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 数日が経った。

 学校の運営は順調だ。特に問題は発生していない。


 食堂も好評で、ミゼルと紅葉が楽しく料理を作ってくれている。

 メニューの種類が少なかったのは、二人でも対応出来るようにああしたらしい。

 食材はこの村で採れたものを使ってるとかで、昭二の畑の野菜も仕入れているようだ。


 昨日は俺の畑で採れたイカを使った天ぷらだった。

 美味しかった。


 ダンジョンの方も大好評だ。

 金剛が気合いを入れて作っただけあって、ただの洞窟じゃない。

 壁や地面、更には天井から宝石の騎士達が奇襲を仕掛けてくる極悪ダンジョンだ。


 初日や二日目は生徒達が軒並み串刺しにされて、入口に追い返されてたからな。

 葵に突破されてたことで地味に対抗意識を燃やしていたようだ。

 っていうか、葵が入ってから生徒達が行くまでに数時間しか無かったと思うんだけど、仕事が早すぎない?


 生徒達も、今ではかなり強くなっている。

 ≪学校長≫の効果で経験値の入り方がやばいことになってる上に、ステータスポイントも沢山もらえるからな。

 だけど、金剛は甘くなかった。


 ダンジョンではステータスの上限をいじれるらしい。

 例えば、上限を500に設定すれば、このダンジョンの中では500のステータスしか持たなくなる。

 だからこの機能を使われると、ステータスでのごり押しが出来なくなってしまう。


 補正値は対象外らしいから、俺やタマには関係ないんだけど。

 ステータスでのごり押しが出来ないダンジョンも体験してみたかった気はする。


 そんな訓練用ダンジョンも地下三階まで広がっている。

 一番奥には、金剛自らがボスモンスターとして君臨しているらしい。

 葵しか到達していないと嘆いていた。

 

 地下三階には宝石の騎士が更に進化した守護者(ガーディアン)がひしめき合っている。

 あそこを制限されたステータスで突破するのは難しいだろう。

 葵は、戦闘技術に関してはかなり高い。

 いっそ俺なんかよりも、よっぽど熟練だ。


 次は、購買部。

 これはタケダに管理を任せていた。

 購買は小休憩と昼休憩、後は放課後の一時間の間だけ営業している。

 ここで扱ってる物は、授業で得たポイントでも交換出来るようにした。


 そうすることで、授業を頑張れるだろうという考えだ。

 正解だったのか、生徒達は皆競い合うように授業に挑み、得たポイントで欲しい物に交換していった。

 装備はどれも好評らしい。


 あと、購買部の目玉商品といえばもう一つある。

 剛力無双バーガーだ。

 以前タケダが作っていたパンを更に改良して、肉を挟んだ豪快なパン。

 これが、一部の生徒達にウケた。


 ご飯を毎食これで済ませる猛者もいるらしい。

 この世界だと栄養バランスを気にしなくてもいいからな。

 俺も一度食べてみたけど、豪快な味で美味しかった。

 ちなみに、このパンはお金でも取引出来るようにしてある。


 タケダは購買の為にこの村に滞在してる訳だけど、常に営業してるわけじゃない。

 空き時間は、生徒達に混じって授業を受けたり、工房でアイテムの制作をしている。


 放課後の営業が終わってからは、校舎を出てすぐのところで露店を開いたりしてた。

 これが好評だったらしくて、ゴロウや純白猫もすぐに真似をした。

 今では商人系の生徒達が露店を開くのがいつもの光景になっている。


「今日も一日働きましたね」

「そうだね、お疲れ様」

「私も、今日も沢山料理を食べてもらえました」

「ミゼルもお疲れ様」


 今の時間は19時半。

 一日の日程を終えて、家に帰るところだ。


 俺は別の用事をしていたが、仕事終わりのミゼルを迎えに来た。

 食堂は寮で寝泊まりしてる生徒達の夕食も作らないといけないから、18時から19時の間は仕事がある。

 その分、他の時間は自由に過ごせるんだけど。


 ミルキーは、校外学習が終わった後、葵や純白猫と生徒達の露店を眺めていたそうだ。


「二人とも、ちょっと寄り道しても大丈夫?」

「いいですよ」

「お散歩ですか? 喜んでお供いたします」


 ちょっとドキドキしながら、さりげなく提案してみる。

 二人とも、いつもの調子で頷いてくれた。

 よし、ばれてないらしい。


 そうしてやって来たのは、教会だ。

 扉の前にはパシオンと、騎士のノーチェとマフィーが控えている。


「おおミゼル! 今宵は月のように美しいな! ミルキーも、久しぶりだな」

「お兄様? どうしてこのような場所に……?」

「何かあったんですか?」


 二人とも、突然のパシオンに驚いている。

 それはまあ仕方ないだろう。

 何か思い当たる用も無いのにそこにいれば、ストーカーか何かと思われそうだからな。


「何か……そうだな、今日は良き日だ。しかし、詳しい説明は後だ。マフィー、ノーチェ、二人をお連れしろ」

「はっ」

「どうぞ、こちらへ」


 明らかにミルキーとミゼルが戸惑っている。

 気持ちは分かるけど、説明は出来ない。

 大丈夫だと伝えると、教会の裏手に誘導する騎士達に素直に付いて行ってくれた。


「よし、予定通りだな、義弟よ」

「慣れないので普通に喋ってください」

「つれないな」


 はー、緊張してきた。

 だけど、こっそりばれないように準備してきた甲斐はあった。

 後はそれが台無しにならないように、最後まで気を抜かないようにしないといけない。


「さて、貴様はこっちだ。お気に入りの金のタキシードを用意してあるぞ」

「え、あれを着るんですか」

「ミゼルの黄金の輝きに並び立つには、あれでも不足なくらいだぞ」

「足りてなくて大丈夫です」

「ふん、つまらんやつめ」


 この感じ、冗談じゃなかったらしい。

 流石にあれを着て結婚式はちょっと、いや、かなり嫌だ。

 ミゼルは何も言わないかもしれないけど、ミルキーには睨まれそうだし。


「普通のでお願いします」

「貴様はそういう奴だ。分かっているさ。ついてこい」

「はい」

 

 クールに笑うパシオンの後に付いて歩く。

 あー、緊張が更にすごいことになってきた。

 胃とか無いのに、何かが渦巻いてるような不快感がある。

 吐いたりすることもあるんだろうか。


 でも、頑張らないと。

 格好悪い所は見せられないからな。

 


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