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※土地の元々の値段を変更しました


 学校を作る。

 そう思い付いただけで、建物までは考えてなかった。

 流石はミルキーだ。


 だけど、そんなものどうやって用意するんだろうか。

 俺達だけじゃ分からなかったから、モグラにメッセージで聞いてみた。

 返事はすぐに帰って来た。

 丁度暇だったんだろうか。


『校舎? 今度は一体何をするの?』


 内容はそれだけだった。

 俺の送ったメッセージがそもそも、校舎の作り方知ってますか? だけだったからな。

 色々と説明が足らなすぎた。


 改めて説明を書いたメッセージを送ると、役立ちそうな情報を教えてくれた。

 流石モグラ、物知りだ。

 なんだか、俺のすることを楽しんでるような文面だったのは、何故だろう。


「それじゃあ早速、出掛けてこよう。タマもこっちの担当な」

「いえっさー!」

「それじゃあ私は、土地を見繕ってきますね」

「うん、お願い。資金を渡しとくよ」

「ありがとうございます」

「それじゃあ出発だ!」

「おー!」


 モグラからの情報に寄れば、建物を建てたい場合は、まず土地を用意する。

 そこに必要な資材を用意して、≪建築士≫に依頼すれば作ることが出来る。


 校舎は作ったことないけど、家や小屋なんかの建物は、こういうやり方だそうだ。

 多分一緒だと思うと言ってたし、なんとかなるだろう。

 モグラにはお礼ポイントがどんどん貯まってる気がするから、この辺りでドバっと返さないといけない。


 お礼で何か無いか聞いたらスキルを見せてと言われて見せたけど、あれくらいじゃ恩返しの足しになってない気がする。

 いくらモグラがあれで満足って言ってても、納得出来ない。

 俺のスキルなんか見て、どんな意味があるんだろうか。


 ミルキーにはせっせと貯めた家計から、五百万cを渡しておいた。

 この村の土地だけならそれで足りる筈だ。

 建築費用はいくら掛かるか分からないが、材料持ち込みならそんなに高くはならないだろう。


 家のことはミゼルに任せて、俺とタマはストーレへ向かった。

 バーリルの村では必要な物が揃わないからな。


 それは、資材と建築士だ。


 建築資材は主に、石材と木材だ。

 これらはモンスターの討伐か、採集によって手に入る。

 一つ一つの値段はそこまででもないが、数が多ければそれなりの値段になる。

 それに、品質によっては値段にもばらつきがある。


 せっかく建てる校舎だ。

 なるべく良い資材を使いたい。


 買うか狩るかはまだ悩んでいるが、どれだけの数を使うかまだ分からない。

 そもそも、校舎の規模すら決めてないからな。


 だからまずは建築士を連れて、ミルキーの購入した土地へ直接行く。

 そこで現地を見ながら相談して大きさを決める。

 必要な材料もそこで教えてもらって、そこから掻き集める。


 完璧だ。

 先に資材を集めても、余ったり足らなかったりすればなんか勿体ない。

 これなら無駄なく動ける筈だ。

 今は時間が惜しいから、なるべく効率よく動こう。


 建築士は、建築士ギルドに行けば依頼が出来るが、それは冒険者ギルドでも可能らしい。

 受付のお姉さんに話をしてみると、モグラに教えてもらった通り、建築士を依頼することが出来た。


 一時間後に、バーリルの村の我が家へと来てくれることになった。

 ここから連れて行く訳じゃないんだな。

 それなら一度戻って、ミルキーの方に合流するか。


「ただいまー」

「ただいま!」

「おかえりなさい、早かったですね」


 裏口から我が家に入ると、ミルキーが出迎えてくれた。

 葵は畑に修行に出掛けて、ミゼルは付き添いらしい。

 元気だなぁ。 


「依頼するだけだったからね。それに建築士さんは、こっちに直接来てくれるんだって」

「そうなんですね」

「ミルキーの方はどうだった? 良さそうな土地買えた?」

「あ、はい、それなんですけど……」


 すぐに帰って来たのに、ミルキーは家にいた。

 この時点で土地は何の問題もなく買えたと思っていた。

 確認したのは念の為と、ただの話題だ。


 それなのに、ミルキーは微妙な顔をした。

 何かあったのかもしれない。


「どうしたの? 何かあった?」

「いえ、そういう訳じゃないんですよ。土地も、ちゃんと買えましたよ? 買えたんですけど……」


 ミルキーの歯切れはやっぱり悪い。

 詳しく聞いてみると、土地を買いに村長のところへ向かったミルキーは、そこで突然声を掛けられた。


 声を掛けてきたのは、不審者に変装したパシオンだった。

 黄金で出来たギラギラ輝くタキシードと黄金のサングラスを装備したその姿は、明らかにやばい奴だったらしい。

 あいつはそんなの装備してなくても充分やばい奴だけどな。


 それで、その不審者風パシオンは、取引を持ちかけてきた。

 しかもその商品は、この村の土地だった。

 それを、三百万cで買わないかと言う。


 警戒したミルキーは村長に付き添いをお願いして、三人でその土地を見に行った。

 そこは村の一番奥、出入り口と正反対の場所。

 まるでその土地に合わせて村の範囲を拡大したかのように何も無いその場所は、十分な広さだったらしい。


 村長に値段を聞いてみると、一千万cはするだろうということだった。

 ミルキーは呆れながらも、その土地をパシオン風不審者から三百万cで購入した。

 だから、あんな微妙な顔をしてたんだな。


「なるほど。もしかしたら、タマにでも聞いたのかもしれないな」

「そうかもしれませんね」

「今度、俺からもお礼を言っておくよ」

「お願いします。パシオン様ですよね? って聞いても全力で否定してたので、多分私達に気を遣って下さったんだと思います」

「そうだね」


 パシオンは妹のミゼルに甘い。

 しかし、ミゼルは王家から離脱して、俺のところへ嫁に来た。

 だから公の場では、パシオンからすれば他人のように扱わないといけないらしい。

 そもそもの他人である俺達に対しても、下手に援助は出来ない。


 だけど、きっとタマから俺達のしようとしていることを聞いて、何かしようと思ったんだろう。

 それが変な格好で土地を売りつけるとかいう、怪しさ満天の行動に繋がったに違いない。


 傲慢そうなパシオンだけど、その辺りはきっちり考えているようだ。

 ミゼルの為なのだから隠す必要など無い! とか言いながら堂々とプレゼントしてくるかと思ってたよ。

 今回がそこまでして隠さないといけない状況だったのかは謎だけど。


 別に、公の場じゃないよな?

 まさか、ポケットマネーじゃなくて国のお金から出てるんじゃないだろうな……。


 まあその辺りは考えても仕方がない。

 パシオンにはしっかりお礼を言っておこう。


 

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