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※学校の効果を追加しました
夜になって、もう寝る時間だ。
だけどその前に、少しだけやっておくことがある。
これも日課のようなものだけど、スキルツリーの確認だ。
ユニークスキルは、行動によって取得可能スキルとして出現することがある。
俺の場合、≪我らが道を行く≫の効果でその確率が上がっている。
以前には、手を翳して気合いを込めただけで攻撃スキルが生えてきた程だ。
だからここ最近は、何か使えそうなユニークスキルが増えていないか、毎日確認している。
ポイントは心許ないけど、良いスキルがあれば取っておきたい。
でも今のところ、即決は出来ていなかった。
俺の基本レベルは99で、もう上がる様子は無い。
今のレベルキャップ、上限がここまでなんだろう。
まだスキルポイントは余ってるが、多分もう増えない。
スキルを取るのはよく考える必要がある。
正直言うと、どれも良さそうに見える。
実際、効果がどれだけ僅かだとしても、ユニークスキルの相乗効果ですごいことになったりするからな。
しかし、増えないと思うとポイントが勿体なくて仕方がない。
これが貧乏性ってやつか。
「何か増えてるといいんだけど……」
つい呟きながら、仰向けになった。
俺はもう、いつでも寝られるようにベッドの上に寝転がっている。
ここは二階の寝室だ。
空中を突くようにウインドウを操作してスキルツリーを開く。
「最近いつもその動きをなさっていますね」
「ああ、うん、まあね」
チラリと左を見る。
興味深そうに俺の指を目で追いながら、ミゼルが隣へ潜り込んできたところだった。
相変わらず近い。やわらかい。なんか温かい!
良い香りがする!
少しは慣れてきたと思ってたけど、やっぱりまだ駄目だ。
ミゼルが身体を寄せてきたりするから、緊張してしまってやばい。
動揺を見せないように、なるべく冷静に返さないと。
ゲームなのに顔が熱くなるってどれだけ拘ってるんだろうか。
そういえばミルキーも耳が真っ赤になってたっけ。
多分俺は今顔が赤い気がする。
「おまじないみたいなものかな。これをすると、良いことが起きる……かもしれない」
「そうなんですのね」
ミゼルの弾むような声がすぐ近くから聞こえてくる。
俺の適当な言い訳をあっさり信じてくれたようだ。
ちょっと申し訳ないけど、NPCにスキルツリーのことを説明するのも難しそうだし仕方がない。
多分、上手く設定に落とし込んであるとは思うんだけどね。
なんとなく説明しにくいから、俺は諦めた。
「お」
「どうかなさいました?」
「いや、なんでもないよ」
またうっかり声が出てしまった。
だけど、良さそうなスキルが出現していた。
このスキルがあれば、かなり役立つ筈だ。
ここは取得するしかない。
というわけで、これが詳細だ。
≪学校長≫
ユニーク/パッシブ
所有している≪学校≫と名のつく施設の効果に+(スキルレベル×10)%
シンプルだな。
これだけだと分かりにくいだろうか。
このスキルの効果は、建物の効果を増やす物でしかない。
肝心の建物の効果は、簡単にまとめるとこんな感じだ。
この施設に所属する者のレベル上昇値が累計で10に達する毎に、所有者である俺にステータスポイント+1、スキルポイント+1。
基本レベルと職業レベルは別計算で、基本レベルが10毎でステータスポイントが1、職業レベルが10毎にスキルポイント1がもらえる。
この施設に所属する者は以下の効果を受ける。又、校外学習時にも効果を適用する。
敷地内での取得経験値+100%。
敷地内でのレベルアップ時、追加でステータスポイント+5、各スキルポイント+1。
これだけなら、ちょっと便利くらいの効果だろう。
それが≪学校長≫とかと組み合わさることで、とんでもないことになる。
まずは、≪学校長≫の効果は≪我らが道を行く≫の効果で10倍。
更に、≪我らが道を行く≫の効果を受けた≪五体解放≫の効果で100倍。
つまりは10×100で、建物の全ての効果が+1000倍になる。
取得経験値は10000倍になるし、レベルが上がればステータスポイントは追加で5000、スキルポイントも1000ずつ増える。
いや、もらえ過ぎじゃない?
所有者へのボーナスも1000倍するから、皆のレベルが合計で10上がる毎にステータスポイントが1000と、スキルポイントが1000ももらえる。
スキルポイントは有難いな。
この感じだとすごい勢いで増えそうだし。
ちなみに、普通建物は何も効果を持たない。
しかし、プレイヤーが新しく作った建物は強化することが出来、強化をした建物は効果を得る。
その方法は、コインを組み込むことだ。
モグラに教えてもらった俺は、タマのコインを投入した。
その結果、経験値やスキルポイントにボーナスがついた訳だ。
その施設の名前は≪モジャモジャ大学校≫。
タマの意見が通った。
というか、またいつものようにいつの間にか設定されていた。
拘らないしいいんだけどね。
でももうちょっと格好いい感じでも良かったかな、なんて少しだけ思ったりもする。
でも喜んでるタマを見てたら、どうでもいい気もした。
「ナガマサ様、そろそろお休みになられませんか?」
「あっ、そうだね。ごめん」
「いえ、今日は張り切っておられましたから、お疲れだと思ったものですから」
「ありがとう。今日はもう寝るよ」
ウインドウを閉じて腕を下ろす。
電気のオフを念じると、部屋が暗くなった。
「それでは、おやすみなさいませ」
「うん、おやすみ」
左腕にミゼルの体温を感じながら目を閉じる。
今日はミルキーはストーレに泊まるから、不在だ。
生徒希望者を募る為に頑張ってくれるのはとても有難い。
俺の知り合いはもうほぼ声を掛け終わってるからな。
ベッドにミゼルしかいない分、その存在感をいつもより感じる。
やばい、なんだかまた緊張してきた。




