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本日二回目の更新です!
俺達も昼食を食べに、食堂へ向かう。
ミゼルと紅葉の仕事振りを見たいのもあったからな。
食堂の料理担当はミゼルと紅葉にお願いしてある。
午前中は下ごしらえをしてもらっていて、紅葉は説明だけ聞きに、少しの間だけ抜けてもらっていた。
説明が終わると同時に、一足先に教室を出ている。
食堂に付くと、生徒達が集まっている。
ほとんどの生徒がここに来たようだ。
でもなんか、言い合いのような声がする。
「ここは俺が先に取ったんだぞ」
「はあ? 誰もいなかったんだから空いてるだろ」
「注文しに行ってたんだよ」
「ふん、そんなの早い者勝ちに決まってるだろ」
席のことで揉めてるらしい。
そういえば、食堂の椅子って三十二個しかなかったっけ。
人数は、生徒だけでも三十六人だった。
そもそも足りてない。
しかも、そんな状態なのに隣を開けてたり、知り合い同士で固まろうとするから余計座りづらいようだ。
食堂全体が混乱してるっぽい。
しまったな、ちゃんと考えてなかった。
「ナガマサさん、こっちは俺に任せといて。騒いでるのはオレが連れて来たプレイヤーっぽいし」
「すみません、お願いします」
入口近くで喧嘩に発展しそうになっているプレイヤーの方へモグラが歩いて行く。
その間に、俺は席をなんとかしないと。
「席が足りなかったんですね……どうしましょう」
「大丈夫、多分なんとか出来るよ。ええっと、……いた!」
心配そうにしているミルキーに答えてから、食堂の中を捜す。
すぐに、食堂の隅でその姿を発見できた。
床に座り込んで、悲しそうにパンに齧りついている。
「ゴロウさん、ちょっといいですか?」
「うぅ、米が食べたい……へいへい、なんでしょう?」
「資材を足してこのテーブルをちょっと長くしてほしいんですけど、出来ますか?」
「おーけいおーけい任せとけい」
テーブルの板部分は、木で出来ている。
これも建物のついでに造って貰ったものだから、≪究極の木材≫が使われている筈だ。
「それじゃあこれでお願いします」
「あいよー」
取引画面を開いて、ストレージから資材を放り込む。
ゴロウもすぐに承認を押してくれたようで、取引が完了した。
ゴロウは≪合成≫のスキルを持っていて、それを活かせる職業に就いている。
だからテーブルに資材を継ぎ足して、テーブルを大きくしてもらう作戦だ。
食堂の広さ自体は充分に余ってるから、これでいける筈だ。
席とテーブルが足りなかったのは、そこまで人数が集まると思ってなかった。
俺の考えが見通しが甘かっただけだな。
テーブルはゴロウがどんどん大きくしていってくれている。
後は、椅子だ。
タケダは休憩時間の間は購買から離れない話になってるから、ここにはいない。
お願いしに行くか。
「あの、椅子くらいなら私が作りましょーか?」
「あ、純白猫さん。いいんですか?」
「ええ、私も一応鍛冶師の系統ですからね! 任せてください!」
ゴロウの近くでパンを齧っていた純白猫が名乗り出てくれた。
純白猫もそういうスキルを持ってたんだな、有難い。
ゴロウと同じように資材を渡して、椅子の作成をお願いする。
純白猫が作った椅子は俺とミルキーで運んでいく。
途中からはモグラやゴロウ、†紅の牙†達、更には生徒の皆も手伝ってくれた。
「すみません、ありがとうございます」
「いや、俺達もお世話になる立場ですからこれくらいやりますよ」
「そうっすよ。喧嘩しちゃっててすみませんでした」
さっき揉めてた二人もモグラが上手く仲裁してくれたようで、率先して手伝ってくれていた。
とても有難い話だ。
なんとか混乱も収まり、思い思いに昼食を摂り始めた。
あー、ちょっと焦ったよ。
「お疲れ様です。何を食べますか?」
「そういえばメニューって何があるの?」
「日替わりセット、カレーセット、ただのパンですね」
食堂のことはミゼルと紅葉に完全に任せてるから、メニューも把握していなかった。
案外シンプルな感じだけどまだ始まったばかりだし、頑張ってると思う。
お米はこの辺りでは売ってないから、主食はパンだ。
金額は日替わりセットが500c、カレーセットが400c、パンが100cだ。
有料なのは、この食堂は紅葉とミゼルが経営するお店の扱いにしてるから。
個人的には最初は無償で提供しようと思ったんだけど、モグラやミルキーにそこまでしなくていいと止められてしまった。
更に、紅葉とミゼルもその意見に賛成した。
お金をもらえることをしている、実感が欲しいんだとか。
俺には分からない感覚だけど、二人がそう言うなら否定する理由もない。
だからこうなった。
冒険者達はそこまでお金に困ってないと思うけど、念の為何か考えておこう。




