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 しばらく休んだ後、再びギルドへと向かった。

 職業レベルが最大になったままだと、勿体ないからな。


 昭二は≪農夫≫から≪大農夫(グランドファーマー)≫に転職した。

 純粋な発展系っぽいし、順当な転職先だろう。

 もう一つの選択肢としては、牧場主というのが出ていた。


 昭二が即断したから、詳細は見ていない。

 きっと動物を飼う方向に行くんだろう。多分。


 転職を終えて、お昼も近くなっていたしいつもの食堂でお昼を食べた。

 俺の我儘に付き合ってもらっているから、料金は当然俺持ちだ。


 最初は遠慮していたが、ルインや紅葉にもお土産を用意するからと、強引に押し切った。

 それなりに稼げているし、そもそもこれは恩返しの為の狩りだ。

 レベル上げも俺がお願いして、やってもらっている形なんだから、遠慮する必要は無い。


 料理と、タマの豪快な食べっぷりを楽しんだ後、すぐさま狩場へと戻ってきた。

 どんどん狩るぞ。


 ご飯を食べてすぐ動くと、普通は横腹が痛くなる。

 そういうのを気にしなくていいのはゲームのいいところだ。

 まあ、俺はそんな風になったことないけど。


「昭二さん、いけますか?」

「腰は痛むが、休んで飯も食ったけんのう。これくらいなんてことないわい」

「分かりました。辛くなったらすぐに言ってくださいね」

「了解じゃ」


 プルプルと小刻みに震えている昭二に確認すると、力強い言葉を返してくれた。

 だけど、どうにも見た目がか弱そうに見えてしまう。

 腰も曲がっているし、手や脚は微妙に震えているせいだな。


 この世界はゲームの世界。

 現実の肉体の状態は、関係ない。


「うーん、スキルレベルを簡単に上げる方法は無いものかなぁ」


 昭二は老人だが、腰の痛みや手足の震えは歳のせいではない。


 原因は、昭二の持っているユニークスキル、≪封印の肉体≫。

 効果は、ステータスを含む全ての能力値を十分の一にする。

 更に、≪老化≫という特殊な状態異常にする。

 おじいちゃん感が増しているのは、この状態異常のせいだ。


 これだけを見ればマイナス効果しかない、ゴミよりも酷いスキルだ。

 こんなのを持っていたらまともに狩りなんて出来ない。

 十分の一はどう考えてもきつい。


 しかし、このスキルは恐らく進化する。

 しかもとんでもなく強いスキルになる可能性が高い。

 何故分かるのかというと、俺が同じようなスキルを持っていたからだ。


 確実ではないけどね。

 でも、多分そうだと思う。

 なんとか進化まで持っていけないだろうか。


 そもそも、封印スキルのスキルレベルってどうやって上がるんだっけ。

 俺の場合は、対応する行動を繰り返してたらレベルが上がった。

 ということは、昭二の場合は常に上がるだろう。


 だけど、今のスキルレベルは3。

 スキルを取得したのは結構前らしいけど、それで3ってあまりにも低い気がする。


 と思ったんだけど、俺の場合は経験値の補正があったんだった。

 そういうのが無いと全然上がらないんだな。


 それなら仕方ない。

 地道にレベルを上げるだけだ。


「やるぞー!」


 ふと、やる気十分なタマが目に留まった。

 経験値が増えるスキルも、一つはタマ由来だったな。

 無理だとは思うけど、聞くだけ聞いてみるか。


「タマ、聞いてみてもいいか?」

「なにー?」

「昭二さんに経験値をあげたり、出来ないかな?」

「うーん――」


 我ながら、突拍子が無さ過ぎる。

 こんなことが出来たら苦労はしない。

 タマだって、俺が変な事を言ってしまったから唸ってしまっている。


「――出来るよ!」

「マジか」


 なんと出来るらしい。

 そんなスキルとか持ってなかったような気がするんだけど。

 もしかして、今唸ってる間に出来るようになったとか?


 タマのスキルリストを開く。

 新しいスキルは――あった。

 これだ。


「はい!」

「あ、ああ、ありがとうな」

「モジャ!」


 俺がそのスキルを見つけると同時に、タマが何かを差し出してきた。

 とりあえず受け取ってみる。

 それは、ぼんやり青白く光る結晶体だった。


≪経験値結晶:基本レベル≫

レア度:X 品質:-

経験値が物質化したもの。

使用することで、結晶化した分の経験値を取得することが出来る。

基本レベル以外にも使用出来るが、効率はやや落ちる。


 経験値を固めて出したものが、これらしい。

 ちなみに、タマが新しく取得していたスキルは≪経験値結晶作成≫である。

 ざっくり言えば、自分の持っている経験値を消費して、その数値分の経験値が込められた消費アイテムに変換することが出来る。


「昭二さん、これを使ってみてもらっていいですか?」

「ほいほい。……色々出てきたんじゃが、どうしたらええんかな?」

「えーっと、ちょっとすみません」


 画面を見せてもらうと、選択肢が出現していた。

 基本レベル、職業レベル、スキルレベルの、三つだ。


 スキルレベルを選択してもらうと、更に選択肢が現れる。

 これは、昭二が取得しているスキルだな。

 レベルが最大じゃないものがここに並んでいるんだろう。


 その中から、一つのスキルを選んでもらう。

 勿論≪封印の肉体≫だ。

 選択すると、確認が出た。

 

 そのまま『はい』を押してもらうと、経験値結晶が消えた。

 開かれていたウインドウも一緒に消えている。

 対象の選択画面だから、終わったら勝手に閉じるようだ。


「スキルレベル上がってますか?」

「ちぃと待ってごしないよ」


 昭二に改めてスキルリストを開いてもらう。

 震える指で開くのが、なんだかもどかしい。


「……おお?」

「どうですか?」

「スキルレベルが7になっとるのう」

「やった!」

「やったモジャー!」


 タマがあの結晶にどれだけの経験値を込めたのか分からないが、スキルレベルも問題なく上がった。

 これで、あの厄介な封印スキルを即座に進化させることが出来る。


「お手柄だぞタマ! どんどん作ろう!」

「あいあいさー!」


 

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