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お待たせしておりましたが、本日より更新再開します!

人気投票は終了しました。詳しくは活動報告をご覧ください。

ご参加、ありがとうございました。


 出発の前の一言が求められている。正直、人前で話すのは得意じゃない。

 最近機会は多かったけどそのくらいで慣れるまではいかなかった。


 皆の前に立つと、視線が集まる。


 こういう真面目な空気も苦手なんだよなぁ。

 時間も勿体ないし、手短に済ませよう。


「伝えたいことはさっき、教室でお伝えしました。だからまたここで、生きて会いましょう。健闘を祈ります」


 軽く頭を下げると、拍手の音が鳴り始めた。

 みんな優しい。タマも楽しそうにバッカンバッカン手を打ち鳴らしている。

 あれは拍手というよりも、音響兵器みたいだ。ミルキーが止めてくれたお陰ですぐに収まった。


「それじゃあ出発の時間です。心の準備が出来たグループからこっちへ並んでください。タマ、出番だぞ」

「あいあい!」


 いよいよ旅立ちの瞬間だ。

 みんなを世界各地にばら撒く。一般プレイヤーを効率良く狩る為には、固まっているのは良くないからな。


 タマが分裂を始めた。その数は多分200人。

 オリジナルのタマはタケダ力作の鎧を装備しているが、他の分身体は初期装備のままだ。

 俺が今全員分を用意してもいいんだけど、あえてしない。


「ナガマサさん、準備出来たみたいだよ」

「はい、ありがとうございます」


 モグラに言われて、タマ達を眺めていた視線を戻す。

 真っ先にやって来たのは、†紅の牙†のパーティーだった。

 初めて会った時は色々あったけど、今では少しぶっきらぼうなだけのいい奴だ。少しだけ、未だに怯えられているような気がするのは、きっと気のせいだ。


 正面に立った紅は、真っ直ぐ俺を見つめてくる。


「今まで、お世話になりました」


 お礼の言葉の直後、深く頭を下げた。

 それにならって、彼のパーティーメンバーの女の子達も頭を下げる。


「気にしなくてもいいですよ。これも俺が勝手にやったことなんですから」

「それでも、俺達を鍛えてくれたのは間違いないので。ケジメみたいなものだと思ってください」

「そっか。分かりました」


 頭を上げた紅は、きっぱりと断言した。

 初めて会った頃と比べると、やっぱりかなり変わった。勿論良い意味でだ。

 今の紅は立派なリーダーだ。


「それで、どうやって俺達を他の場所へ運ぶんですか? 転送系のスキルや魔法でも使えるとか?」

「あれ、言ってなかったっけ」

「聞いてないですね」

「あー、すみません」

「ちなみに、オレ達も聞いてないよ。何となく察してるけど」


 どうやって皆を移動させるか、説明するのを忘れていたようだ。

 モグラも聞いてないということは、多分誰にも言ってない。

 伝えてたと思い込んでた。特に支障が無くて良かった。

 改めて説明しておこう。


「皆は、タマ達に運んでもらいます」

「「「「「いえーい!」」」」

「皆を運んで行ったタマ達にはそのまま側にいてもらうので、イベントが終わるまで一緒に過ごして下さい。一般プレイヤー狩りの役に立てる筈です」

「「「「「頑張るぞー!」」」」」

 

 俺が言い終わる毎にタマ達が盛り上がる。

 流石にこの人数がはしゃぐと、かなりの迫力だ。


 皆を運んで行ったタマの内一人には、そのままそれぞれのパーティーと行動を共にしてもらう。

 タマは強い。俺の知る限りでは間違いなく最強の相棒だ。それは200人に分裂したところで変わらない。

 しかも手加減術が使えるから、一般プレイヤーを間違えて仕留めることもなく、HP1まで減らすことが出来る。


 これが俺の保険だ。

 この学校で鍛えられた生徒達も強くなった。それは断言できる。

 だけど万が一が無いとは限らない。

 死んだら終わりのこの世界で、運営は信用出来ない。どれだけ備えておいてもやり過ぎなんてことはないだろう。


 無駄になったら、つまりは何も起きなかったということ。

 それはとても喜ばしいことだ。


 分身タマ達に装備を与えないのも、皆に預けるからだ。

 各自で装備を用意して自由に着せ替えた方がきっと愛着も湧くだろう。

 あんなに可愛いんだから、間違いない。

 ちなみに、変な事をしたらボコボコにするようにミルキーが言い聞かせていた。

 いないと思うけどね。


 以上のことを説明した。

 紅に視線を戻すと、死にそうな顔になっていた。


「大丈夫ですか?」

「あっ、いや……、はい、大丈夫、です」


 笑顔を浮かべているが、明らかに無理をしている。

 でもまあ、大丈夫と言ってるならそういうことにしておこう。


「それじゃあタマ、頼んだ」

「「あいあい!」」

「ちょっ、待っ――!?」


 俺の言葉を聞いたタマ二人は、素早い動きで紅とパーティーメンバーの女の子を小脇に抱えたかと思った瞬間には姿を消した。

 瞬間移動も併用して大空を駆けて行ったんだろう。

 

 何か言いかけてたけど、この世界で舌を噛むことってあるんだろうか。

 試しに噛んでみたが、村の中だからか特にダメージは発生しなかった。


 そんな調子で、皆は旅立って行った。

 タマも側に付いてるし、きっと再会出来る。俺はそう信じている。


 この場に残ったのは俺、タマ、ミルキー、葵、シュシュだけだ。

 俺達はこの村に家があるから、周辺で一般プレイヤーを狩って過ごす。


 シュシュは、ゼノが迎えに来るまで学校で待たせて欲しいというので了承した。

 石華もいるここなら話相手にも困らないだろうし。


「皆さん、行っちゃいましたね」

「そうだね」

「無事に会えますよね」


 隣に居たミルキーが、ポツリと漏らした。

 やっぱり、どこか不安なようだ。気持ちは分かる。

 でも、不安にさせない為にはっきりと断言しておこう。


「勿論。皆強くなったし、タマもついてるんだから大丈夫だよ」

「……そうですね。すみません、変なことを言ってしまって」

「謝らなくていいよ。俺達も張り切ってプレイヤーを狩ろう」

「そうですね、頑張りましょう!」

「私も、頑張る……!」

「みんなでがんばろー!」


 笑顔を向けると、ミルキーもすぐに元気を取り戻した。

 葵やタマも、一緒に盛り上げてくれる。

 βNPC仲間の皆に対して、出来る事はやった。後は皆を信じて、俺達もこのイベント期間を無事に乗り越えるだけだ。


 ちなみに、分裂したタマ達は一パーティーに一人付けたとして、かなり余る。

 そんなタマ達はどこへ行ったかと言うと、そのまま散らばるように指示した。

 各地を徘徊しながら、生徒以外のβNPCを支援する為だ。


 一般プレイヤーを倒して近くにいるβNPCに倒させたり、ピンチに介入したり、アイテムを配ったり。出来るだけ被害を減らす為のアイディアだ。

 タマ達と俺のストレージは繋がっているから、アイテムの補充も手間が掛からない。

 どれだけ助けになるかは分からないが、確実に被害を減らすことは出来る筈。


 イベントが終われば、この校庭でパーティーを開く。

 それは家族や生徒達だけじゃなく、他のβNPC仲間も呼んだ盛大なものにしよう。



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新作始めましたので、こちらもよろしくお願いします!
友人に騙されたお陰でラスボスを魅了しちゃいました!~友人に裏切られた後、ラスボス系褐色美少女のお嫁さんとして幸せな日々を過ごす私が【真のラスボス】と呼ばれるまで~
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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お待ちしてました! ナガマサもナガマサなりに全力を尽くしましたし、 これからどうなっていくのかワクワクします! 今後も楽しみに読ませて頂きます! 紅くんは一瞬たりともリラックス出来な…
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