ達と一般プレイヤーの戦闘グループが激突し、すぐのことだ。

 ついに本隊が到着した。

 総勢二千近くにもなるプレイヤーが揃えば、果物達もすぐに殲滅出来る。

 プレイヤー達は誰もがそう考えていた。


「ちょっと待て! 向こうにも何か生えてきたぞ!」

「敵の増援か!?」


 この学校の敷地は、正面から見て横に長い。

 校門から校舎に向かうとして、右側に大きくスペースがとってあるのだ。

 そして今、その部分に、水晶で出来た城が現れた。


 頂上付近の突き出した部分。

 バルコニーに相当する場所に立つのは、宝石の女王。


『今こそ、我が騎士団の力を見せる時! 全員、突撃!』


 女王は高らかに謳う。

 それに呼応するように城門が開き、兵士達が溢れ出していく。


「総力戦だ! 行くぞ!」


 プレイヤー側も、代表が負けじと吠える。

 全戦力が今まさに、正面からぶつかり合う!



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― 新着の感想 ―
[一言] 何処にでも頭の悪い奴はいるけどリアルでは課金させるしか脳が無い出来損ないの馬鹿が多いよな。
2020/01/09 18:54 退会済み
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