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 リビングには、タマ、ミルキー、ミゼル、葵が揃っていた。

 狩りに行く予定だったけど、話を聞いてもらう為に着席してもらっている。


「作戦変更!」

「作戦変更だー! 総員かかれー! うおー!」

 俺の号令をきっかけにして、タマが吠える。

 テンションMAXだ。


 そんな中、ミルキーが戸惑いがちに手を挙げた。


「すみません、話がよく分からないんですけど……」

「ごめん、ちゃんと説明するね」


 俺はまず、ゼノが教えてくれた事を話した。

 俺達βNPCをターゲットにしたイベントが開催されるらしいという、やばい情報だ。


 正直に話すかどうか迷ったけど、俺達は家族だ。

 障害があっても出来るだけ隠し事はせずに、皆で協力して乗り越えたい。


「なるほど、そういうことですか」


 ミルキーは、納得したように頷いている。

 心配していたような反応は特に無い。

 良かった。

 以前、運営からのメッセージで狼狽えてたからちょっと心配だったんだよな。


『ナガマサさんがついてるんですから、不安なんてありませんよ』


 ふと、いつだったかのミルキーの台詞を思い出した。

 細かい部分は自信が無いが、大体こんな意味だった気がする。

 この毅然とした態度は、今も、そう思ってくれてるってことなんだろうか。


 そう思うとちょっと照れる。


「ナガマサさん?」

「――あ、ごめん、何?」

「もう、ナガマサさんってば呑気ですね」


 関係ないことに意識が集中し過ぎてしまったらしい。

 ミルキーに名前を呼ばれて我に返った。

 とりあえず笑って誤魔化しておこう。


「あはは、そうかな」

「そうです。お陰で、どんな時でも気は楽になりますけどね」


 笑ってみたら、ミルキーも笑ってくれた。

 これは、褒められてるんだろうか。

 笑顔だし、褒められてると思うことにしよう。


「そうですね。ナガマサ様はその呑気なところが素敵だと思いますわ」

「トゲトゲしてなくて、いい」

「モジャはモジャモジャしてるからね!」

「確かに……!」


 そこにミゼルと葵も乗っかって、更にタマがモジャを放り込んできた。

 もはや意味が分からない。

 だけど、他の皆はそれで盛り上がっている。

 結果オーライ?


「ナガマサさん、それで、何か準備をする為に予定を変更する感じですか?」 

「あ、うん、そう。よく分かったね」

「今の話の流れで、そうかなと思いました。当たってて良かったです」


 思い切り脱線したところで、ミルキーが軌道を修正してくれた。

 予想が正解して喜んでるところも可愛い。

 なんて素晴らしいお嫁さんなんだろうか。


「それじゃあ、俺が思いついた備えについて説明するね」


 よりいっそう激しくなるだろう、一般プレイヤーからの攻撃。

 それに対する備えとして俺が思いついたのは、学校だ。


「学校、ですか?」

「学校嫌い……!」

「ろくはらろくはらぎむきょういくぅぅぅぅぅうううぅうぅぅうう!!」


 久しぶりにクレイジーが叫びだした。

 相変わらず意味が分からない叫びだ。

 何か、学校で嫌なことでもあったんだろうか。

 俺はほとんど行けなかったから、憧れてるんだけど。


「葵ちゃん、私と一緒に向こうへ行きますか?」

「そうする」


 ミゼルが、葵を気遣って連れ出してくれた。

 裏口から放牧スペースの方へ行くようだ。

 俺は、ミルキーに説明を続ける。

 ミゼルには、また後で改めて。


 学校というのは、βNPCを鍛える場として創る。

 一般プレイヤーが強いなら、それよりも強くなればいい。

 そうすれば、例え狙われたって大丈夫な筈だ。


 被害は完全にゼロになるわけじゃないだろうけど、やらないよりは間違いなく良いだろう。


「それは、他の人も鍛えるってことですか?」

「うん。家族だけなら多分余裕なんだろうけど、出来るなら、他のβNPC達の助けになりたいんだ」


 それが、俺が学校を思いついた理由でもある。

 ミルキーに言った通り、俺達だけなら一般プレイヤーに負けることは無いだろう。

 負ける気は全くしない。


 だけど、それだと他のβNPCはどうなるか。

 多分、生き残れるのはそんなに多くない気がする。


 イベントの詳細は不明で、どの程度殺しに来るかも分からない。

 でも、運営の態度は明らかに俺達の命の心配をしていない。

 むしろ、殺そうとしてるんじゃないかと思うくらいだ。


 そんな運営が仕掛けるイベントだ。

 βNPC相手にだけ街中でPK出来ます、なんてなったとしてもおかしくはない。


 そうなれば、戦闘力の低い生産系の職業の人達なんかはもう逃げ場が無くなる。


 幸い、俺はかなり余裕がある。

 イベントが始まるまでの間くらいは、他の人の事も考えてもいいと思った。


「どう、かな?」

「私はいいと思います。学校、作りましょう」

「やった。ありがとう!」


 ミルキーは、迷うことなく賛成してくれた。

 反対されても仕方ないと思ってたから、嬉しい。


 学校のアイディアは、色々ある。

 単純にレベルを上げるのは必須として、それだけじゃ足りない。


 葵がやったような、技術を高める修行も必要だ。

 畑から細マッチョ達を借りてくるか?


 他にも、課外授業としてダンジョンを連れ回すのもいいかもしれない。

 武器は貸せるし、支援魔法やなんかがあれば簡単に狩りが出来る。


 色々想像が膨らむ。

 楽しくなってきたぞ。


「でもまずは、建物からですね」

「あ、うん、ほんとだね」


 ミルキーの一言で、ハッとした。

 建物のことは全く考えていなかった。

 学校を建てるって、どうしたらいいんだろう?



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