328
今日は決戦がある。
イベントの少し前に仲良くなった、ゼノという一般プレイヤーが教えてくれた。
事の始まりは、俺達が積極的にβNPCの保護に乗り出したことだろう。
活動の内容はいくつかある。
一般プレイヤーは見かけたら倒す。
今まで戦闘が出来ず、レベルも戦闘力が低い人達を鍛えて放流する。
それでも戦闘が出来ない、したくない人は学校で保護して、タマのサポートでノルマを達成させる。
その中でもタマによるノルマクリアが、一般プレイヤー達の話題になったらしい。
その辺りは詳しく聞いていない。
タマに一任してたから把握してるわけじゃないが、手加減術でHPを1にして、状態異常で自由を奪うくらいしか方法も思いつかない。
大した騒ぎじゃないだろう。
と思ったんだが、一般プレイヤー的にはそうじゃなかったようだ。
彼らは色々と調べ上げ、タマがこの村に住んでいることを特定した。
そして我らが≪モジャモジャ大学校≫をβNPCが多数集まっている拠点として認識したわけだ。
そうなれば、討伐するという声があがるまでに時間はかからなかったそうだ。
今日の午前8時頃に奴らは攻めてくる。
朝早くに元気だなと思ったが、現実世界だと平日の22時らしい。
普通によくある時間帯だった。
今日俺はここで、一般プレイヤー達を迎え撃つ。
負けることはないと思うが、万が一を考えてβNPCは戦闘に参加させるつもりはない。
それに関しては俺に秘策がある。
いざという時にはタマが暴れればどうにかなるだろうけど、それは今回なるべく頼らないで済ましたいからな。
「それじゃあ伊達さん、手筈通りお願いします」
「おう、任せとけ」
打ち合わせを済ませ、作戦司令室へと移動する。
そこには既に、タマ、ミルキー、葵が待機していた。
「待たせちゃったかな」
「いえ、大丈夫ですよ。打ち合わせはどうでした?」
「うん、ばっちりだよ。そっちはどう?」
「こちらも予定通り進んでますね。βNPCの皆さんには、室内訓練場にて待機してもらっています」
「了解、ありがとう」
今日はお祭り騒ぎということで、知り合いに声をかけてもらって沢山のβNPC達を呼んでいる。
さっき説明したが、戦力として来てもらったわけではない。
メインは特にノルマがつらくなってきた人達だ。
せっかく沢山の一般プレイヤーが来るんだから、利用しないのは勿体無い。
いい機会だし、そのまま滞在してもらえれば鍛えることが出来る。
そうしたら一石二鳥でいいこと尽くめの筈だ。
そうこうしてる内に、8時になった。
今頃、村の入り口から一般プレイヤー達が雪崩れ込んで来てる筈だ。
参加人数が大規模になりそうで、待ち合わせ場所は村の前のフィールドなんだそうだ。
これも、ゼノから教えてもらった情報だ。
一般プレイヤーに仲の良い友達がいて、本当に助かった。
後でしっかりとお礼をしないといけないな。
さて、そろそろ先頭がこっちに到着する頃だ。
作戦司令室はその名の通り、作戦を考えたり指令を出す作戦司令の部屋だ。
入ってすぐに大きなテーブルが置いてあり、正面の壁には大きなモニターが三つと、両側の壁にも二つずつ設置してある。
カメラさえ設置すれば学校の好きな場所を映すことが出来る為、戦場にいなくても状況が把握出来る優れものだ。
今は、校庭が色々な位置と角度で映し出されている。
「それじゃあタマ、現場の指揮は任せたぞ」
「あいあい!」
隣にいるタマに声を掛けると、元気な返事をくれた。
それとシンクロするように、モニターに映るタマも元気よく両手を上げている。
今回の戦闘は俺達βNPCは参加しない。
しかしそうすると、現場を指揮出来る人が誰もいなくなってしまう。
その為、タマの分身体にお願いした訳だ。
オリジナルタマと意思の共有が出来るから、俺達の指示も即座に伝わる上に、戦闘力も高い。
完璧な布陣だ。
ちなみに、このタマには今回の戦闘の指揮官ということで、他のタマ達よりも豪華な鎧を用意した。
その名も≪聖少女の鎧―模倣―≫。
タケダに作ってもらった鎧を真似して俺が作ったものだ。
似てはいるが、細かい造形の部分がまだまだ荒い。
イベントが終わったら弟子入りするのもいいかもしれないな。




