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※学校の効果を追加しました
俺達は、ぽっかりと空いた穴へと足を踏み入れた。
壁や天井は土で出来ている。
地下をそのまま掘って作ったような雰囲気だな。
ところどころに水晶のようなものが埋まっていて、それがぼんやりと光っていて灯りの役割を果たしてくれている。
それでも、五メートル以上先はよく見えない。
夜でもある程度見えてたことを考えると、このダンジョンの仕様なんだろうか。
「葵ちゃん、気を付けて進むんだよ」
「大丈夫……!」
「タマがついてれば安心だよ!」
横幅は二メートルくらいで、高さは三メートルくらい?
窮屈ではないが、広くもない。
タマと葵が並んで歩くだけでもう壁ぎりぎりだ。
武器を振り回すのは危なそうだな。
「タマ、葵に攻撃しないように気を付けてね?」
「はーい!」
「タマなら大丈夫……!」
「うん、そうだね」
葵はタマのことを信用しているようだ。
心配する俺を余所に、はっきりと断言した。
大丈夫だとは思うんだけど、念の為注意を促しておきたかった。
万が一があったら嫌だからな。
「この先に何かいるよ! 四体!」
「お、モンスターかな」
「多分!」
タマがモンスターの気配をいち早く察知したようだ。
元気いっぱいに教えてくれた。
最近は適当に走り回るような狩りしかしてなかったから忘れてたな。
タマは索敵能力がかなり高いんだった。
『そういえばタマよ、モンスターはどの程度の範囲察知出来るのじゃ?』
「うーん? たくさん?」
『よし、タマはわらわと一緒に歩こうかのう』
「わーい!」
金剛がタマに質問しているが、その回答はふわっとしたものだった。というか、ふわっふわすぎる。
しかし、金剛にはばっちり意味が伝わったようだ。
何かを吹っ切ったような晴れやかな顔で、タマに手招きしている。
そのまま、大喜び並んだタマの手を取ってしっかりと繋いだ。
『これから先はこのダンジョンの情報を教えちゃ駄目じゃぞ? 楽しみが減ってしまうからのう』
「わかったー!」
『うむうむ、分かってくれたならわらわも嬉しいぞ』
なんか確保されたっぽい。
タマを野放しにしておくと、攻略どころか蹂躙されてしまうだろうからな。
正しい判断だと思う。
「葵、行けるか?」
「問題ない……!」
タマが最後尾に移動したことで、隊列が変わった。
先頭が葵で、すぐ後ろに俺。
距離を空けて、最後尾に金剛とタマ。
タマが教えてくれたモンスターの姿はまだ見えない。
いつ遭遇してもいいように葵は剣を抜いている。
右手に愛剣を持ったまま、気軽そうな足取りで進んでいく。
あれから数分経ったが、まだモンスターには出会っていない。
と思っていたら、葵が通り過ぎようとした通路の壁から、切っ先のようなものが突き出てきた。
それは勢いよく伸びていく。
そのまま葵の身体に吸い込まれようとして、弾かれた。
「危ない……!」
「流石葵ちゃん!」
「さすが!」
『うむうむ、流石じゃのう』
葵は襲撃を察知して、剣を振り抜いて攻撃を回避していた。
突然すぎて思わずしゃがんで避けてしまったよ。
弾かれた剣の持ち主が、土を撒き散らしながら壁から姿を現した。
キラキラと光る結晶で出来た騎士、≪ダイヤモンドナイト≫だ。
葵が剣を構えて、ダイヤモンドナイトを睨みつける。
そんな葵の背後の壁から、またしても剣が生えようとしている。
「おっと」
すかさず、≪無弾≫を撃って壁ごと粉砕した。
一撃で仕留められたようで、粉々になった剣と鎧の残骸が消えていく。
『ご主人様もこっちじゃ』
「はい」
俺もタマと同じだと判断されたらしい。
大人しく金剛に手を繋がれる。
流石に三人で横並びは狭いんだけど、許してはもらえなさそうだ。
抵抗しようにも、どれだけ力を込めてもびくともしない。
NPCには逆らえない仕様らしいから、大人しくしておこう。
後は、葵の応援をするだけだった。
まずは俺が一体倒したと同時に、更に二体が壁から姿を現した。
透き通った緑色と青色の騎士だ。
≪エメラルドナイト≫と≪サファイヤナイト≫だな。
葵はまず目の前のダイヤモンドナイトに武器を一閃。
大盾で防がれたのを見て、深追いせずにその場でしゃがんだ。
頭上を短剣が通り過ぎたタイミングで横に跳び退いた。
葵が直前までいた床に青い直剣が叩きつけられる。
うーん、こうして見るとこの騎士達、すごい連携が取れてるな。
今まではごり押しで瞬殺してたから、気付かなかった。
『我が配下のコンビネーションは中々じゃろう?』
「そうだね。でも、ウチの葵の動きも中々だよ?」
『当然じゃな。ウチの子なんじゃから』
「がんばれ葵ー!」
ドヤ顔の金剛に、ドヤ顔で返してみた。
そうしたら、更にドヤ顔で返された。
まったくもってその通りだな!
「起動……!」
葵は、三体の騎士相手に負けていなかった。
腰からもう一本の≪魔導機械≫、≪鋼心≫を抜いた辺りで動きに慣れて来たのか、段々と反撃を挟む余裕が出てきている。
躱して、弾いて、受け流して、一太刀。
避けて、避けて、一太刀。
受けて一太刀、躱して一太刀、一太刀、一太刀。
流れるような動きで、騎士達が物理的に削られていく。
ダイヤモンドナイトだけは防御力が高く、盾も健在。
正面からの攻撃では、あの防御を破るのは難しそうだ。
「エアウォーク……!」
しかし、ダイヤモンドナイトの一閃を跳んで躱した葵は、空中を蹴った。
天井とダイヤモンドナイトの間の、ギリギリの隙間を通り抜け、空中で身体を捻る。
その回転でダイヤモンドナイトを胴切りにして、前転の要領で受け身を取った。
素早く立ち上がる頃には、ダイヤモンドナイトの残骸は薄らと消えていく最中だった。
残った二体の騎士は既に満身創痍。
葵によってトドメを刺された。
ダイヤモンドナイトが守ってたせいで中々倒せなかったようだ。
「すごく楽しい……!」




