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 次の日。

 いつものように畑へ出掛けようとしたところで、扉の郵便受けに何かが入っているのに気付いた。

 手に取ってみると、それは封筒だった。


 建築士のボルドの名前が書いてある。

 見積もりがもう届いたのか。

 まだ朝の6時なのに、早いな。


 中身は気になるが、まずは日課を済ませよう。

 畑に行って、収穫物を受け取る。


 ついでに昭二さんの畑にも顔を出してみた。

 恩返しの一環でプレゼントした筋肉草が畑一面に青々と茂り、順調に出荷出来ているそうだ。


「ほんにありがとうなぁ」

「いえ、気にしないでください。お世話になった事への、恩返しの一部でしかないですから」


 昭二さんに改めてお礼を言われてしまった。

 喜んでもらえたようで、俺も嬉しい。


 一緒にプレゼントした農具も、大活躍だ。

 昭二さんもどんどん畑を拡張していくらしい。

 俺も負けていられないな。


 昭二への挨拶を済ませて、俺とタマは帰宅した。

 全員で朝食の時間だ。

 今日はミルキーが用意してくれた。


 ミゼル曰く、何だか機嫌が良く、朝食の準備も一人でやると買って出てくれたらしい。

 ご飯はいつも通り美味しかった。

 何気にウチで採れた野菜が、サラダとして食卓に並んだのは初めてだ。


 ミルキーが畑の一角に植えて、家庭菜園をしてくれていた。

 それが昨日、初めて収穫されてたんだよな。


 俺が畑に植えた植物は素材しか無いから、有難い。

 イカの切り身や細マッチョは収穫出来るけど、あれはなんというか、野菜ではないからな。

 普通に野菜を育てるつもりだったのに、どうしてああなったのか。謎だ。


「「「ごちそうさまでした」」」

「でした!」

『ご馳走様じゃ』

「キュルルル!」


 朝食後、いつもはもう自由時間だ。

 ここからは各自が好きに過ごす。

 村を周ったり、修行に出掛けたり。


 けど、食事中にお願いしておいたから皆は座ったまま、待ってくれている。

 今日は皆にも手伝ってもらう必要があるかもしれないからな。

 ミルキーが洗い物を終えて席に戻って来たところで、話を切り出すことにした。


「待っててくれてありがとう。さっき軽く話したけど、建築士さんから見積もりが届いた」

「早かったですね」

「そうだね。お昼か夕方くらいになるかと思ってたんだけど」

「なるほど、そのお見積りを見て、今日の予定が決まるというわけですわね」

「その通り」


 ミゼルに同意しながら、封筒の中身を取り出す。

 四つに折りたたまれた、何枚かの紙だ。


「学校……良い思い出が無い……!」

「学校? タマもよく分からないけどモヤモヤ? モジャモジャするモジャ……」

『二人とも、わらわと共に大人しくしておこうの』


 一枚は普通に手紙だな。

 簡単な挨拶に始まり、お礼の言葉が添えられていた。

 あとは見積もりについての説明と、サービスしてあるから是非自分に依頼を、と書かれている。


 その後ろには見積もりの値段と資材、それぞれの合計が書かれた紙が一枚。

 その内訳がある程度詳細に書かれた紙が二枚。


 不透明な部分があるからこれが最終的なものではないそうで、あくまでも参考にということだった。

 それでも大きくずれるということはないだろう。


 費用は六百万c。

 必要な資材は木材が五千個、石材が一万個。更に、金属資材が三千個。

 あれ、建築資材って木材と石材だけじゃないのか。

 金属もとなると確保が大変そうだな……。


 とりあえずはその中身を皆に伝える。

 俺だけで考えてても仕方がない。


「って感じの見積もりだね。お金は、とりあえず一千万くらいはあるよ」

「ということは、後は資材ですね。お金が余るようなら買ってしまった方が早いんですかね?」

「モンスターを狩って拾い集めるよりは早いのかな、多分」


 どのモンスターが木材や石材を落とすのか、ほとんど知らない。

 まずは情報を集めて、モンスターを狩って、拾う。

 それよりは、多分買った方が早いだろう。


 うん、間違いない。

 それじゃあ資材は買っちゃおう。

 昨日稼いだアイテムを全部ギルドに売り払ったお陰でお金は余裕があるからな。

 足りなくなってもすぐ稼げるし。


 しかし、俺の考えは甘かったらしい。

 ミゼルの一言が俺に衝撃を与えた。


「あの、かなりの量に聞こえますが、市場にそれだけの数は存在するのでしょうか?」

「あっ……」


 資材にどのくらいの需要と供給があるかは、分からない。

 だけど、今回俺が作る学校に必要な数は、多分かなり多いだろう。


 これを全部買って済まそうと思っても、流通していない可能性が高い。

 そんなこと、これっぽっちも考えが及ばなかった。

 流石元王女様、賢い。


「ほんとだね、どうしよう」

「ころしてでもうばいとる?」

「そんなことしないよ」

「モジャモジャ」


 タマの物騒な案は一先ず置いておく。

 殺してでも奪い取るって、少しでも他のβNPC達の助けになりたくて学校を作るのに、そんなことしてたら意味が無い。

 そもそも、奪い取れるほど無い可能性が高いわけだし。


「私も、うっかりしてました……。なるべく早く建ててしまいたいところですけど、地道に集めるしかないかもしれませんね」


 これは、ミルキーの言う通り、地道にやるしかないのか。

 買えるだけ買って、後は毎日採取の日々。


 うーん、厳しい。

 人手も足りないし、行動範囲も広くない。

 この状態では一日何個ずつ稼げるか、正直分からない。


 一体どうすれば……。

 

「あっ」

「どうしました?」

「ちょっと、思い付いたかも」


 思わず出た声に、ミルキーが反応した。

 思い付いたのは良いんだけど、上手くいくかどうかは試してみないとなんとも言えない。

 自信満々に説明して失敗したりしたら恥ずかしくて死んでしまう。

 だから簡単に答えると、ミルキーは少し顔をしかめた。


「なんだか、またとんでもないことな予感がします……」

「それがナガマサ様の良いところではありませんか」


 この思いつきの結果がどうなるか、早速試してみよう。

 上手く行けば今日か明日には資材が揃う。

 上手く行かなくても、振出しに戻るだけだ。

 やってみる価値はある。


 その前にまずは、情報を集めないと。


 俺はメッセージウインドウを開いた。

 


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― 新着の感想 ―
[一言] 自己満だからあれだけど普通は希望者でやるのが早いよな
2020/01/06 15:36 退会済み
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