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かなり緊張したけど、挨拶自体は無事に済んだ。
挨拶って言ってもそんなに堅苦しい物じゃなくて、これからよろしく、程度のものだったし。
その後は、教師陣を紹介する。
教師とは言っても、立場はあまり変わらない。
空き時間は授業も受けるだろうし。
そこからは皆を連れて、校舎を周る。見学ツアーだ。
人数は教師を除くと、三十六人だった。
全員一遍に行動すると大変そうだから、十二人ずつで三つのグループに分かれることにした。
先導役はミルキー、モグラ、出汁巻にお願いした。
俺はミルキーグループの後ろに付いて行くことにする。
同時に同じ場所を案内しても意味が無いので、それぞれが別の場所へと散って行く。
ミルキー達はまず校舎横の空き地、訓練場から周るようだ。
学校の校庭のように、黄色い地面が広がっている。
結構広い。
最初の予定よりも校舎が広がった分少しだけ縮んだが、それでもまだまだスペースはある。
よっぽど動き回らない限りは、全員同時でも十分に決闘が出来るだろう。
「ここは訓練場です。今はまだ設備は何も無いですが、順次設置していきます。主に決闘等に使用します」
ミルキーの説明に、生徒達は驚いたような声をあげている。
ここに、これ以上何かを追加するとは思っていなかったようだ。
こんな村に広いスペースがあるだけでも驚いただろうしな。
スキルポイントの消費はもう気にしなくても良さそうだし、設備を作る為のスキルでも取得して、バンバン設置していこう。
ミルキーは少し緊張しているように見えるが、俺と違って冷静に案内を進めていく。
昨日事前に見て周っていたお蔭で、生徒達をスムーズに案内出来ている。
どこも驚いてくれたけど、一番ウケたのは意外にお風呂だった。
同じグループだったゴロウに聞いてみると、安い宿だとついてなかったりするらしい。
この世界では別に必須っていう訳でもないからな。
それでも、やっぱり入りたい人は多い。
俺達も毎日入ってるくらいだ。
作っておいて良かった。
一通り案内を終えて、教室へとやってきた。
教室は四十人は入れるサイズを二つ作った。
ここはその内の一つ、第一教室だ。
食堂と同じく、椅子や机もしっかり用意されている。
建物と一緒に造ってもらったものだ。
普通は別に用意しないといけないんだろうけど、この世界の建築はサービスが良いね。
檀上にはモグラ。
俺、ミルキー、出汁巻、タケダ、紅葉は生徒達と一緒になって席についている。
タマは校庭を走り回っているのが窓から見える。
時々窓の前に現れるのは皆が驚くからやめような。
「それじゃあ、改めて今日からよろしくね。お昼までは少しだけ時間があるから、まずはこの学校のルールについて説明するね」
モグラが話し始めたのは、この学校のルールというか、使い方みたいなものだ。
昨日、案内の後に皆で話し合って決めた。
ある程度は考えていたのを、意見を聞いて直した感じだから割とあっさり決まった。
まずは、スケジュールについて。
こっちで組んだ日程に沿って、授業を受けてもらう。
座学は二割程で、残り八割はレベル上げや模擬戦なんかの身体を動かすことがメインになる。
一般プレイヤーは成長が早い。
現時点でβNPCで強い一般プレイヤーに圧勝出来るのは、ほんの少数らしいからな。
戦闘力を改善するのが、この学校の大きな目的だ。
授業は大体五十分で一区切り。休憩は十分。
午前中は九時から三コマあって、十一時五十分から昼休憩になる。
午後の授業は一時からで、同じく三コマ。
ちなみに、一日二教科で、午前中に一教科、午後に一教科となる。
それ以外の時間は、学校内を自由に使用しても良い。
寮も用意してあるから各自の拠点から通っても良いし寮で生活しても良い。
食堂は朝昼夜の、決まった時間しか料理の注文は出来ない。
武器や防具は、一階に設置した購買で購入することが出来る。
授業ではいい動きや発言をした人にポイントが与えられて、そのポイントを使って交換するシステムになっている。
そうすればやる気も出やすいだろうという、モグラのアイディアだ。
交換出来るアイテムは、タケダやゴロウ、そして俺が作ったもの等だ。
畑で採れた素材なんかも並べてある。
購買部の管理はタケダだ。
小さな露店のようなスペースに立派な筋肉が詰まっている姿は、威圧感がすごい。
まあ、皆すぐに慣れるだろう。
最後に、ダンジョンについて。
それなりの広さはあるけど、ある程度人数を絞る必要があった。
だから授業以外での利用は、予約制となっている。
入りたい人は、事前に受付をして、決められた時間だけ挑むことが出来る。
これの管理もタケダに任せてある。
死なない代わりに、得られる経験値は少な目になっている。
それも、スキルの効果で充分補って余りあるから人気になるだろう。
その為の措置だ。
大体こんな感じだろうか。
一通りの説明が終わったら、質問を受け付け始めた。
「休んだら、何か罰則はありますか?」
「そういうのは無いよ。飽きたりつまらないと思えば来なくても誰も咎めないし、好きにしていい。好みの授業だけ受けてもオッケーだからね」
「そうなんですね」
モグラの回答を聞いて、生徒達がざわついている。
そこまでガッチリしたものじゃないから、どうしようか相談してるんだろうか。
別に強制してる訳じゃないからね。
その辺りはかなり緩い。
「ただし、自分で選んだ結果の責任は、自分でとるようにね。何か不都合が起きても学校側では対処しないので、あしからず」
「わ、わかりました。ありがとうございます」
質問した生徒が一礼して座った。
丁度良い時間になったので、今日は一旦昼休憩になった。
食事は食堂で摂るか、購買で買って教室で食べることも出来る。
生徒達はまだ慣れない様子で教室を出て行った。




